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ロサンゼルスの公共交通に学ぶインバウンドの解決策その4 最強のアイテム

このシリーズではロサンゼルスの公共交通であるメトロの時刻表が、日本の公共交通の利便性を向上させるヒントになるのではないかとの話を展開。

前回までは、電車の時刻表や細かなエピソードも紹介しました。
culrides.hatenablog.com


そんな今回は補足的な話を、自らの体験とも交えながら解説して参りましょう。


🌑システムマップがあると無敵🌑

これまでに、メトロの時刻表について触れて来た中でも最強のアイテムとなるのが、この「システムマップ」なるシロモノ。

これは市域を走るメトロの、バスと電車を含めた全線の路線図を記した内容となっている。
しかも、メトロ以外の自治体が運営するローカル線の全種についても、どの地域のどの道を通っているかまで記載されているのだ。

これはゴイスーである。


そして勿論、これも無料。


ただし、通常の時刻表と違うのは、このシステムマップはバスの車内などには無く、ターミナル駅の近くにあるメトロのサービス窓口(みどりの窓口的な所)で入手するのが基本。
なので、現地で公共交通を軸に移動する場合は、先ずこのシステムマップから入手する事をオススメしておきたい。

ちなみに僕の場合、バスのオペレーター(運転士)と乗り換え場所を相談していたら、「だったらコレあげるよ」と、ひょんな拍子に貰う事が出来た。
とまぁ時に、この様なパターンもあります。


では、当のシステムマップの内容を見てみよう。


先ずは展開してみる。


片面は北部側。


もう片面は南部側。


そして、ダウンタウンは別表。

このマップ、実は畳んだ状態では500mlペットボトル程のサイズだが、展開するとタテ40cm、ヨコ70cmほどと、かなりの大きさになる。

しかしその分、市内全域の交通網が一目にチェック出来るだけでなく、路線となる国道やハイウェイの名称を始め交差点の位置、そして主要な商業施設や公園なども記されており、それぞれのバスや電車の位置関係を把握しやすくなっている。

即ち、文字通り地図としても優れた作りになっているのが最大の特徴と言えよう。


更に細かく見ていこう。


この表は、主に各駅停車、つまり鈍行バスの全図。

これだけでも相当な本数である。

ちなみに、番号の数字が大きくなるほどダウンタウンから離れた地域を走ったり、主要な停留所のみ停車する「限定運行」などの違いも出てくる事になるので、いずれにせよ詳細なスケジュールは各線ごとの時刻表を要確認である。


それより驚きなのは、24時間運行の路線が多いこと。

表の左側にある陰陽みたいなマークが24時間運行(終夜便)だが、どうやってこんなに運転士を配置してるんだろう。


お次は、市内を走る電車のリストと、その運行表。

バスにせよ電車にせよ、細かに時刻表を表記している訳ではなく、ご覧の様に「ピークは5分間隔、日中は12分間隔」などの目安値のみが記される。
もっとも、これだけでも乗り換え時の参考となるのは間違いない。


お次は、メトロバスの快速の運行表。

この快速とはシリーズの初回でも記した様に、ハイウェイやフリーウェイなど高速道路を通り、通常より早く目的地へと向かうバスとなる。
この場合、乗車時もしくは高速に入る前に追加料金を支払う必要がある。



お次は、シャトルと巡回バスの運行表。

正直、これは乗った事が無いのだけど、どうやらイベント事があった時などに会場とを繋ぐ為の臨時路線らしい。


お次は、「バス電車」の運行表。

これは比較的近年になり設置された路線で、車体や通過する道順もバスそのものなれど、扱いとしては電車に近い存在。
特に、「オレンジライン」は一般道から区切られた専用レーンを通るので、いわば「バスの形をした路面電車」となるのだけど、これは予算に乏しい日本のローカル地域でも活かせそうな部分かと思います。

また、「シルバーライン」の南部側を使う場合は、フリーウェイを走るので乗車時に追加料金が必要となるが、その辺が幾らになるかは、運転士に尋ねると良いでしょう。


お次は、急行バスの運行表。

これは第2回で細かく触れた様に、鈍行よりも早く目的地へと向かうバスとなる。

かなり本数が多いので使い勝手は抜群だが、日曜祝祭日などは運休するパターンもあるので注意が必要。
表の下には注釈があり、アルファベットで記号化され時刻表に落とし込んである。


