CULrides カルライズ

発見と探究そして文化。そんな諸々の話。

OZZFESTに行ってみた 前編

90年代よりオズフェストの日本開催を望む声が聞かれて幾年月。

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その間にBEAST FEAST、そしてLOUD PARKに遅れを取る形で遂に2013年に初開催と相成った訳だが、しかし、参入の遅れからなのかラウドパークにメンツやシェアを奪われている感が強い。

勿論、メタルとしては実績実力共に申し分無いバンドが目玉ではあるのだが、やはりイロモノ感が強かったり、そもそも「オジーや所謂メタルファンとの関連が薄そう」なバンドの出演が相次いだのも、「浮いてるフェス感」を強めた原因であろう。


更に同じく新規参入組のKnot Fest(そう言えば昔Tattoo the earthってフェスやってたよね)や、サマソニのメタル枠等を見るに、メンツの争奪戦も一層厳しさを増している事が伺える。

何より、そもそも日本でのメタルファンの絶対数には限りがあり、これ以上の集客が難しい面があるのは否めない。
仮に一年間の中で各フェスをハシゴするとしても、時間的にも費用的にも負担が大きいであろう事を思えば、必然的に優先順位をつけざるを得なく、そうなれば「既にスタイルが確立された方」へと人が偏って行くのが自然な心理でもある。


尤も、そんな細かい事気にせずに、観たまま楽しめば言いだけの話ではある。
言い出したらLOUD PARKも当たり外れがあるし、海外のフェスもメンツのボーダレス化が進んでいるのも事実。

そういう意味では、昔ほどピュアにメタルであるとかそうで無いかの違いに煩くなくなり、良い時代になったとも言える。


しかし、はやりと言うかメンツの問題で最初はスルーするつもりだったのだが、HATEBREEDが出演すると聞いて俄然行く気に。
それに、それならまだ観た事の無い他のバンドも観てみる気持ちにもなる。
やはり「決め手」は大事である。



そんなメタル過渡期?の最中、今回初めてのオズフェス最終日22日に行ってみたのです。



さて、10:30頃に会場入りをするつもりで入場口に向かうのだが、てっきり入り口でチケットをリストバンドと交換するのかと思いきや、リストバンド交換所が別の場所に設置されていると知り、一旦後戻りを余儀なくされる。

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いや、オフィシャルサイト上の地図をよく読めよって話ではあるのだが、何だってあんな離れた場所に設置する必要が?
列が混雑して、人が道に溢れるのを防止する為の措置?


あれでは幕張駅からも駐車場からも進行方向より微妙にズレてるし、そもそもあんな目立たない場所に設置されてる上に、案内の看板(と言ってもA4サイズの紙を周辺の壁に貼り出しただけの物)まで地味で目立たない。
チケット引換所と入場口があんな離れてるなんて初めてのパターンである。
こう言っては何だが、分かり難くて困惑したのが正直なところ。


などと苦言を呈しつつ、とりあえずは無事に入場を果たす。

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先にリストバンドを装着している分、入場は早い。
再入場も楽で良い感じ。


手始めに物販を覗く。


これはヘイトブリードのマーチャン。

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ただ、彼らも含め他のバンドもアイテム数が少ない気が。


と言うか、売ってるのがオジー関連に偏り過ぎて、まともな物が無い。



この手のフェスの物販でいつも思うのだが、ステッカーやバッヂやパッチやらもっと細かいアイテムを充実させて良いんじゃないかとは思う。
ポケットに入れて手軽に持ち運べるし。

まぁ、利幅が小さいから作らないのかも知れないけど、フェスだからこそ沢山売れそうな気もする。


今回ゲスト出演するらしい、ふなっしーも便乗。
完売御礼。

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「ふなメタルロック」とかどんなもんかと思ってたけど、たまたま持ってる人のプリントを見たら、あのクオリティで売り切れるのかと。

なんとボロい商売とは思うが、「中の人」がハードロックやメタルが好きらしいし、多分これで良いんだろう。



全体を見渡し思うのは、やはりLOUD PARKに比べると圧倒的に出展企業や物販が少ない事か。
レコード会社も全く見当たらないし、力入れる気無いのかな。
その辺も、これから整ってくのかもしれないけど。



