CULrides カルライズ

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食べ蒔き作物プロジェクト報告書 最後のメロンのレビュー

前回にて、当プロジェクトでのメロンは、遂に最後の収穫を迎える事に。

9月中旬の様子後編 メロンの収穫ファイナル

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取り込みに成功したのは、いずれも中玉と大玉サイズの二個。
見た目は若干イビツなれど、そのズッシリとした重量感は充分な貫禄を湛えています。

ただ、株が枯れきってからも暫く外に置いていたせいか、気付いた時には虫に噛られたりなどでキズが入ってしまい、そこから膿んで腐り始めるプロブレム発生。

急遽サルベージと相成りました。


うーん、こうなるなら早目に収穫して室内で追熟させるべきだったか。
いや、早すぎてもまだ甘味が足りないままだったかも知れないし。

いまだ正解の見えぬ収穫と熟成の狭間を経て、その味をレビューして参りたいと思います。


※お断り※
今回の果実はリアルなキズ物であり、虫食い被害や傷口にカビなども発生していた個体となります。
場合によっては健康に影響が出る可能性も否定出来ませんので、決してオススメするものではありません。
従って、食べているのはプロのスタントマン的な観点にて、あくまで個人的な一つの事例としてご覧下さいませ。


では、いざ参りましょう。



さて、一つ目は中玉サイズから。
重量は、約1.3kg。

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確か記憶では、7月下旬頃には着果を確認しているので、1ヶ月半は実っていた事になる。

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既に収穫した時点でかなり熟成が進んでおり、尻とヘタ周りだけでなく、全体的にも柔らかい感触。
その為か、香りはこれまでの中で最も特に強く、かなり離れていてもメロンの匂いが室内に漂うほど。


これ以上は置く必要も無い雰囲気ではあるが、念のため常温で2日ほど追熟。

冷した後、その切り口を見て見ると。

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包丁を入れた瞬間から溢れだす果汁と甘い香り。
果肉も艶やかな透明感があり、まさに熟成のピークを迎えている頃合いだ。

ヌルヌルと柔らかな果肉は、スルリと抵抗なく刃が入り、切り分ける間にも果汁がボタボタ垂れて皿に溜まる程で、まるで熟した桃の様でもある。

こう書くと、何となくアレな小説っぽい表現だが、強ち間違ってはいない。


それはともかく、この感触だけで言えば、文句無しにパーフェクトな仕上りである。


ただ、虫食いの影響でキズの部分は既に腐敗が始まっており、キズ口には白いカビが発生。
その為、大幅な切除を余儀なくされ、結構な量を失ってしまった。

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まぁ、この期に及んでは致し方なしではある。


そう言えば昔、親戚などから送られて来た箱一杯のミカンとか、大体いつも下の方から潰れて腐って、結局カビが生えちゃったりしてたよね。
ほんで減らすために急いで食ったり、更にお裾分けしたりして。

栗の中にゾウムシの幼虫がいた時も、ブツクサ文句いながら針なんかでほじくり出した後で、フツーに栗ご飯なんかにして食べていたし。

当時はそれが当たり前みたいな雰囲気(ありがた迷惑みたいな気持ち含む)だったけど、今そんな事ってリアルに許されないんだろなぁ。
今にして思えば、食べ物が沢山あるってだけで幸せだったはずなのにね。

アレで病気になった人とか周りで聞いた事も無いけど、世の中が「キレイなモノ」だけを見たいってのを追求する一方で、一体何を引き換えに「失った」のやら。

当プロジェクトでも以前、「作物の性質は引き換えの関係性にある」との説を述べたけど、そう考えると案外、人間の世界と植物の世界で本質的な違いは無いのかも知れない。


そんなプリーチ臭いノスタルジーとセンチメントはさて置き、どうすれば果実が無事なまま、ジューシーかつ甘美に熟成させられるんだろう。

どなたか、「早目に収穫して室内で追熟」か、「株の限界が来るまで外に置く」のどちらがベターなのか、ご存知でしたらコメントなど残して下さると有り難いです。


うーん、話ズレまくり。

本題は味ですよ、味。



そんなこんなで盛り付けた所で、どれどれ一口…。

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ん…?




おぉ…!




