CULrides カルライズ

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食べ蒔き番外編 ゴーヤの接ぎ木を試した結果、失敗した話

今回は番外編として、8~9月にかけて試行していたゴーヤの接ぎ木にまつわる話。

本来は8月の記事に入れる予定だったが、ボリュームが多過ぎたので別記事にしてみました。



ただし、先に結果から言えば、全て失敗に終わっている。


この記事では単に、「こうやってみたらそうなった」と言う事実を羅列しただけの体験談であり、それらが一体何の役に立つか分からないのが正直な話。

けど、もしかしたら、何かしら参考になる点もあるかも知れないので、備忘録的に記事化しておこうかなと。


それを踏まえ、実際の作業の様子と、いかなる顛末を迎えたのか記してみましょう。



さて先ず、接ぎ木を試す切っ掛けとなったのは、昨年度に記した「ゴーヤとメロンの挿し木」に纏わる記事である。
culrides.hatenablog.com

その内容を要約すると、「ゴーヤは挿し木に出来るが、単体では生育が難しい」。
従って、「水分と養分を安定供給し成長力を維持させるには、台木が必要」と言う結論に至る。

ならば、成長率の高いゴーヤを摘芯した際に、その先端部を棄てることなく接ぎ木にすれば再利用出来るし、最後まで活かしきれるのではないかと考えたのだ。



そこで、上記を踏まえて台木の選定から始めてみる事に。
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とりあえず選んだ個体は、「生育してはいるが成長率が低く収穫まで望めそうにない個体」である。
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これらはメロンやカボチャで、いずれも一応の生育はしていても、全体的に貧弱かつ「ただ生えてるだけ」みたいな状態である。
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何故これらを選んだかと言えば、生命力の強いゴーヤの先端部に引っ張られる形で、貧弱な台木でも「本来の力」を発揮出来るような気がしたから。


たとえば仮に、低成長で上手く結実しない様な個体であっても、生育しているならば根から水分や養分を吸い上げる力はある事になるはず。
だとすれば、台木は吸水力さえ賄えれば良い事になるだろうし、必ずしも「両方ともイケてる個体で組み合わせる必要は無いのではないか?」と推測してみたのだ。

本来なら強い台木を使うのがセオリーらしいのだけど、これではまるっきり逆を試す事になるし、普通なら誰も「やろう」などとは思わない実験のはずだ。
しかし、これで上手く行けば、もしや新しい発見になるのではないか。

そんな仮説を検証する意味もあって、今回の手法に至るのだった。



ほんで、作業工程は至ってシンプルかつ超自己流。
オペ自体も非常に簡単である。



先ずは成長率の高いゴーヤの中から、15cmほど先端部(穂木)をカット。
台木と接合させた時の癒着面を広く確保するため、茎をナナメに切り取る。
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次に、台木の適当な場所に浅くカッターで切れ込みを入れて接合部作り、そこに先端部の切断面と台木の切れ目が合わさる様にして挟み込む。
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また別の方法としては、この台木となるメロンやカボチャの幹は「中空構造」になっていて、いわゆるストローやパイプ状になっている。
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その穴にゴーヤを挿入したら、台木との接合部を密着させる様に切れ込みを閉じて、すかさずマスキングテープでキッチリ固定しておく。



ちなみに今回、台木との接合部は主に「先端よりの部分」や「脇芽や葉の分岐点」を選択している。


本来なら、苗の頃に台木の茎を一部カットして、そこへ穂木を抱き合わせたり、あるいは頭を挿げ(すげ)替える形で接合するらしいのだが、確かに、この方法なら先端部へ効率的にエネルギー供給が出来るだろうし、台木の枝葉に養分を取られる率も低くなるに違いない。

だが、これだと台木が丸ごと犠牲になってしまう事にもなる。


そこで、当プロジェクトでは台木のメロンやカボチャの結実も期待しつつ、「ゴーヤも出来そうな部分」に接合。

要するに、幹や主枝から分岐して伸びている脇芽や子ヅルに便乗させる形で穂木(ゴーヤ)を接合し、同時に台木の親ヅルや別の脇芽も残しておく事で、「どっちも上手く育てて、どっちの果実も狙っちゃおう」と言う算段なのだ。
このちゃっかり君!