そんな余計なお世話な前置きはここまでにして、ライブの感想なぞを。



a crowd of rebellion
概ねスクリーモブーム後の、現代版エモメタルと言った具合。
極めて線の細い中に「太さ」を同居させるあの感じは、今のトレンドの真っ只中と言える。



ANIMETAL THE SECOND
転換中にラウドネスの山下氏がステージに現れ、早くも歓声が飛ぶ。

当日のメンバーはなかなか豪華で、ドラムにアンセムの本間氏、上手ギターには聖飢魔兇離襦璽氏。
ボーカルともう一人のギターの女性陣については特に何も知らないのだが、やはりメタル系のバンドをやっている様だ。


それで一体何がセカンドなのかと思ったが、つまり近年のアニソンをカバーすると言う意味なのね。
まぁ、実際は創成のアクエリオンしか判らなかったけども。

オープニングで、ある意味ショーケース的な時間の短さもあってか3曲で終了。
流石に少ない気が。
もうちょい聴きたい所。



HER NAME IN BLOOD
前回観たのは2011年か。

この手の「正統派メタルコア」では頭1つ抜けた存在だと思っていて、当日も音のバランス、パフォーマンス共に申し分無い仕上がり。
ボーカルもますます野獣感マシマシだし、メンバーの派手さは大きいステージにも映える。
それだけに、トータルな意味で「仕上がって」いて妙に安心する。

このトータルな仕上がりを具現化出来るバンドは思いの外少なく、メンバー間のバランス感覚が優れていないと、音や姿が「何か違う」状態になる場合も多い。

そういう意味では、ソフトで小綺麗なバンドが隆盛のラウドシーン(便宜上この括りで話す)にあって、現代風でありながらメタル本来の粗野さも体現出来る、貴重なバランス感覚を備えた存在と言えるかも知れない。
また、最近の若手はこの辺のさじ加減が器用だなと思う。


ちなみに、バンド名はSTRUNG OUTの曲名が由来との事だが、個人的にも好きなバンドだけに次の日のFAT WRECK 25YEARSも行きたかった…。
いや、行けば良かったと後悔しつつあるのが正直な所。

これは後のオジーでも触れてみます。



OLDCODEX
知るのも観るのも聴くのも初。

音楽的には、やはりスクリーモ以降の世代を象徴する方向性。
個人的に勝手な印象で言えば、Coldrainやワンオク辺りと同じカテゴリーのキャラクターに感じる。

いわゆるキレイ目と言える佇まいであるが、そういう意味でも、まさに「今の子達がやっているんだ」と言う事を先鋭化させて象徴化させたバンドとも表現出来そう。


その中でやたら目を引くのが、ボーカルも自ら特殊な体制だと言っていた通り、メンバーに絵描きがいる事。

最初は演奏中にドローイングしているだけかと思いきや、要所でスクリームしたりと中々忙しい。

インスピレーションなのか事前の構想があるのかは解らないが、ステージの左右に設置されたキャンバスか板かに、筆やスプレーで即興的に描いていく。
そうして仕上がったオジーの似顔絵?はまさにアーティスティクな仕上がり。
芸大上がりだろうか。

下世話だが、あれをTシャツにしても売れそうなレベルのクオリティだった。


更にどうでも良い話だが、観ている間中、以前にスピリッツで連載していた山田令司の「アリエネ」と言う芸大漫画を思い出していた。

何か似てる気がするんだよね。
このバンドの方向性と。



Fear,and Loathing in Las Vegas
第二期アニメ版のカイジで、オープニング曲として使われていた事で知って以来、気になっていたバンドの1つ。
今回初めて観る事に。


YOUTUBEで幾つか視聴した中で抱いた感想は、「メタルコアも来る所まで来たな」と。

キーボードや電子音を織り混ぜるバンドは数あれど、ここまで徹底的にぶっ飛んでると清々しい迄に気持ちが良い。
最早、半分レイヴパーティー
客席にもそういった「ノリ」にさせようと言う部分が強く出ていて、パフォーマンスも徹底している。


Warped Tourで観たアトランタのAttilaでも同じ感想を抱いたのだが、「現代っ子が何でもアリを表現するとこうなる」、と言う象徴的な現象の1つ。
オリラジ藤森の様に、チャラさも極めれば立派な芸なのです。


