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2020年は植物の生え方にサッパリ元気が無かった事と、その要因として考えられる仮説 その①「暖冬で冬越しが足りなかった」

2018年に家庭菜園(食べ蒔きプロジェクト)を開始して以降、育てている作物のみならず、周辺の植物にも関心が向くシーンが多くなった。

それは自宅近辺の雑草を含めて、その種類や分布のほか日々の成長度合いに気付いたりと、興味深い発見に至る事もしばしばである。



そんな中、昨年2020年の夏ごろになって、妙に違和感を覚える現象が続いていた。

と言うのも、当時は何故だか近隣の雑草や植物の成長が異様に遅く、例年と比べ明らかに元気が無さそうな印象を受けたからだ。


具体的には、例年の梅雨時期、いつもならボーボーに雑草が生い茂っているはずの場所がスカスカで、やけに短いまま成長が遅れている様な。
あるいは成長に「必須な要素」が足りていない様な、とにかく全体的な伸び率や勢いが足りていない様子であった。

本来なら、春に芽吹いて5月頃に初夏の暖かさで一気に生え揃い、そして6月の雨で溢れんばかりの成長を遂げるものだが、それでも一向に伸びる気配が無く、やけに短い個体が目立ってもいた。
特に、ススキなどのイネ科植物が圧倒的に少なくなっていたゾーンもある事から、例年との差異は明らかである。


実際、この時期にはボーボーになり過ぎた雑草帯を造園業者が刈りに来るのだが、あまり出動している形跡も無かった。
普段なら出ずっぱりで、あちこち連日の如く草刈り機の音が聞こえるのに、当時は殆ど作業している姿もなく、年間を通してもほんの1~2回ほどしか確認していない。
それはまるで、やる必要すら無さそうな印象でもあったくらいである。

もしかして読者の中にも、この変化を実感していた造園業の方がいらっしゃるのではなかろうか。



で、この成長率が低かった要因とは何なのかを考察するうちに、幾つかの可能性が浮上。
その可能性を二種類に分類して仮説立ててみたので、まずは順を追って説明してみよう。



仮説①[2019年暮れから2020年にかけて冬の気温が高くて寒くなりきらず、植物のタネが休眠状態にならなかった]
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ご存じの通り、基本的に植物は暖かいシーズンに全盛を迎え、寒くなり枯れる前にタネを付け、やがて土に撒かれる事で一つのサイクルを終える。
そして、次期に再び芽吹く為には一度「冬越し」が必要で、そこで寒に晒す事により「発芽スイッチ」の準備が完了する。

この現象は「休眠打破」と呼ばれていて、例えば桜の場合、冬の間に寒さがチャージされる事で、春に開花を迎えるスイッチが入力されている。
更に、この冬越しを推奨されている品種は多く、当プロジェクトでのトマトを始め、メロンやゴーヤ、カボチャなどのウリ科作物なども代表例として知られるところ。

これら作物は「収穫直後に採種したタネ」を蒔いても生育不良を起こしたり、まずまともな実をつける事も出来ないとされている。
そして実際、この「冬越しさせていないタネを蒔いても正常に生育しない」現象については、上記の品種を使って過去に行った実験でも確認済みである。


この発芽スイッチを入力するにあたりなぜ冬越しが必要かと言うと、どうやら一度「生存に厳しいシーズン」を過ごす事によって、来るべき成長時に生命力をフルに発揮させる為だと言われている。
それは即ち、時に起きるイレギュラーな気候変動や厳しい環境下に置かれても、乗り越えられるだけのタフなタネと次世代を残す為に備わった、生存戦略の一つでもあるのだろう。

つまり植物は、ただ単に暖かいから目覚めるのでは無く、その前に「準備段階を一定期間のあいだ」経る必要がある。
でなければ、本来の意味での生命力が発揮できにくくなっている様なのだ。

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では、ここで「冬越しが上手く行かなかった」と言うパターンを仮定した場合、植物の生育にどの様な影響があるのだろうか?


この仮定を踏まえて考えてみると、2020年度の食べ蒔きプロジェクトで発芽が遅れていたり、シーズン序盤では成長率が低い状況が続いていた事に関して、いくつか思い当たる点が浮上してくる。
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上記リンク記事にも記しているが、この時に発芽しにくかった要因の一つとして「冬の気温」が関係していたものと考えている。


冒頭でも延べた様に、2019年から2020年にかけての冬季は記録的な暖冬であったし、昼夜の平均気温も例年より明らかに高い日が多かった。

事実あの当時、天気予報では「気温が高い」と何度も触れられていたし、桜も3月中旬から全国的に開花していたほど。
首都圏の場合、例年であれば4月に入るあたりで本格的に開花するのが通常なので、いかに昨年の気温が高かったかが解る。


また余談ではあるが、2020年は「季節の匂い」も特殊で、確か2月頃に何故か「夏の匂い」が空気中に漂っていた日があり、今までそんな事など無かっただけに妙な感覚となったものだ。

通常、この夏の匂いは4月~5月あたりから濃厚となるのだが、昨年に限っては大きくパターンから外れた事になる。
この「季節の匂い」は秋や冬の場合でも存在し、概ねその数ヵ月から数週間前に漂っていた空気感次第で、その年の気候もある程度は予測可能であったりする。

つまり、2020年は夏よりもっと前に、既に冬の段階からして異変の兆候が顕れていた訳だ。


更に、この季節の匂いの正体とは恐らく「気温」、「湿度」、「風向き」、「植物の放つ香り」などの要素により発生していると考えられるのだが、これが人間にも感じられている以上、植物はなおさら敏感にキャッチしているはずである。

先述した2020年2月に、例年と違い「冬なのに夏の様な匂いが漂っていた」と言う事は、「土壌が暖かく保たれる時間が長くなっていた」であろう可能性をも意味する。
そのため、気温だけが微妙な上下を繰り返したり、夜間も寒くなりきらない日が続いた事で、土壌内の季節の変わり目にもメリハリが無くなり、植物のタネは「休眠期間に入りにくい状況」に陥っていたのではなかろうか?

となれば、この気候に晒されたタネや根は、「アレ?今まだ冬じゃないの?」とか、「エッ、もう春?夏?」みたいな具合いで混乱していたり、あるいは「なぁ、生えていいの?ダメなの?もうよくワカンネーから寝とこ」なんてなったりで生活リズムが狂ったり、目覚めのタイミングを失ったままの状態が続いていたとも考えられるのだ。



以上の流れにより、周辺の雑草がサッパリ伸びていなかったり、食べ蒔きプロジェクトで発芽に手間取った理由として。


「冬が暖かかった為に冬越しが上手く行かず、植物の生体機能が正常に切り替わっていなかった」


との結論に達するのです。

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そんな訳で、次回は後編。


仮説②「雷による刺激が少なかった」と言う点について触れて行きましょう。




では、また、CUL。