CULrides カルライズ

発見と探究そして文化。そんな諸々の話。

生物の不思議シリーズ 光るバチ

前回のライトゲーム記事の日没後の事。



軽くエギングをしていたのだが、気付くと潮の上流から謎の発光体がいくつも流れてきた。


それは水面直下を漂っており、丁度ケミホタルの中身が漏れ出した様に、緑色に発光しながら海の中で滲んでいる。


最初、夜光虫が発生しているのかと思ったが、どうにも様子が違う。


次々に上流から運ばれてくるそれは、クルクルと回転して渦を巻いており、その直径は20cmほどの大きさだ。


また、渦を巻かずクネクネと蛇行した様な軌道を描くものもあり、最初、アナゴの様な生物が漂っているのかと思ったがやはり違う。


更に、その渦の中心部をよく見てみると、小さな細長いプランクトンの様な生物が、断続的に発光物質を撒き散らしている様子が伺えた。


どうやら、「本体」が光ると言うより、自ら排出した物質が光っている様だ。


あまりに気になったので、試しにロッドティップで渦の中心にいる「本体」を絡めてみようと試みる。


発光物質が噴出している位置に狙いを定めて掬い上げると、見事に捕獲成功。



すると、ティップに絡んだそれは、どう見てもバチ。
そう、イソメやゴカイに代表される環虫類(環形動物)だ。



いや、そもそも実際に環虫類かどうかも確定していないのだが、その特徴からしてゴカイの仲間にしか見えなかった。


その体調は僅か2~3cm程しか無く、そしてあまりに細い為、軽く触れただけで千切れてしまう様な脆さ。
あるいは、「溶けてバラけてしまう」とも言えそうだ。


胴体の皮膚の下には緑色の発光物質が流れており、口と見られる部分から漏れ出して、ティップも緑色に発光している。
これを海中に噴き出していた訳だ。


しかし、ほどなく動きも弱ってしまい発光物質も出なくなった。
どうにも息絶えてしまうと生成出来なくなる様だ。


肝心の画像が無いのは、ティップに絡んだバチを撮影しようと向きやフォーカスをアレコレしている間に、原型を留め無くなってしまったせいでもある。



改めて海を覗いてみると、思った以上にそのバチが発生しているのが見て取れる。


見た感じではいずれも同じバチなのだが、発光物質を出す個体と、一切出さない個体の二種類存在している様だった。


こうして観察を続けていると、段々と流されてくる数は減っていき、その内ほとんど流れて来なくなっていった。

この間、約30分程の出来事である。



長年釣りをしていて、尚且つこの場所でも何度も竿を出しているが、こんな生物と現象を見るのは初めてだ。


ゴカイの仲間が発光物質を出すのも初めて見たので驚きだが、何より気になるのが、何故わざわざ自ら発光物質を出して目立つマネをするのか。


あれでは捕食者にバレバレだし、あの小さい体で断続的に発光物質を生成していては、エネルギーの消費も半端ではないだろう。


あるいは、光る個体とそうでない個体が同種とするならば、オスとメスの違いにより、異性に対する「アピール目的」である可能性も考えられる。


そう考えると、あの体の小ささや脆さからしても寿命は長くないであろうし、短い間に繁殖するにはとにかく発光してでも居場所を知らせる必要があるのかも知れない。



そんな秋の宵闇に、文字通り「生命の輝き」を見たお話でありました。


ついでに、海洋生物に詳しい人で、あのバチが一体何者であったか情報を持ってる方がいたら御一報下さい。

何となく気になるので。





所で、エギングはどうだったかって?






ボーズだよ。