ただ、今回のライブに関して言えば、その良さが発揮出来ていなかった印象。

特にギターの音が引っ込み過ぎてまともに聞き取れない上に、キーボードの音ともミックスの状態が悪く、終始モワモワとした響きになってしまっていた。

これは幕張自体の音響や、聴く側の立ち位置の問題もあるんだろうが、元の曲が良いだけに勿体無い。
結構あのギターリフ展開が好きなので、もっときっちり聴きたかった所。

あと、カイジのOp(Chase the light)を何故やらなかったのか。
一番聴きたかったのだが…。

サウンドチェック時にフツーに演奏してたもんだから、てっきり本番でもやるかと思った。
客席もそれで期待値が上がっている様に見えただけにちと残念。

この次の機会に聴けたらいいなー。



A Day To Remember
予習も無く、何となくメンバーのルックスからして勝手にParkway Driveみたいなモノを想像していたけど、これが中々ソフトな半分メロコア的な内容。

最近は彼らの様なハードコア、メタルコアとポップパンクの「絶妙な中間」を行くバンドも多く、例えるならば、Set Your Goalsに近い印象。
どちらかと言えばPump up the volume FesやBlood Axe Festivalあたりに出る方がしっくり来るバンドだ。


その為かファン層もハードコアシーン寄りの人々が多く、モッシュパートでは狙ってましたと言わんばかりにピットがチラホラ作られる。
勢いで私も混ざる。

若手であるだけにパフォーマンスは動きに富んでいて、ハードコア譲りの「エネルギー量」と現代っ子の持つ「ソフトさ」が高バランスで配合されている。
そういえば最近のハードコア界隈は、ガラッとこんなキャラクターの人々に入れ替わったなぁ。
みんなスマートで優しいと言うか。


ただ、全体的な曲の構成がポップパンク寄りなせいか、個人的にややパンチに欠けるのが正直な所。
そのせいか若干、ピットも落ち着いたりと中弛み感が否めなかった。

本国では相当人気がある様だし、日本でも一定のファンを獲得している事が伺えたが、今回に関して言えば出演する場所に問題があった様な気もする。
これが然るべき場であれば、また盛り上りも印象も変わっていたに違いない。


最後に、ギターを下手から上手側に向けて「テンプラ」にぶん投げて、スタッフがキャッチャーフライみたいに受け止めてたけど、アレ練習してるんだろか。

細かい芸が派手。
その辺はソフトと言えど、この運動量がアメリカのバンドらしい部分である。



9mm Parabellum Bullet
何年か前に、PUNKSPRINGで観た記憶が。
今回は外で飯を食っている間に終わっていました…。



Black Label Society
何だかんだ観るのは初。
ジーの右腕がオジーバンドと共にソロバンドとしても出演する場面など、日本で観られる機会はそう無いだろう。


実の所、マサ伊藤のラジオやテレビ以外ではまともに聴いた事が無いのだが、まさにギターヒーローらしくザックのザックによるザックの為のバンド感が満載。
随所にギターソロのパートを設け、徹底的に「俺様のプレイ」を見せつける。
余計な事も一切喋らず弾きまくる様は、職人芸そのもの。
あるいは頑固一徹、昔気質なロックスター像とも捉えられる。

そして終わるやゴリラが如くドラミングをかます
見た目もヴァイキングメタルと見紛う野獣ルックだけに、妙な説得力がある。


ただ、やはり当日の音響が良くなく、全体の輪郭がぼやけ気味だったのが悔やまれる。
他の出演者も同じ症状に見舞われていたが、何が悪いんだろ。

そもそも幕張自体、音響の評判が悪く言われがちなんだけど、個人的には言われる程酷かった記憶が無い。

それだけに、当日の音響だけはどうしても納得がいかない部分も多かったのである。



人間椅子
随分昔から活動している事は知ってはいたが、やはり「りんごの泪」しかまともに聴いた事は無い。
でも、一度観てみたかったバンドの一つでもある。

一見イロモノ的な存在感ではあるが、音楽的にはサバス的なドゥームテイストが強いし、更に前回も出演しているとの事なので、今回のメンツの中にもあまり違和感を感じない。


今回、ちゃんと観て思うのは、実際はかなり「幅」のある曲が多いんだなと。

メタルを基本に、プログレが顔を出したりモーターヘッドの様なパンク色の強い曲もありで、表情が次々変化し雑食性が強い。
メンバーのルックスもバラバラな辺りに、そのバックボーンが覗いて見える様で面白い。
何だか本当に漫画から出てきたみたいだ。

