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ロサンゼルスの公共交通に学ぶインバウンドの解決策その1 メトロバスの時刻表2-1

ずいぶん前の話になるが、かつて僕はアメリカのロサンゼルスに暫く滞在していた時があった。
culrides.hatenablog.com

そこで体験したエピソード等は街歩きカテゴリ内「メリケン道中記」の記事にも纏めているのだけど、その当時からどうしても、いつか書こうと思っていた話題が存在する。


それが、表題の「公共交通の時刻表」について。


これに今の日本が抱える公共交通の課題を解決するカギがあるのではないか、と思っていたのだ。


いわゆるロサンゼルスは多民族国家に象徴される人種のるつぼとなっていて、その日常には様々な言語が飛び交っている。
当然、実際には英語が上手く無い人も多いのだが、逆に言えば、それらの人々でも日常生活を送り易くする為に、交通インフラ系のシステムはシンプルに設計されている傾向にある。


それと比較して、日本の場合は全てが国内向けに設計されている事もあってか、その仕組みが複雑になるあまり、「分かる人しか分からない」状態となっている事が多々であると感じる様になった。

これはバスが最たる例なのだが、同じ地域でも各路線ごとに乗り方自体が違っていて、それが前乗りなのか後ろ乗りなのか、あるいは乗車時に運賃を精算するのか、それとも番号札を取って降車時に使うのかなど、そもそも「乗り方がよく判らない」パターンが多い印象。
特に、初めての場所では「どこを通るか判らない」という状況も頻発する。


無論、分からなければ誰かに聞けば良いだけの話ではあるが、それとて毎度都合よく分かる人が周りに居る訳では無いし、サービス窓口も地域の中心地にしか無いのが通常。
オペレーター(運転士)だって、いちいちアレコレ聞かれるのが面倒になる人もいる事だろう。
ネットで調べようにも、ローカル線などは時刻表と料金は分かっても、地図情報は皆無の場合が大半である。


故に、地方都市などでバスなど公共交通の利用客が減っているとして、また高齢でもマイカー利用に拘る人が多いと言われる背景には、その本数以外にも実は「乗降時の説明不足」や「道順の不明感」が関係しているパターンが結構あるのでは無いかとすら思っている。

それを解決出来るとなれば、昨今のインバウンド(外国客)のみならず、この国内でも「なら使ってみよう」と、再び徐々にでも利用客が増えるのではなかろうか。


前置きが長くなりましたが、つまり、ロサンゼルスの時刻表は「誰にでも判りやすくなるアイデア」が満載だったのだ。


と言う訳で、この記事ではロサンゼルスの公共交通を例に、日本でもアイデアとして活かせそうなポイントを、現地での体験を基にした解説など交えつつ紹介して行きましょう。

ただし、この話は2008年~2014年を基にしているので、現在とは若干違う部分もあろう事はお断りせねばならないのですが、基本構造は変わっていないはずです。

いずれにせよ、この国のインフラ再建にとっては絶好の参考資料になるかも知れないので、とにかく先入観は抜きにして、最後まで読み進めて貰えますと幸いです。


🌑メトロの時刻表は良く出来ている🌑

では本題にあたって、以下の画像はメトロバスの時刻表の表紙。
画像左から「鈍行」、中央「快速」、右「急行」となる。

画像中央の「Express」と右の「Rapid」は殆ど同じ様な意味あいなのだが、エクスプレスは途中でフリーウェイを通り、レイピッドは下道を通るが専用の停留所ないし鈍行の停留所を飛ばし飛ばし停まったりなどの違いがある。
なので便宜上、快速と急行として訳しています。


ちなみに、このメトロとは基本的に地下鉄を意味するが、アメリカでは「市の公共交通」を統一する表現ともなっている。
日本で言えば、まさに「市営線」ないし「都営線」と同じ感覚と言えましょう。


では、画像の文字を判別しやすくする為、赤の急行を例に話を進めよう。

その表紙には、先ず上段にバスの番号、そして中央には行き先と経由する道の表記。
上記は略図となり、概ね「この道順で、この地域を通過する」と言う情報が一目で判る様に記されている。


下の方には「予告なしに変更される場合があります」との注意書き。
何かあれば「詳細はウェブで」となるが、これは何処の世界でも変わらないだろう。
更に下の行は、「どこでも車椅子が利用可能」との意味である。


この様に、別の時刻表に載っている告示にも「高齢者や障害のある人のために場所を空けてください」と表記されている。

基本的にロサンゼルスのメトロバスは、どの路線でも車椅子で乗車可能となっていて、乗降用の「小さいリフト」が前方ドアに設置されているのが通常。
日本で例えれば、トラックの荷台後方にある、荷物の積み降ろしに使う「パワーゲートリフター」に良く似た装置となっている。

それでバスに引き上げられたら、車内の通路にある金具ないし座席などに、フックの付いたベルトで車椅子を固定する仕組み。
しかも、乗車時に座席を畳めるバスもあり、広いスペースの確保も可能となっている。
また、この乗降は主に運転士がヘルプするのだが、乗客が手伝うシーンも普通の光景である。


ちなみに、車体の前方には自転車を乗せるキャリアー(折り畳み式の荷台)も付いていて、一ヶ所につき2台積める様にもなっているので、チャリで乗り付けての利用も可能。
どちらも肝心の写真が無いのが惜しまれる所だが、その辺はググれば色々な画像がヒットするかと思います。

ただ、この辺は日本の場合、乗車率の高さや道幅の狭さもあって簡単に真似が出来ないとしても、その辺りに余裕のある地方都市であれば、導入する余地はある気がします。

このチャリに少し関連したエピソードは、コチラでも触れております。
culrides.hatenablog.com


次は時刻表を展開してみよう。


表面より。


裏面より。

この様に、時刻表と地図は一体化していて、折り畳み式になっている。

もちろん、日本の時刻表も準じた略式のは存在するが、どちらかと言えば「分厚い本」みたいなものか、カード式の薄くて小さいものなど両極端な印象。
また、それらを入手出来る場所も、地域のターミナル駅にあるサービス窓口しか無いのが通常である。


対してロサンゼルスの場合は、サービス窓口のほか「各路線のバスの車内」でも入手が可能で、大抵は運転士の背面にある間仕切りに設置されたラックに、誰でもピックアップ出来る形で置かれているものとなる。
また、「近い路線を走る別のバス」の時刻表も同じ所に置かれているので、一度乗るだけで複数種類の路線図を入手する事も可能である。


そして、これらは全て無料。


そう、この時刻表はサービス窓口でも、そしてバスの乗車中に貰う場合でもタダで、しかも関連する路線まで同時にチェックできるのが最大の特徴なのだ。

これは、イイッ(・∀・)!


てな訳で次回は、更に詳細な内容に触れて行きましょう。



では、また、CUL。