おぉー…。




ほほぅ…。




先ず最初に入るのが、非常に柔らかな果肉の食感。
熟し過ぎな柔らかさの一歩手前、口の中で少し潰しただけで繊維質が優しくほどける適度な歯応えが心地好い。

そして何より印象的なのが、噛んだ瞬間に溢れ出す爆発的な果汁。
前回の小玉サイズも相当にジューシーであったが、この中玉はそれを更に上回る水分量を誇っているのだ。

切った段階から判ってはいたが、いざ口にした時のブワッと一気に広がる瑞々しさは凄いものがある。
いや本当に、ここまで果汁が溢れるメロンは、市場でもなかなか出会わないレベルだぞ。

ハッキリ言って想像を越えるクオリティに仕上っており、我ながら当プロジェクトにおける栽培法が「証明」された様な気持ちになってしまうほど。


だが、その一方。


如何せん、相変わらず味が薄い。


正確には、ちゃんと甘味があるし、その点でも現段階の最大値であるのは間違い無い。

ただ、市場のメロンと比較すれば、甘味は半分位の値にしかならなそうであるし、特に果汁が凄い分だけギャップが目立つのが正直な話。
と言うか、ジューシーさのインパクトで味の薄さが誤魔化されていると言えなくもなく。

この糖度さえ何とかなれば、それこそ誰が食べても納得の食味であるのは確かなんだがなぁ。


この中玉を数値化するに、最大値が「10」であるとした場合。

食感が「10」の満点、甘味が「5~6」と、やや変則的な結果となりそう。

うーん、味が揃うに、もうあと一歩が必要かな?


とは言え、例の小玉サイズでも延べた話ですが、これが数十年前の世界で、そして味覚も昔のままであったならば、もしかすると評価は更に上がった可能性は有り得ます。

あくまで「タラレバ」ではあれど、現代の極度に甘く柔らかでジューシーな果実に、舌が慣れきってしまっている部分が否めないからです。
昔のメロンは、やや硬めで甘さも控え目なのが多かった訳ですしね。

どうでもいい事だが、タラレバとレバニラは語感が似ている。


そう考えると、これはこれで一つの「正解」だったと視点を変える事も可能とは言えます。

何しろ、食感が満点なのは紛れもない事実。
もっと極端に表現すれば、食べ蒔きでランダムに育った挙げ句、こんな「新品種」が出来たとも言えなくなさそうですからね。


とどのつまり、「コレはそういうモノ」として捉えれば、アリな範囲なのです(強引)。



さて、続けて。



お次は、今プロジェクトでの最大クラスとなる、超大玉サイズの登場。

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結実当初は茂みに隠れていたので正確には覚えていないが、こちらも着果から1ヶ月~1ヶ月半は経過しており、それなりの期間を育生していた事になる。


その重量は1.9kgと、まさにスーパーヘビー・ブルータル・ビートダウン・シット。
こいつぁモッシュピットで当たると痛いぜ。

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いや、冗談抜きで本当に、よくここまでデカくなったものだ。


やけに筋肉質な表面は凸凹しており、まるで中の「節」が極度にパンプアップした様でもある。
ここまでガチムチになれば、逆に突き抜けてて気持ちが良い。

また横文字で表現するに、ジ・アルティメット・マッスル・メロン。
略してUMM。

特に語呂が言い訳ではない。


ルックスの印象では、ミカンとか柑橘類の中身の「房」がそのまま大きく硬くなった風情とも思える。
何にせよ、これまで収穫したメロンはキャラクターのバラエティが豊かで、様々な特徴が発現しているのが興味深い。
同じ土壌と肥料であれど、ほんの僅かな違いが結果に作用するのだろう。


それで、こちらも既に全体が柔らかくなっており、明らかに食べ頃を迎えている手触りだ。
香り具合いは上の中玉までは行かずとも、しっかり熟成したメロンの匂いが漂っている。

一応だが、とにかく果実がガッチリしているので、部位によりムラが出ない様、こちらも念のため4日ほど常温で追熟。


なのだが、そうこうしている内にまたキズにカビが生えてしまい出したので、ここが頃合いと見て遂にご開帳。

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追熟の効果か、こちらも非常に柔らかく艶やかな出来ばえ。
何となく、青リンゴにも似た断面図をしている。


こちらは見た目以上に果肉の熟成が進んでおり、中玉に負けず劣らず相当な仕上がり具合い。
しかも、上の中玉と同じく、切れ目を入れた瞬間から果汁がジョビジョバ溢れ出してくる。

