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ロサンゼルスの公共交通に学ぶインバウンドの解決策その2 メトロバスの時刻表2-2

この記事ではロサンゼルスの公共交通であるメトロの時刻表が、日本の公共交通の利便性を向上させるヒントになるのではないかとの話を展開。
前回は、触りとなる一部を紹介しました。
culrides.hatenablog.com


そんな今回は、更に詳細な内容を画像と共に、自らの体験とも交えながら解説して参りましょう。


🌑メトロの時刻表は内容もシンプル🌑

では、前回の展開図を踏まえ、順に話を進めて行こう。


下の画像は、走るルートの略図。

表紙の略図より詳細に、「どの道」を通り、「どの交差点」で曲がって、「どの地域」に乗り入れるか、「どの停留所」に止まるかが、一目でチェック出来る様になっている。


特筆すべきは、それぞれに交差する道(国道)や町の「名前」も正確に振られていて、自分が今どこを走っていて、どんなルートで向かうのか迷わない様に作られている点。
また、同じ路線の、あるいは交差するバスの番号も記載されているので、何処で何番に乗り換えれば良いかも判りやすい。


画像の中央にある点線の囲みは、「略図に収まらなかった場所の地図」。

これはダウンタウン中心地なのだが、要するにイッペンに全線丸ごと表記してしまうと図がゴチャゴチャして判りにくくなるので、あえて別表にしてあるのだ。


更に、この画像下の囲みは、ダウンタウンの更に「別表に収まらなかった場所の別表」となり、始発駅からの乗り場が記されている。

少しややこしいが、別表の上段や端に「Inset Map(挿入図)」とある様に、細かい場所は「それぞれ別のウィンドウ」で開いてある訳です。


この図も、終点にある各路線の乗り場案内。
実際の場に立つと、いわゆる「駅前のバスターミナル」みたいな感じになります。


略図の右端にある囲みは、マップ上に記載されている番号や記号の説明。

画像左の番号には、路線上にあるショッピングセンターや建物など目印となる場所の名称。
更には、その場所に停車する他のバスの番号も記されている。
この番号がルートマップ上に落とし込んであるので、目的地に行く際に重宝する。


下は、記号に関する説明図。

細かく解説するには長くなるので省くが、概ね日本と同じで「停留所」や、「電車への乗り換え場所」、「上り下り線乗り場」などが記号化され、やはり地図上に落とし込まれている形となる。

ちなみに、項目の見出しに「LEGEND」とありますが、ここでは「伝説」ではなく「図の凡例」と言う意味になります。



ここまでをご覧の通り、殆ど略図だけでも町歩きが可能なほど、よく出来ているのがメトロの時刻表の特徴。
と言うか、実際にかなり役立っていたし、これで相当に移動がスムーズになったのは確かである。

つまり、この簡単な地図があるだけで、「降りる場所の具体的な情報」が掴みやすくなるのだ。
日本でも「降りる場所のドコに何があるかよく分からない」シーンがあるけど、その不安感が軽減される訳である。

これだけでも、相当な参考になるのではないでしょうか。


話を元に戻そう。


下の画像は時刻表。

その概要は日本とそう変わらないと思うが、ちょいとクセや相違点もあるので詳しく解説して行こう。


ご覧の通り、コチラ面は「月曜から金曜」の運行スケジュール。

左側は「北行き」、右側は「南行き」とあるが、これは地図上の方向を意味していて、「西行き東行き」の場合もある。
日本で言えば、まさに「上り下り」と同じ様な意味あいだ。

運行順としては、画像の中央線で区切られた左側「北行き・ロサンゼルス市内」を見ると、左端に表記されているバス停から始発となり、右へ行くと終点となる。
同じく、右側は「南(ロス市内)行き・レドンド・ビーチ」となり、やはり左から右へ読み進めるほど終点へ行く形式。


停車時刻は下へ読むにつれ遅い時間帯となる。

ただ、日本と違うのはアメリカの場合 「24時間表記」ではなく「AM・PM表記」になっている為、時々「AM7:00」なのか「PM7:00」なのかで混乱する事もある。
なので一応その見分けをつける目的からか、午前の一番なら「5:01A」、午後イチなら「12:14P」と、時刻の末尾にアルファベットで注釈が入れてある。


ちなみに、この時刻表は全ての停留所の停車時刻を記してはおらず、「主な停留所に概ねこの時間に停まる(来る)」と言う、いわば目安に近いものとなる。
従って、その間にある停留所に限っては時刻表にされている時間を参考にして、「多分この位だろう」と予想しながら待つ事になる。


実際、よくよく見れば行き先の項目に小さく[Approximate Times(大体の時間)]とある様に、アメリカでは停車時刻が多少ズレるなど日常茶飯。

また、バス停にも日本の様に詳細な時刻表が掲示されている訳では無く、大体は小さなプレートに「朝は5分間隔、昼は15分間隔、夜は30分間隔で運行」みたいに、ザックリとした表記があるだけ。


もっとも基本的に車社会である以上、情報としては必要十分なのであろうし、それでも何だかんだ成り立っているのが、ある意味メリケンの凄さとは言えるかも知れない。


次に、その裏面は「土曜、日曜、祝日」の運行スケジュール。

上の時刻表では「土曜」のみが記されているが、この路線は日曜に運休する為。
ロサンゼルスでは、急行を始めとして日祝祭日は休む路線が多いので、現地では注意が必要です。


