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オクトパす② ロストエギのリメイク

前回に引き続き、「オクトパす」ことタコ釣りに纏わる話題。

今回は表題の通り、「ロストエギのリメイク」について触れて参ろうと思います。

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さて、昨年末に、とあるスポットでタコ釣りのテストをしていた時の事。

その岸壁際を探っていると、ズッシリとした重量感と共にグチャグチャにラインが絡んだ、ズタボロのロストエギをサルベージ。

一瞬、タコが掛かったかとヌカ喜びしたが、上がって来たのがゴミだった時の落胆は、まさにエギング、そしてタコ釣り「あるある」である。


と、ここまでは単に海底のゴミを引き揚げただけの話。
この時のエギも、まともに使えない以上、本来なら本当のゴミとして処分すべき所であろうと思います。


しかし、ここに来てある直感が働く。
それは。


「海底で生命感を演出するなら、ロストエギでも良いのではないか?」


と言う事。


そう、タコがジェット天秤に抱きついて来る以上、いくらロストされてボロボロのエギでも「動かす」事は可能なハズ。
しかも、既にゴミ同然な訳で、それがタダで手に入るとなれば、使用中のプレッシャーも幾らか軽くなる。

つまり、工夫次第でまた使える様にすれば良いのだ。


そうと決まれば、後は試すのみ。
早速、グチャグチャの糸はゴミ袋に捨て、エギ本体を持ち帰ったのでありました。


して、下の画像が例のエギ。

イメージ 1


画像の時点では既にクリーニングを施してあるので、さほど汚れは残っていない。

しかし、引き揚げた当時は全体ヘドロまみれで臭く、小さなフジツボも付着しているなど酷いダメージ具合いであった。

そこで、カビハイター等の塩素系漂白剤を吹き掛け、強制的にクリーニング。
その水溶液に数時間ほど漬け込んだ後、石鹸水などでボディとフックにブラッシングを施し清掃する事で大分キレイに。

ここまで来れば、ベースとして申し分なしである。


クリーニングして初めて気付いたが、オモリのロゴを見るとヨーヅリと記載されている。

イメージ 2


全体的に少し旧い造形なので、恐らく元々は「アオリーQ大分型布巻」かと思われる。

いずれにせよ、ラインアイのサルカンは千切れており、このままでは糸を結べないし、スナップも使えない。


当然ながら、カンナの錆は進行しており、既に数本折れている歯抜け箇所が見られ、他にグラついた針もある。

イメージ 3


やはり、現状ではフッキングに問題が出そうだ。


そんな満身創痍のロストエギ。

途中経過は一気にハショリまして、手持ちの資材を駆使してリメイク&フルカスタム。


暫くの後に再生した姿がコチラ。


イメージ 4


これ、何てチンドン屋

流石に「やりすぎ感」が無くもないですが、各部について解説してみましょうか。


先ずカンナは、ルアー用のダブルフックで補強。
歯抜けになった箇所を埋める形で装着してみた。

イメージ 5


フックのサイズ的には、カンナの大きさに合わせる形で小さな#10あたりを使用。
根掛かり防止と浮力の確保を意識して、あえて小さい針を選択。

そのフックのラインアイに1.5号のPEを結び、カンナの軸に巻き付けてあります。


更にフッキングパワーをプラスする意味で、背中にもダブルフックを装着。

イメージ 6


こちらのサイズは#2と大きめ。
これにより、少し「攻め」の機能も与えてみた。


これらPEラインの巻き付け方は、竿にガイドを取り付ける際の「スレッド巻き付け」を参考にしている。

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巻き付けの際は、「PRノット」や「オルブライトノット」の様にラインを「往復」させると更に強度UP。
勿論、一回一回キッチリ密に巻き付けるほど保持力は倍増します。

やり方は何度か練習する内に、だんだんコツが掴めて来るハズ。


また、このPE巻き付けの前に「カンナカバー」を装着する事で、より安全に作業が出来ますし、ケガのリスクも大幅に減らせます。

イメージ 7


カバーはカンナのサイズに合わせれば問題無いですが、大きめの方が使い勝手が良いでしょう。


一度PEを巻き付け終えたら瞬間接着剤で仮止めし、最後はエポキシ接着剤で固めれば完璧。

ただ、フックがグラつかない位にキッチリ巻き付けが出来ていれば、瞬間接着剤の厚塗りだけでも実用に問題なさそうです。


これら巻き付け用のPEラインは、全て交換後の使い古しなど余りもので対応。
強度としても必要十分で、尚且つ経済的です。

ちなみに、オレンジ色の飾りは「夜光パイプ」を縦にカットしてタコベイト風に加工し、カンナに巻き付けたもの。
これでアピール効果を増強してある。


ただし、これら装飾品とPEラインを巻き付けたり、上から接着剤を塗布しただけでは、装備が重すぎてウェイトバランスが崩れてしまい、結局はエギのリアが沈み過ぎて根掛かりの原因となってしまう。