ちなみに以前、ジョビジョバと言うコントグループ(現俳優のマギー氏がリーダーだった)がいたのだけど、人気絶頂の頃にやってた番組が面白かった事を思い出す。


それはさて置き、今回の二個とも外に置きすぎた感があったけども、取り敢えず、これぞベストコンディションと言える段階で収穫したのは間違い無いらしい。

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この滴る果汁と豊かな潤いが伝わるだろうか。


となると、これまでの結果を見るに、やはり長めに置くのがジューシーさの秘訣なのか?
初期の硬いメロンで試したかったなー。


ただ、やはりキズの影響は大きく、こちらも結果的には結構な部分をロス。
追熟している間にダメージが広がってしまったのか、見た目以上に範囲が大きかったのだ。

このキズにせよ、虫に噛られ無い様に工夫していたつもりではあれど、それとて少し「お立ち台」で嵩上げしていただけではあるので、更なる改善の余地がありそう。

果実のお立ち台

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丁度これからって時にやられるのが何とも歯痒いが、熟した分だけ狙われ易くなるのは果実の宿命でもある。


そんなこんなで切り分けましたら、はてさて一口…。

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む…!




んむ…?




これは…。




そうかぁ…。




その食感は確かに、間違い無く、上質の口当りと歯触り。

ひたすら口溶けの良い繊維質と、噛めば弾ける豊富な果汁。
それは時に、「歯が要らない」などと表現されるシルキーな柔らかさと喉越しである。

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以前に収穫した大玉サイズが、やけに硬くてパリパリに水分量が少なかった事を振り返るに、どうしたらここまでジューシー感が増すと言うのか。

前述の様に、これが仮に「熟成期間」、つまり単純に「置いた時間の長さ」による違いなのだとすれば、前回の小玉、そして今回の二個がズバリ正解のパターンに当てはまる。

それだけに、「熟成のさせ方」も果実の善し悪しを左右する超重要なファクターなのだろう。


しかし、だ。


やはり、どうにも、甘味が薄い。


これほどの柔らかさと食感でありながら、毎度この部分だけ再現出来ていないのだ。


この大玉を数値化するに、食感が「10」の満点。
そして甘味は「4~5」と、やや中玉より低い結果に。

とにかく、今回の二個とも、果肉の柔らかさとジューシーさだけが最高点の仕上がりなのだ。


前回の小玉サイズのレビューにおいて、「親ヅル」か「子ヅル・孫ヅル」のどちらに結実したかで、サイズと味が変動するらしいと推察してみた。

メロンのレビューと摘芯の話

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これを例にすれば、とりあえず果汁のジューシーさについては、どちらも熟成期間を長く取る事で解決が可能らしい。


だが、今回は2個とも親ヅルに結実していた様子であったし、初期の大玉も親ヅル由来であったので、甘味については「法則」の通りになったとは言える。

メロンとスイカのレビュー

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メロンとスイカのレビュー 第2弾

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これらを総合して考えれば、やはり単純に長く置いただけでは、越えられない壁がありそうだ。


また、概ね作物や動物(魚)などは、サイズが大きくなるほど大味となる傾向にある。

この事と、当プロジェクトで見られたパターンとを照らし合わせるに、メロンも本来の生態において「味とサイズ」は引き換えの関係性とならざるを得ないのだろう。
そして、市場の品種より先祖返りしたぶん、それらの傾向が強く発現したのではないかと考えられる訳です。


かくしてご覧の通り前回の小玉、そして今回のメロンは食感のみが唯一の楽しみポイントであり、また当プロジェクトにおける最大限の成功例とも言えそうです。

いや、食感が再現出来ただけでも御の字か。


何しろ、よくぞここまで育ってくれた訳ですし、ちゃんと食べられる収穫物には違いないですからね。

素晴らしき実りを本当に有り難う。

そして、ごちそうさまでした。



🌑メロンのまとめ🌑

「食べ蒔き」でのメロン栽培ですが、如何だったでしょうか。


個人的な評価としては、甘味には課題があれど、一連を振り返れば意外なクオリティに仕上がったものが多かった印象ではあります。

何しろ下馬評では「まともに育たない」との意見が優勢の中、その半分くらいは覆せる結果を証明出来たのではないかと。

そんな風に見る事も可能かと思えるのですが、どう評価されるかは一連をご覧の皆様に委ねたいと思います。


無論、これら一連の経過と結果が全てではありません。

栽培における事前情報を得ていたとは言え、ほぼ全て自己流で常に試行錯誤していただけに、まだまだ見直すべき点や改善点が挙げられるからです。


しかしながら、もし、どなたか家庭菜園などでメロンの栽培をなさる時に。

あるいは、「食べ蒔き」にチャレンジしようと思い立った際にでも、これまでに記した情報が何かしらご参考となれれば。

あるいは、補完的な役割りとしてご活用頂ければ、これ幸いに思います。


まだまだ、もう少し当プロジェクトは続きますので、以降の経過は次回以降にて記事に致します。



では、また、CUL。