CULrides カルライズ

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食べ蒔き番外編 実生の梅

さて、前々回は食べ蒔き、即ち実生による果樹の概要を。
culrides.hatenablog.com


そして前回は実生のアボカドについて、その発芽手順を記しました。
culrides.hatenablog.com


そんな今回は、梅の発芽と苗木に纏わる話を綴って参りましょう。



ただし、今回の梅に関しては、あまり画像を残していなかった為、この記事では当時の記憶に基づいた「話」が中心となります。

また、現状においては開花や結実にまで至っていないので、この点についての評価は不可能。


従って、あくまで発芽から苗までの段階に限定して話を進めて参ります。


では、いざ。


🌑梅の発芽は難しくない🌑

先ず結論から言うと、実生で梅を発芽させる事は「可能」。

その手順自体に難しい点など何も無く、単純にタネを埋めれば生えるものと考えて良いでしょう。
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して今回、当プロジェクトで生えた個体の大半は「果肉そのまま」で、丸ごと土に埋めている。

また埋めた時期としても、初夏に黄色く熟していた果実を発見次第、リアルタイムで埋めただけ。
いわば「ポン埋め」した訳だが、それで何をせずとも翌年の春には一斉に発芽。


世評では、「果肉を剥いてタネを取り出し、よく洗ってから来春まで冷蔵庫で保存する」との手法が推奨されているが、今回の話に限って言えば無視しても全く問題無かったのが事実である。

要するに、果実丸ごと埋めっぱなしの放置プレイでも、約一年経ってから自動的に生えて来たのだ。



個人的な感想としては、埋めた当初は世評による先入観から本当に生えて来るのか懐疑的であったし、確かに一年間は「何も起きなかった」ので半ば忘れかけていた部分がある。

それが翌年、本当に一斉に発芽したものだから、まさかの展開。
しかも雑草むしりの時に偶然、あちこちから生えているのに気付いて念のためポットに移し替えたほど。

発芽初期の画像が無い理由は、もともとジョーク半分で試したのと、発芽したものが本当に梅なのか確信が持てなかったからなのです。


この事から、諦めずに「果報は寝て待て」方式でも、見守りを継続するのが重要なのだなと思った次第であります。



して、これらが上記の方法で発芽した苗木の一部である。
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いまいち判別し難い画像になってしまったが、これらの苗木は昨年度の初夏に埋めてから、今年の春になり一斉に発芽したもの。
更に、上記以外にも合計すれば十数個の発芽を確認している。


その成長スピードは思いのほか早く、現状までの背丈は最大で60cmほど。
平均すれば、大体40cm前後のサイズになっている。

つまり、発芽から約半年で「苗木」になるべく急成長を遂げていたのだ。



では、もう少し詳しく見ていこう。


画像右下の白いポットは、当プロジェクト内で最大寸の個体。
他の株より頭二つ以上飛び抜けて伸びているのが解るかと思います。
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これは発芽当初から成長率が高く、ポットに植え替えてから地面に触れる形で置いていた所、気付いたら地中深く根を張ってしまっていた。
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ご覧の様に、たった数ヵ月の間に結構な長さまで伸びている事が判る。

ここまで来ると、ポットから抜き出すのも一苦労となるので、出来れば早めの植え替えが吉と言えましょう。



こちらは、植え替えの際に誤って先端をポキッと折ってしまい、図らずも摘芯した形となって幹が二又に分かれた個体。
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先端を折ってからは早い段階で回復を遂げており、根もしっかり張っているしで状態自体は悪くない。
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更に、その先端部を挿し木した個体も存在している。
画像では虫食い状態だが、一応ちゃんと根は回復していて、ポット内に張られた形となっていた。
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さて、梅の発芽手順については、この程度のボリュームで済んでしまう程度。
それだけ簡単だった事が伝わるのでは無いかと思います。


しかし、だからと言って丸っきり無事に生育する訳では無く、発芽させる為にも「小さなコツ」が存在しますし、幾つか問題点が発生した事例も御座います。


従って、ここからは注意点についても記して行きましょう。


🌑タネは「地植え」がベター🌑

先ずお断りしておきたい点として、今回の記事で紹介している梅は全て「地植え」によって発芽した個体である事。

むしろ、地植えじゃないと「まともに発芽しないし育たない確率が高い」とさえ言って良いかも知れません。


前回のアボカドに倣うと、地植えでなければ「生命力のスイッチ」が入り難い様子であり、それが梅では顕著に顕れた形となっていました。

従って今回の画像にある個体は全て、地植えで発芽したものから順次ポットへと移し替えた後の画となっている。



更に言うと、実はポットに埋めて試した個体も存在するのだけど、それらは確かに一年後に発芽したものの、何故か殆ど成長せず、いつの間にか枯れて無くなっていた。

その一方、今回の「地植え個体」は生存率が高く、また成長率も良好な状況である。

この事から、ポットか地植えかにするかで、何らか植物やタネに与える力が大きく変わり、その後の成長をも左右している可能性があるのだ。


この要因について考察するに、恐らくポットでは微生物の出す酵素や土壌の養分などが決定的に不足し、それに連動する形で生命力がスポイルされてしまう為だと考えられる。


無論、これは過去に何度も同じ話を繰り広げているのだけど、もう一つ付随して重要な要素も判明している。



それは、「ポットでも発芽する」植物と、「ポットでは発芽し難い」植物が存在すると言う事。


言い換えれば、ポットでも生育を維持出来る品種と、ポットでは維持し難い品種が存在するらしい。


と言う意味でもあります。



その理由として、前回のアボカドは「ポット(プランター)でも生える」植物でしたが、結果的に「ポットでは地植えより生育が劣る」との検証記録を得ていたからでもある。

それを踏まえて今回の梅に関して言えば、「ポットでは生えない事もない」植物となり、そして「ポットよりは地植えの方が遥かに生命力が高い」との結論が導かれる事となります。