コチラの図は、地図上の記号の解説。

読んで字のごとくだが、アムトラック(大陸横断など中~遠距離鉄道)やグレイハウンドバス(同じく大陸移動バス)、あるいは空港など他の交通情報も記されている。


コチラは、ダウンタウン市内の各駅から乗り換え出来る、その他の路線バスの一覧表。

これだけ色々あると、どれに乗れば良いか逆に判断が難しいと言えなくもなく。
しかし何にせよ、非常に詳細な情報が網羅されているのが有り難いところ。


コチラはメトロ以外の、 市内を走る自治体運営のローカル線の一覧表。

こうして見ると、思った以上に種類が多い事に驚かされる。
概ね、ローカルエリアほど運行本数が少なくなる傾向にあるのは致し方ないが、計画立てて乗継ぎすれば結構に色々と回れるのは確かだ。

車社会のイメージが強いロサンゼルスではあるが、これら公共交通を駆使するだけでも、むしろ日々の生活が成り立つくらいである。
実際の所、メトロの車内には「メトロで通勤しよう」といった標語が掲示されている事もあり、市としても力を入れている様子が伺えた。


これは現地の道路を走ると実感するが、この車社会の弊害ゆえに朝夕の渋滞は凄まじいものがあり、極端に言えば、殆ど毎日「お盆の渋滞」みたいな規模の距離と台数がひしめき合うほどである。
また付随して、光化学スモッグによる大気汚染や呼吸器の疾患が問題化しているのも実情。

それを改善する意味で、公共交通を使う様に促している構図と言えるが、結果的に朝夕の電車とバスも凄まじい満員状態になるので、なかなか難しい選択ではある。
その辺の事情は日本と大して変わらず、「大都市あるある」みたいな所なのだろう。


最後に、これは第2回で触れた、メトロ共通ICカード「tap」を使う様に促す内容の話。

どうやらサービス窓口以外にも、提携する金融機関やドラッグストアの一部店舗でも買えるらしいです。
僕も使ってたけど、今は何処に行ったやら…。



さて、ここまでがシステムマップの概要となります。


結論を言えば、やはりこの日本でも、地域一帯の地図情報と交通網を網羅した一覧表みたいなアイテムがあれば、飛躍的に利便性が高まるものと考えられる。
これと個別の時刻表を駆使する事で土地感覚が掴みやすくなるだけでなく、施設情報を結び付けながら移動範囲を広げる事も可能になるので、結果的に利用率も高まるはず。

いや、もしかすると既にあるのかも知れないが、それはどちらかと言えば「自社のみ」をフォローしているか、あるいは「交通網だけ」記した物が大半である気がする。
このシステムマップの様に、包括的な内容となる物は殆ど無いのが実情ではなかろうか。


いずれにせよ、この記事をご覧になられている公共交通や自治体の方がいらっしゃるのだとしたら、実験的に導入されてみるのも一考かと思います。



おまけシリーズ。


同じロサンゼルスの南部にある、トーランスの自治体で運営している「トーランス・トランジット」バスの時刻表。


その見方はメトロと殆ど同じ。


マップは幾分かラフな作りだが、ちゃんと把握出来る内容。


時刻表も同じだ。


これらローカル線の運賃はメトロより更に安くて、このトーランス・トランジットの基本料金は市内で一律¢50。※2014年時点。

また、トーランス市からロサンゼルス市内とを繋ぐ路線もあり、そちらは¢75なので、メトロより半額ほど安くダウンタウンから往復する事も可能。
しかも、高齢者や障害者に至っては¢25で全線が使えるなど、破格極まる料金体系となっている。

つまり、日本なら誰でも¥100以内で、市内から圏外まで乗れる計算なのだ。


こちらには、「乗り方の心得」みたいな話も掲載されていて親切。

スペイン語訳も併記されている。
ちなみに、ここで言うTipsとは「ヒント」を意味していて、「旅のヒント」みたいな話の時に使います。


同じ運営母体なのか、それとも姉妹路線なのか。
こう言う限定されたエリアを走る急行バスもあるらしい。

と言うか、ロサンゼルス一帯でどれだけの種類が存在するんだろう。


このトーランス以外にも以前、やはりロス中心から北東エリアに位置する自治体が運営している、「フットヒル・トランジット(Foothill Transit)」の時刻表も持っていたが、何処かへ紛失してしまった。
ただ確か、それはブックレット(小冊子)の形式だったので、運営会社により時刻表の形も変わるのでしょう。

もちろん、その路線も統一料金が安く設定されていて、快適な車内空間であった事も付け加えておきたい。
ロサンゼルスでは、何故かメトロよりローカル線の方が綺麗でシートの座り心地が良かった印象である。


そんな訳で、ロサンゼルスで得たフィードバックのお話でした。
これらの記事がいつか、どこかでお役に立てれば幸いであります。



では、また、CUL。