ただし無論、仮にそれが出来るとしても、安定して成長させる為には先ず「台木が健全」である事が前提となるし、今回の様に「生育してはいるが成長率が低く収穫まで望めそうにない個体」を使っているのでは、狙い通りに行かない可能性の方が高い。
また、これにより成長エネルギーや養分が分散してしまい、結果的に「どっちも育たない」と言った事態も十分にありうる。


と言うか実際、「買ってきた接ぎ木苗を育てていたら、脇から台木のカボチャが生えて来た」と言う体験談を幾つか拝見しているし、そこに養分を取られて生育が遅れてしまうので、ちゃんと剪定すべきだとも解説されていたりする。

故に、本来なら一つに絞るべきではあろうし、そもそもやる意味すら無い試みとも言えるでしょう。


だが、そもそも今期は不作の中ではあるし、失敗して元々みたいな部分もある。
上記の部位に加え、保険の意味で一部は株の根本近くにも接続しておいた。


一先ずは、やれるだけやってみる。
これで上手く行けばラッキー的な観点でゴリ押しします。



話を元に戻しまして、今回は接合部の密閉性と保湿性を確保する意味で「カルスメイト」なるものを塗ってみた。
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本来の用法としては、樹木の枝打ち後に切断面を塗り固めて、病原菌などから保護する効果があるとの事。
随分昔から家にあったもので、ならばと流用。

商品説明には「つぎ蝋」とあるが、実際の中身は木工用ボンドと大体同じらしく、質感や匂いも似ている。
ただし、ボンドとは用途が違うので、成分も微妙に違うのだとか。
割りと速乾性が高いので、塗る時は手早く済ませた方が良い印象です。


画像では判り難いが、コレでマスキングの端をパテ埋めの要領で閉じてみた。
使い方が合っているかは不明だが、とりあえず癒着する事さえ出来れば目的は果たされるでしょう。
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さて、そんなこんなで作業は終了したのだが…。


冒頭でも触れた様に、今回の接ぎ木は全て失敗に終わっている。
そりゃもう、接ぎ木した途端に先端部は萎び始めて、ものの1週間も持たずに枯れてしまったのだ。



この失敗要因の一つに、作物自身の水分の供給力が落ちていた点が挙げられる。


上記の作業は8月上旬に行われていたのだが、この時点で既に猛暑日が連続しており、土壌の乾燥も連日続く状況にあった。
台木は無事であったものの、この酷暑でヘバりきっており、もはや枝葉へ水分を分配するどころでは無い様子でもあった。

調べてみても、基本的に直射日光が差す様な場所や暑いシーズンは避け、涼しい日蔭や雨量のある時に行うのが通常とされている。
そりゃそうだよね。


何にせよ、ここまで暑いシーズンでは検証にならない。
仕方ないので、機を改め再挑戦する事に。



ほんで、気温が落ち着いてきた9月上旬に再チャレ。



この時は、初回よりも更に先端部(穂木)の断面を広く切る形で吸水面を確保してみた。
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また初回では、台木の茎のパイプ状になっている部分へ穂木を挿入していたが、このパイプ内部には水分が殆ど通っておらず、あまり効果が無さそうな様子でもあった。


なので今回は、より水分が通るであろう表皮に近い部分を切開し、そこへ挿してみる事にした。
断面からジンワリと水分が溢れてくるので、癒着しやすそうには思える。
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台木の切れ込みに先端部を差し込んだら、すかさず接合部から水分が蒸発しない様にマスキングでミッチリ固定。
この作業を、幾つかの株で再試行してみた。
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だが、しかし、この再チャレも結果的には失敗に終わっている。


正確には、処置後の数日ほどは青さとハリを保っており、上手くイケそうな期待感を醸し出していた。

それでも、一週間を過ぎる頃からは一気に衰弱が進み、結果的には全ての先端部が枯れてしまった。
8月よりは持った方であるものの、またしても活着には至らず仕舞いである。


