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ロサンゼルスの公共交通に学ぶインバウンドの解決策その3 地下鉄の時刻表

この記事ではロサンゼルスの公共交通である「メトロの時刻表」が、日本の公共交通の利便性を向上させるヒントになるのではないかとの話を展開。
前回までに、バスの概要を紹介しました。
culrides.hatenablog.com

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そんな今回は「ロサンゼルスの電車」について、前回の内容を基にしつつ自らの体験とも交えながら解説して参りましょう。


🌑電車の時刻表はバスと共通化されている🌑

これはメトロが運営している、文字通り地下鉄の時刻表。

これは「メトロ・レッドライン」と言う、ロサンゼルス中心部からハリウッド、またはコリアタウン迄を通る路線で、ダウンタウンに住む人々にとって最もポピュラーな存在。


では、展開してみよう。


バスとの違いがあるとすれば、運行本数が多いので時刻表が一面広く取られている所か。


読み方と記載内容はバスと全く同じ。
左から始発で、右に読むと終点に向かう形式。


他に特色を挙げると、このレッドラインは運行時間帯の幅がやたら広い事。
なんと平日は早朝4:30始発で、夜1:00頃まで運行している。

このダウンタウン近辺を回る公共交通は運行量が手厚い傾向にあり、市内~ハリウッド間を往復するバスに至っては24時間営業(ただし深夜は1時間に1本くらいのスパン)である。

運転士の人は交代するとしても、こう読むと実は日本以上にハードスケジュールだと思えなくもない。


それで、また話はバスに戻ってしまうが、メトロの服務規程は日本と比べ弛い感じで、タトゥーだらけのデーハーな運転士や、やさぐれた雰囲気の人などキャラにムラっ気があったりする。
あるバスに乗ってる時などは、「ちょとトイレいてくる!」と言いながら急にファストフード店に横付けして便所にかけこむ運転士もいた。

また、客と口論になったり、「乗るな!」と乗車拒否するシーンも多々で、日本だと炎上案件な対応の人も多いが、それでも何事も無かったかの様に普通に運行されるのがメリケンらしさでもある。

もしかすると、その辺りで自分の裁量も割りと大きいぶん、ストレス面が軽減されているのかも知れない。


話を元に戻そう。


もう一つ特筆すべきは、このマップの右「CONNECTIONS」と言う欄にある、「乗り換え線」の詳細な記述。

読んで字のごとくコネクションズとは、各駅から乗り換えられる他の路線を指すが、この図表では自治体のローカル線などは勿論、その番号まで網羅されている。
大体は「○○線乗り換え」だけしか書かない事を思えば、ありそうで無かった利便性の高さではなかろうか。

その辺で、普段は大雑把なメリケンの、妙なマメさが際立つポイントだとも言えなくもない。


勿論、このマップ自体は略図ながら、詳細な情報を一覧出来るように作られている。


主要なランドマークとなる場所や交差する道が解りやすく記されていて、非常に使い勝手が良い。


とまぁ、同じメトロなら「電車もバスも同じ方式の時刻表」と言うだけの話でしたが、こうして統一感のある方が使う側も、そして提供する側としても判りやすいのは確かである。

そして何より、電車なり地下鉄であっても、やはり地図が併記されているだけで目的地までの道順がイメージしやすくなるのは、メリットとして非常に大きい。
だってほら、それが判れば「じゃあ降りて散策してみよう」とか、「あの道や店が近いなら住んでみよう」ってなり易いと思いますし。

それは即ち、移動のしやすさ、あるいは移住者の呼び込みにも効果を発揮する様に思うのですが、如何なものでしょうか。



オマケシリーズ。



時刻表の余白にある、告示広告も見てみよう。


これは「怪しい動きのヤツやブツを見つけたら、すぐメトロかシェリフ(保安官)に報告を」。

標語は翻訳機にかけると「転ばぬ先の杖」となるのだけど、つまりは後悔するより安全策をとる様に促している訳です。
とにかく「すぐ、俺に言え」by K DUB SHINEと言う話である。


こちらは、「tap」と言う、メトロのバスと地下鉄で使える、いわゆるSuicaなど交通系ICに該当するカードのお知らせ。

昔はキップを買う方式だったが、現在はこのカードが無いと電車に乗れないシステムとなっている。
バスの場合は現金でも大丈夫だが、やはりカードの方が便利。

購入先は各駅のほか、みどりの窓口的なサービスセンターなどとなり、駅の券売機でチャージして改札にタッチする所も同じである。
ただし、いわゆる買い物には全く使えない。


で、標語の「Get your boss to buy your pass.」とは、つまり「上司に交通費を支給してもらっちゃえ」と言う事らしいが、さりげなく韻を踏むところがアチラ流。


コチラは、安全な乗車方法を促す内容。
見たまんま、「席が空いてるなら座るか、吊り革や棒に掴まって」、と言う話。

色々とメチャクチャな連中が多いロサンゼルスにあって、実は意外とフロアーに座り込んで占有するような人は少なく、基本的にはみんな静かだし、あまり酷いマナーのヤツや五月蠅い人がいれば普通に注意されるしで、割りと行儀が良かったりする。

しかし、それでいてモグリの車内販売がいたり(メトロ車内は飲食禁止なのにスナックの売り子が毎度現れる)で、ワケの分からない人物が次々乗り込んでくるのだから、まったく謎のギャップである。


コチラも、保安官への協力を促す内容。

言わずと知れたロサンゼルスは犯罪多発地域。
実際のところ電車でもバスの車内でも、細かなトラブルに出くわすシーンが度々ある。

なので、こうして保安官が車内(電車のみ)を巡回していたりする。
いつもなら平和なのに、まったく謎のギャップである。

電車内のトラブルなどに纏わるエピソードはコチラにも。
culrides.hatenablog.com


この保安官に付随するのが、下の告示。

ご覧の通り、「キセル乗車したら罰金$250か、40時間の社会奉仕活動」が課せられる。

実は、メトロの各駅は基本的に無人駅なので、改札を通り抜けたり飛び越える人も結構いたりする。
一応、それを防止するため車内では保安官が抜き打ちで検札している事もあり、確か記憶ではハンディ端末を使ってカードを改札に通したかどうかをチェックされるのだけど、この時に不正が見つかると「違反キップ」に著名を書かされるハメになる。

標語はまさに、「今払うか後で払うか、よく考えよう」と言う訳です。


また記憶の話ではあるが、10年ほど前までは単なる「出入口を記すポール」が設置されているだけで、そもそも改札と言う概念すら無いような駅が殆どであった。
故に、いわゆる規範意識の乏しさを招いていた部分は否めないが、そういった問題を払拭する意味もあってか、近年はロールバー式の自動改札機が導入されたり、また先述のtapカードが無いと入場出来ないシステムになって来ているのでしょう。


ちなみに、上の画像では2008年頃のものなので基本運賃が$1.25とあるが、14年頃には$1.50、そして現在は$1.75と値上がりしている模様。
とは言え、全線で統一された料金で、どんな距離でも同じ(高速に乗る際は追加あり)である事を思えば、破格のサービスであるのは間違いない。

無論、財源の課題が大きい事を思えば、おいそれとマネする訳にも行かないのですが、この「運賃の明解さ」も利便性に一役買っている事は参考になるポイントかと思います。


オマケのつもりが長くなったなぁ。


次回、更に「これぞ最強の便利アイテム」について触れて行きましょう。



では、また、CUL。