上記の現象を鑑みると、いわゆる世評における「まともに生えて来ない」とされる言説の根本には、実際のところ「タネを蒔いた場所の環境が合っていなかったから」と言う状況が浮かび上がって来る。

つまり、あえて言うならば「埋めた場所」や「育てる場所」を間違えていたが為に、「ちゃんと生育しない」と言う誤解に繋がっているパターンが多く存在するものと考えられる訳です。



もっとも、食べ蒔きで「ちゃんと育てる」人などレアケースである事を思えば、これまで正確に検証されて来なかったのも無理からぬ話ではあります。

いずれにせよ、今回の梅に関して言えば「地植え」の方に分があり、そして「環境さえ合っていれば普通に生える」と言うのが当プロジェクトでの結論となります。


🌑ちゃんと生育して実るかは別問題🌑

ただし、上記の方法で生えたとしても、ある重要な課題が残されてしまいます。


即ち、そこから生育を続け、そして果実が実るかについては全くの未知数である事。


言ってしまえば、「結果的に実らない」可能性についても念頭に置かねばならないのです。



実際、当プロジェクトの作物を例にすれば、いわゆる「元々の品種」と比べて果実が矮小化したり、あるいは上手く結実しないと言った現象が幾つも確認されている。

となれば同じ植物である以上、梅などの果樹にも全く同様の現象が当てはまる事になり、先々において結果が「どちらに出るか」は、殆どギャンブル状態ともなってしまいます。


また更に、実生で育てたと思われる果樹を観察した時に、そこで実った果実がやけに矮小化している例が多い点からしても、食べられる様なクオリティを実現出来るかどうかは、かなり難しい事が解ります。

その意味では、世評における「まともに結実しない」との言説は正しく、そして高確率で当てはまるものと言えましょう。



この他の問題点としては、そもそも「実生では貧弱な株」となる傾向が強く出てしまう事。


即ち、根本的な生命力が足りず、その成長率が低かったり、あるいは病害虫に弱かったりと言った性質が、ことのほか強く出てしまう場合も多いのです。
当然ながら、それは先々で様々なトラブルの要因となってしまうであろう事も意味します。


正直な話をすると、冒頭の話では「十数個の発芽に成功した」と述べてはいるが、現状で生育を続けているのは僅か数個ほどと、発芽当初から激減している。
そう、高確率で発芽はしたものの、それらの大部分が既に枯れているか、株としては機能しなくなっているのです。



現状までに当プロジェクトで発生した事例としては、以下の苗が該当する。


ご覧の様に、何故か葉が全て落ちてしまっている。
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これらは全て、今回の記事にある梅と同時期に発芽し、そして同じ環境で生育していたものなのだが、この落葉している方は割りと早い段階から、概ね盛夏を過ぎる頃から落葉が本格化し、現在の姿に至っている。

つまり、「何をせずとも生育していた株」と、方や「何もしていないのに落葉してしまった株」とで、大きく個体差が出ているのだ。



ただし、いくら枯れてしまったとしても、それで完全に生命活動を停止していると断定される訳ではありません。

その不調が単なる体力差による違いが顕れただけなのか、あるいは今の環境が合っていないだけなのか、それ次第で対処法も変わりますし、色々と改善の余地もあるはずです。
何なら、しれっと次の春には復活する可能性すら有り得るでしょう。

なので、いくら表向き枯れていたとしても「まだ生きている」確率は高いので、諦めず世話を継続してみる事をオススメしておきます。



しかしながら、仮に現状で生育していたとしても、枯れやすいと言う時点で生命力が低いであろう事には変わりません。
今後の状況次第では、同様の症状が出るリスクが残ってしまいます。

この点においても、「まともに育たない」との世評を裏付けるものとなり、やはり実生では「生育」と「結実」との両立が如何に難しいかを実感する所。

それを解決する意味で、市場では「挿し木」や「接ぎ木」によるクローン栽培が主流とならざるを得ない訳です。


従って、この食べ蒔きにおける梅、いや果樹の全般においては「生えたらオッケー、食べられればラッキー」くらいの軽いノリで行うのが吉と言えなくもないのが実情だったりします。



とまぁ、ここまでが当プロジェクトでの事例を基にした所見となります。


個人的には、ちゃんと生育するか実るかは別として、とりあえず幾つか試行した中から、いずれ「イケてるヤツ」が現れるものと考えている。

それは当プロジェクトにおける作物を例にすれば、確かに収穫まで実現した個体が存在した点からしても、有り得ない話ではありません。



とにもかくにも、先ずはタネを埋めてみましょう。

何にしたって、やってみれば新たな事実が解る事も多いですからね。


そうお伝えしたかったので御座います。



では、また、CUL。