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食べ蒔きプロジェクト番外編 トマトの挿し木

前回に引き続き、経過報告の前に番外編。

果実のお立ち台

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今回も、実際に試して成功した事例の1つとして、ご紹介したい手法について記します。

皆様が作物を栽培する際に役立つものとして、ご参考となれれば幸いです。



🌑トマトの挿し木のススメ🌑


さて、このプロジェクトにおいて、トマトは基本的に伸ばしっぱなしで放置しつつ栽培していた事もあり、特に枝葉の手入れはせずにいました。

当然、株のあちこちから、あるいは枝と枝の「股」から生えてくる小さな芽も勝手に大きくなり、いつの間にか立派な姿へと変貌していたりもします。

しかし、色々と調べてみると、効率的な着果を促すには「脇芽」を摘んだ方が良いとあります。
要するに、脇芽に栄養と成長力が分散してしまい、果実が成熟し難くなると言う寸法です。


確かに、脇芽が成長しても「親」ほど開花せず、一体何の為に生えてるのかイマイチ謎な部分がありました。

また、これが思いのほか成長が早く、知らぬ間に巨大化していたりするので、その分だけ栄養ロスに繋っていた事にもなります。
更に言えば、この脇芽を切除してから「親」の開花~着果の期間が短縮される様に感じますし、実際に効果があるらしい事も確認しています。


そこで、この成長してしまった脇芽を剪定する訳ですが、ここでちょっと一工夫。

この切った芽を棄てるのは勿体無いですし、どうせなら「挿し木」で活かしてみるのをオススメします。
実はこれで簡単に株が増やせるほか、成長後は時期をズラしての収穫にも期待が持てます。


今回は、超自己流だけど上手く株分けに成功した方法と手順を、シンプルに個条書きで記してみましょう。



1、ポリポットに土を入れ、水をヒタヒタに注ぐ。

先にポットを用意するのがポイント。
また、ポットの底面から水が滴る程度に濡らす事で、先に土を「締めて」均せば、芽を挿した時にグラつかず安定し易いです。


2、目ぼしい脇芽を剪定する。

出来れば、成長率の高い元気な株から剪定するのがオススメ。
その方が株分けしたクローンも成長が早く、開花や着果も良くなるなど親の特性を引き継いでくれる傾向にあります。

また、同じ期間内で挿しても、「脇芽のクオリティ」により成長率には微妙な差が出たりする為、「葉が多く茎が太い」などの見た目から元気そうな脇芽を選んで使うのもアリです。
概ね、20cm前後まで成長した脇芽が回復力も高く扱い易いでしょう。

脇芽を切る際は「吸水面」を稼げる様、ナナメにハサミを入れるのもポイントとなります。


3、濡らしたポットに芽を挿し入れる。

剪定した脇芽は、ものの数分間も経たずに萎れてしまうので極力早めに挿そう。

イメージ 1


その際、底面の水抜き穴から飛び出ない程度に深目に入れれば、より安定しますし、水を吸い上げ易いと思います。

実際、元気なトマトであれば、茎からも根が生えてきたりしますので、しっかり挿す方が土に定着し易くなります。


4、もう一度、ポットに水をヒタヒタに注ぐ。

挿した直後に即、ポットの表土が隠れる位に水で満たします。

深く挿し水を多く注ぐ事で、より根の生える範囲が広がる訳ですが、イメージとしては水の「浸透圧」で茎に吸水される様な感じです。


5、最低でも1週間以上の期間、朝方に水をヒタヒタに注ぐ。

根が生えるまで毎日欠かさず、常に水が茎に浸透している状態をキープすべくタップリ与えます。

イメージ 2


画像の様に、挿してから数日間は萎れ気味な姿を晒す状態が続くので、枯れるのではないかと心配になると思います。

しかし、これを過ぎると次第に下の葉から元気を取り戻し、最終的には一番上もピンと張ってくるので、気にせず水やりを継続しましょう。


6、挿して以降は、葉の状態に注視する。

上の項目5で触れた様に、根が生えてくると全ての葉がピンと張ります。

しかし、これはまだ「下から上の葉に吸水出来る根」が生え揃った段階なので、植え替える(定植)には長さや範囲が短すぎる。
しっかり根を張るまで、焦らずもう少しポットで育成を促します。