下の画像はだいぶ後日になって撮り直したもだが、全ての個体で同じ経過を辿り、同じ枯れ方をしていた点からして、どうやら根本的に給水が追い付かなくなっていたか、癒着出来ない状態にあったであろう事が伺える。
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いずれにせよ、今期は既にシーズンも遅くなっているので、これ以上は試しても難しいと判断。
接ぎ木を中止したのだった。



さて、今回の失敗について改めて考察すると、先ず1つ目には接ぎ木についての理解が浅かった事。
そして、その手法が完全に自己流の手探りであったが為に、結果として上手くない流れにハマッた事が挙げられる。


これはもう単純に、「細かいコトは解んないけど、多分コレでイケるんじゃない?」と言う思い付きだけで始め、ろくすっぽ調べもせずに勘だけで進めていたので、作業的な確度を欠いていた点は否めない。

また、そもそも「成長率の低い個体」を台木に使っていた為、脇芽や枝葉へ水分・養分を配分する力が弱かったのは確かであるし、そんな状態では接ぎ木した穂木にまでエネルギーが回らないであろう事も自明の理。
まさに、失敗して当然の成り行きである。



更に2つ目の原因を挙げるとすれば、8~9月と気候が暑いシーズンに試した事。
それに加え、接ぎ木を試した時点で、既に作物の成長率も決まっていた頃合いだったが故に、根本的に「それ以上」のエネルギーを脇芽や枝葉へ供給しなくなっていた可能性が考えられる。


これは一重に、育苗の開始が遅かった事が遠因となっていたりする。

そもそも今期は発芽が遅れたため苗木の期間が短く、ハイシーズンまでに接ぎ木を試せる期間そのものが短かった。
今にして思えば長梅雨であった7月頃に実行すれば良かったとも思うが、あの頃はイマイチ成長が実感出来ないままであったので摘芯などの手出しはせずに、どれくらいまで伸びるか様子を伺っていた部分がある。

つまり、梅雨では苗木の生命力が足らなそうだったし、盛夏では暑すぎてバテてたし、試した頃には成長率やエネルギー配分が固定化されていたりで、上手く行かない条件が重なっていた。
どちらにせよ、ギャンブルみたいなものだったのだ。



しかしながら、この実験的な接ぎ木に関して、実はまだ「本当はイケるんじゃないか」と考えていたりもする。


今回は気候や成長率などのタイミング、自身のスキルといった諸要素が合わなかっただけで、まだ成功パターンが存在する可能性は有りうる。
これが例えば、「苗木の成長期+涼しく雨量のある梅雨時」と言う要素が噛み合えば、成長の勢いに乗じて合体しやすくなるだろうし、失敗しても時期的にはリカバリが効きやすいだろう。

また、冒頭のリンク記事にある「摘芯した先端部を挿し木にしたら根が復活した」との話を参考にすれば、水耕栽培の要領で少し根を出させてから台木に接合する方法も試す余地がある。

いずれにせよ、既存の成功パターン以外でも色々な方法があるかも知れないし、「接ぎ木の苗」がこの世に存在する以上、何かしらブレイクスルーの切っ掛けがあるはずだ。


まぁ、そうそう狙い通りには行かないとしても、先述した「貧弱で間引き相当な台木+摘芯された用済みの先端部」の組み合わせが使えるとなれば、なかなか画期的ではないかとも思う。
これで成功すれば、もしかすると本当に「台木のカボチャと穂木のゴーヤ一挙両得」にも繋がるかも知れないし。

何せよ、今までムダだとされていたものが、扱い方ひとつで「使えるヤツ」に変わる可能性を秘めているのだから、ロマンがあるではないか。



もっとも証明されていない現状では、いくらゴタクを並べた所で憶測の域を出ないのが現実。

いずれ再チャレの機会があれば、また試してみるつもりである。


この記事を読んだ読者諸兄におかれましても、我こそはと言う方はチャレンジしてみては如何かなぁと思う次第です。




では、また、CUL。