この運行スケジュールは路線ごとに様々なバリエーションがあり、下は土曜、日祝祭日は同じ扱いとなっている。


こちらは、土曜と日祝祭日では別々である。


また、深夜便がある場合も、別の図になっている。

ちなみに、ここで言う「Owl」はフクロウでは無く、「夜更かし」とか「終夜営業」との意味あいです。


そして更に、そもそも便数が多い路線では、この様にページ数も準じて増えて行く方式。

簡単に言えば、「紙面が延びて折り畳む回数が増える」のだが、畳めば他の時刻表と同じサイズに戻るので、利便性は変わらない。


次に、こちらは注釈。

この注釈は各路線ごとに細かく違っていて、ちゃんと読んでおかないと「なぜか変な所で降ろされる」事もあったりして困る時があるので、やはり先に目を通しておくのをオススメしておきます。

で、画像の内容を簡単に説明すると、上段は「上り線は○○通りを通過します」とか、「下り線は××との交差点で終点となります」と言った意味。
実は、ロサンゼルスでは終点のバス停が上り下りで若干違う場合もあるので、やはり注意が必要である。

その時のエピソードもコチラに。
culrides.hatenablog.com


画像中段は、時刻にAの表記がある場合は「表示の7~8分後に終了する」、Bの表記の場合は「表示より7~8分前に始発する」と言う事らしい。

いや、正直よく解らないが、どうにもAは「終点に着く手前あたりでサービスが終了する」のと、Bは「始発駅じゃなくて別の交差点からの乗り出しになる」、と言う話かと思われます。


この違いは恐らくだが、どちらも「始発(終点)駅の時刻」は表示されておらず、「その近くの交差点にある停留所の時刻から」記されてる事から、前者Aは「ある地点を越えたら、そのまま車両基地に直帰するため」と、後者Bは「始発駅の混雑を避けるため、車両基地から停留所へ直接向かうから早めに待ってて」と言う意味あいがあるものと考えられる。
ハッキリしなくてすみません。

多分、この「手前でサービスが終了したパターン」と思われるエピソードがコチラである。
culrides.hatenablog.com


画像下段は、前途の通り「土曜&日祝祭日は運休するので、別のバスの時刻表を参照して」との事。

この場合、先述の様に同じ路線を走るバスならば「鈍行」と「急行」どちらの時刻表も車内に置いてあるので、乗車時に両方ともキープしておくのがベター。

この注釈をご覧の通り、右側にはスペイン語訳も記載されている。
ロサンゼルスや西海岸の南側はラテン系の人々が多いので、この時刻表を始めバスや電車の車内も、同時通訳的に表記されているシーンが多いのです。


以上、ここまでが概要となる。


この時刻表は非常に簡素な造りながら、利用時における必要最低限の情報が集約されているので、一度読めば大体の内容を理解出来る様になっている。
この「誰が読んでも判りやすい」と言うのが、実は日本の公共交通ではありそうで無かったポイントではないかと思う。


しかも、この方式による最大のメリットは、「手間もコストも少なく済む」事。


やる事としては、簡単な路線図と時刻、そして乗り方や注釈など必要情報のみ網羅すればOK。
一度「雛形」さえ作成しておけば、他の路線でも応用が可能となる。

乗務員側の作業としては車内のラックに「置くだけ」となり、足りなくなった時に補充するのみ。
乗客が自由にピックアップする方式なので、ほぼ手渡しするシーンは無いに等しい。
強いてインバウンドを意識するなら、単純に英訳などを併記するだけとなるので、ある程度なら説明する手間も省ける。

後は、余白に地元企業などの広告を入れて印刷コストを賄える仕組みになれば、ローカル線でも資金的な負担は減るはず。


更に前回記した様に、この時刻表は「バスの車内に複数種類置いてある」のが通常で、一台乗れば同じ路線を走る別のバス、あるいは交差するバスの時刻表をイッペンに取得する事も可能。

具体例として前回の画像を参照しておくと、下の3つは微妙に通る道や目的地が違うのだが、全て同じバスの車内に置いてあると思えばイメージしやすい。

要するに、「40番のバスには、ほぼ同じルートを通る740番と444番の時刻表も置いてある」し、別の番号の場合も然り。

これが複数揃う事により、行く先を少し変更したい時や、アクシデントで不通になった場合などで「ルートの選択肢を増やす」事も可能になるのだ。


個人的には、この様な略図と説明表記があるだけで日本の公共交通の利便性は飛躍的に高まるものと考えている。

実際、初めて乗る路線では、一体どの道を通って途中でどんな場所があるか全く分からないのが通常。
また、目的地がハッキリしていれば運転士に停留所を尋ねれば良いが、実際は「ぶらり途中下車」したい時もあるのが旅行先あるあるだったりする。

つまり、この略図さえあれば、「観光地以外の色々な場所に人が来てくれる」可能性が高まるのです。
これぞまさに地方創生の一助になると思うのですが、日本のバス会社の皆様どうでしょう。


無論、これでは参考資料の域を出ないだろうし、日本において全てが同じ様な方式を採用出来る訳でも無いのは確かである。
しかし、もしロサンゼルス市と姉妹都市や提携の関係にあるならば、むしろ「ウチもやりたい」と言うのは難しくないはずで、単純に良い所は取り入れた方が全体的にプラスの効果が大きいはず。

それこそ、一度現地で使えば効果を体感出来るのは間違いないので、ここは是非とも視察に行くのをオススメしたい所であります。
いや、本当に便利なんですよ、うん。


そんな次回は、更に補足的な情報に触れて行きましょう。


では、また、CUL。