更にオカルト色や物語性が加わる事でまた濃度が増す。
確かMCでも、H・P・ラヴクラフトの作品を題材にした曲について触れていたし、この物語性と言うのもかなり重要である事が伺える。


本人達が語っている通り、「ハードロック」と呼ばれる音楽を「日本人」(の更にキワドイ人達)と言うフィルターに通して再構築させたらこうなる。と言う最たるバンドであり、まさに「日本人」でしか表現し得ない世界観と構成だ。

そう考えると、人間椅子がアリなら聖飢魔兇盒敍偰女帯もオズフェス的にアリじゃないかと思えてくる。
今回の出演者とも相関関係にある訳だからね。


ついでに、ステージ上でのメンバー同士の絡みが筋少そっくり。
人間椅子筋少との合同バンドも納得。



Hatebreed
今回の最大の目的。

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思い返せば、初めて観たのが2002年のBEAST FEASTでの初来日。

当時、既に日本でも人気を確立していた分、いい加減来るだの来ないだので様々な憶測が飛び交っていたが、このBEAST FEAST以降、頻度こそ高くはないがちょこちょこ来日してくれる様になった。

ジェイミー本人も語っていた様に、前回の来日から随分間が空いていたので待ち望んだ人も多い事だろう。
また、個人的にもLOUD PARK09以来である。


なのだが、序盤の曲が分からずいきなり置いて行かれる。
そう、私の中でヘイトブリードはThe rise of brutalityで時間が止まっているのであります。

と言うより、どのバンドに限らずある時期から新譜をフォローしなくなったなぁ。
やたら色々と手を付けていたら、キリが無くなって来たのもあるし。


しかしながら、相変わらず演奏における安定感は抜群。
そして何より、贔屓目だとしても当日中ホントの意味で「ライブ感」を出していたのは、はっきり言って間違いなく彼らだった。

それは、音楽性、客との距離感、ライブ展開を含め全てスタイルが確立されている事が理由として挙げられる。

尤も、元々の曲自体がシンプルではあるし、これまでに桁違いの本数のライブをこなしていたキャリアがあるだけに、それは当たり前の話。
本質的な意味で、アンダーグラウンドから叩き上げてきた本物の実力を持つバンドなのである。


そして、当然の如く最前側にはモッシャーが集まり、最早ピットはグチャグチャカオス状態。
僕も久々にモッシュに混ざり、腕やら足やら知らぬ間にアザが。

こんな時こそ、「全身でライブを楽しんだんだ」と実感する部分だったりする。
友人の言葉を借りるとしたら、「ケガする位が面白い」と言った所か。

いや、ケガしたかないけどね。
それ位ハシャいだ、と言う意味で。


中盤からはオールド曲を中心としたセットで、亡くなったLouへとLast breath、あとCRYSTAL LAKEに捧げるとSmash your enemies(だったと思う。記憶曖昧)を演奏していたが、前日にカバーでもしたのだろうか?
ジェイミー・ジャス太氏も「有り難う!来てくれて感謝してるよ!」と、随分ご機嫌そうで何より。


しかし、あえて不満を挙げるとすれば、Provenをやらなかった事か。
あれ、最もやるべき曲の1つだと思うんだが。
This is nowも無かったし。
はやり例えるなら、SLAYERがWar ensembleやらなかったらこうなる的な感じ。

ジェイミーはやけに「ダイ・ハード」と言う台詞を使っていたが、どうせなら徹底的にジョン・マクレーン警部補なあばれる君セットで通して欲しかった所。
いや、久々に観れたのにゼータクこき過ぎか。

まぁ、観て踊って歌っての三拍子を楽しめただけで、来てよかったのは間違いない。


やはり大型フェスと言う括りで見た場合、こういう「全身」で楽しめるタイプのバンドが幾つかある方が、メリハリが効いてて良い。
ただ立って観てるだけだと飽きるし、折角沢山出るのにあまり変化が無いのも面白くないですからね。


フェスやライブでは、とにかく「動き」が欲しい訳です。



後編に続く。