更に根の元気を引き出す場合、液体肥料を混ぜた水を与えるのも良いでしょう。


7、ポットの表土と水抜き穴から、白い根が飛び出しているか確認する。

イメージ 3


これが、完全に根を張ったかの目安となります。
概ね、元気ならば挿してから2週間ほどで根が顔を出すはず。

更に、土の表面から白い根が溢れている状態となれば、既にポット内は根が縦横無尽に張り巡らされていると見て良いでしょう。

イメージ 4


画像ではチョロチョロ程度で判りにくいですが、元気が良いとボーボーに溢れて来る事もあります。

ただし、それ以上に根が広げられない状態になると成長しなくなるので、近日中に畑や広いスペースに植え替えを行う必要があります。


8、定植する前に、根の張り具合いを確認。

イメージ 5


上の項目7を補足する要素となります。

この根がミッチリ密度が高い程、勢いが強く成長率も高い傾向にあります。

また、土を保持する力も強くなるので、定植時にバラけ難く安定し、回復力も増す事となる。
逆に、やけに隙間がスカスカだと、定植後も生育が遅くなりがち。

従って、複数個挿し木を実施する場合、根の張り具合いを見てから植える場所を決めた方が、より効率的な成長に繋がるかと思います。

無論、勢いの弱めな株も開花はするので、ミツバチなどを寄せる用や、受粉用にキープしておきましょう。


9、目的の場所に穴を掘り、定植する。

ポットのサイズより、やや広めに深く土を掘ってから植えよう。
目安としては、ポットの表土から出た根が埋まる程度に。

あまり浅かったり根が地表に出っぱなしだと、ダンゴムシなどに根を噛られる事があるので注意。
項目8で触れた通り、根の張りが良いほどポットの土が崩れ難く植え易いです。


10、定植したら、即座に水をタップリ与える。

やはり植え替え直後は萎れ気味になるので、再び根が張れる様、しっかり注水しましょう。
勢いの良い株であれば、1ヶ月も経過する頃にはポットのサイズより遥かに大きくなるはず。

そうなれば後は勝手に大きくなるので、水撒きは乾燥が続く時に与えたり、雨任せでも大丈夫です。



上記が概要となります。


この挿し木を行う場合、切口から土壌の雑菌が入らぬ様に花瓶や紙コップの水で一定期間、根が生え揃うまで浸す、いわゆる「水耕栽培」が一般的な様です。

一方、このプロジェクトでは、「いきなり土に挿す」方式を採用しています。


個人的な経験談で言えば、最初から土に差していても無事な個体が多く、定植まで至った成功率も約80~90%ほどと高い傾向にありました。
また、水を換えたりポットに植え替えるなどの手間も少なく、管理が楽なのもメリットです。

実際、当初は4株しか無かったのが、この方式で最終的に14株まで増えたので、間違ってはいないのだと思われます。


その株分けで増やした一例。

イメージ 6


背景がゴチャついて見えづらいですが、これらは元々、脇芽を植えたもの。
大きさは横のペットボトルと比較してみて下さい。


あと、もう一つポイントとしては、「ひさし」の下で育成した方が枯れにくいかも知れません。
つまり、直射日光では土が乾きやすくダメージが大きいですし、完全な日陰では光合成が出来なくなってしまう。

なので、軒下や樹木の根元など、時間によって光と陰が入れ代わる様な場所が適切だと言えます。



🌑デメリット🌑

成功率が高かったとは言え、確かに10~20%ほどは定植に至らず枯れてしまったり、また定植後も成長が遅く開花しない等の症状が表れる株も存在します。

この場合、元々の性質や脇芽の個体差が発現した結果と見られ、早ければポットに植えた初期段階から兆候が出始めます。

どちらにせよ、症状が出た段階で免疫力や生命力の状態が判りますので、それは「そういう個体だった」と諦めるほかありません。


また、花の蕾が付いていたり、あるいは開花していたり、はたまた着果している様な脇芽も定着し難い傾向が見られます。

この場合は、「開花(結実)させる」か「根を生やすか」で、エネルギー配分が混乱状態だと推測できるので、基本的に蕾の無い脇芽を使った方が回復が早いでしょう。


更に、季節が遅くなるにつれ、脇芽も定着に時間がかかったり、あるいは萎れたまま回復しなくなる事もあります。

例えば、春に蒔いたタネであれば、秋に入る頃には株の疲労も蓄積している頃合となるので、そこから生えていた脇芽も同様に疲労していると考えられる訳です。
そこで気温も下がるとなれば尚更です。

従って、挿し木する場合は、まだ若い初夏あたりの早い時期に行った方が、より生命力を維持した株分けが可能になるかと思います。



以上が、当プロジェクトにて実践した概要となます。

大きくなった脇芽を見つけても、それを活かす手段として、株を簡単に増やす方法がある事が伝わったのではないかと思います。


タネから発芽させるより成長が早いので、トマトの収量を増やしてみたい時、時期をズラして収穫したい時などに、一度お試しあれ。



では、また、CUL。