イメージ 17


なので、カンナのエンド部には、ウキ釣り用の「シモリ玉」をセットし、浮力を強化してある。
これでアピール力と機能性を両立させてみた。


更に余談として、このウェイトバランスに関しては、大型のエギならば浮力に余裕があるが、それに対して小さなエギほどシビアとなり、結果的に横倒しになるほど沈み込んでしまう事例が多く見られた。

特に、リアのカンナ周りを弄ると顕著になるので、エギのサイズに対する装飾品(追加フックも含む)の位置とボリュームには注意が必要。

このバランス崩れを極力防止したい場合、エギのサイズにより「背中」から「頭部」に装飾品を施す方が良いかと思います。
また、ある程度の装飾品を付けたら、お風呂や水槽でバランスをチェックしながら修正するのがオススメ。

このウェイトバランスを「失敗」した話については、また別の記事にて述べます。


もう1つの課題であったラインアイについては、ノーズの近くに「楕円形の溶接リング」をPEラインでグルグルに巻き付けた後、大型のスナップスイベルを装着させる事で対応。

イメージ 8


元々の位置からはズレているが、基本的にボトムをズル引きしたりリフト&フォールさせるだけなので、大したデメリットは無いはず。


しかしながら、何だか顔が昔のレスラーっぽいのは気のせいか。
何となく故ビッグバン・ベイダーを彷彿とさせなくもなく。


この溶接リング巻き付けには、船用PEラインの6号を使用。

イメージ 9


極太の糸を使用し、千切れにくさを優先している。
コチラも、瞬間接着剤で仮止めの後、エポキシ接着剤で固める事で強度が確保出来ます。


そして、個人的に一番拘った部分が、装飾品の配置による「エビ感」の再現。

イメージ 10


上から見ると、かなりイイ線行ってるのでは無いかと自画自讃。


この目玉は、「パールビーズ」や「夜光ビーズ」をPEラインに通し、巻き付ける事で再現。

イメージ 11


ヒゲは、カットした夜光パイプを瞬間接着剤で装着し、更にPEラインを上から巻き付け固定しています。


更に、胸ビレが欠損していたので、代わりに「ホタテシート」を使い、海中でヒラヒラする様な仕組みで装着させている。

イメージ 12



腹の部分にも、夜光パイプをカットした脚を装着。
加えて、「リリアン」でボリュームを与えてみた。

イメージ 13


これでアピール力に不足は無いであろう。


これら装飾品について触れておくと、かつてカレイ釣りにおいて「派手仕掛け」が流行していた頃の余りもの。
そして船用のPEラインは、テーパーラインの代用品として使っていた名残り。

ずいぶん昔にハマッていて、オリジナル仕掛けも作っていた当時の資材が残っていたのです。


ちなみに、こういったビーズ類は釣り具店より、ユザワヤなど手芸用品店で発掘したりするのは、カレイ釣りファンの間では知られた話。

勿論、カレイ以外の釣りでも、仕掛け作りを検討されている方は一度脚を運んでみるとイケてるアイテムが見つかるかも。

一度手作りにハマれば、きっとアレコレ試したくなる事でしょう。


これら装飾品の作り方や取付け方法については、また別記事に致しますのでカミングスーン。


さて、今回のリメイクに併せて、もう1つ作業を進めていたものがコレ。


ロストエギを再生した、「普通のエギ」。

イメージ 14


実はこちらも、今回のロストエギ(ビッグバン・ベイダー仕様)と共にサルベージしたもの。
要するに、同じ日に2つゲットしていたのだ。


これも元々はヘドロまみれであったのを、漂白剤とブラッシングでクリーニング。
ダメージ自体は少なかったので、胸ビレの再生と、布の破れた箇所を補修しただけ。

イメージ 15



その主なリメイク手順としては。

1、フェザーは根元だけ瞬間接着剤で仮止めし、その上から夜光テープ等を小さく貼って固定。

2、この隙間から浸水しない様に、更に軽く瞬間接着剤を染み込ませておく。

3、そして、細いPEラインを一重だけ巻き付けた後、そのPEの表面を瞬間接着剤(又はエポキシ)で塗り固めて完了。

4、布は、アワビシート等で塞いだだけの簡単補修のみ。


非常に単純だが、これだけ固めておけば強くシャクっても剥がれないでしょうし、殆ど装飾品が無いのでアクションもスポイルしないはず。


ちなみに、胸ビレの再生には、やはりカレイ釣りの余りものだったフェザーを使用。

イメージ 16


以前にも、このフェザーで何度かエギを補修してるんだけど、この様な形で役に立つんですから、捨てずに保管しといて良かったなぁと。

カレイ釣りをしなくなってから全く使わなくなってたけど、意外や使う日が来るもんです。
皆さんも、長い間使っていない資材を整理してみると、思わぬ活用法を閃くかも知れないですよ。


こんな具合いで、サルベージしたロストエギのリメイク作業は完了。

後は、いずれ実践投入する日を待つのみであります。


🌑ロストの「先」って🌑

さて、前回で勿体つけたほどの完成度であるかは別として、ひとまず。


「ボロボロのロストエギでも、工夫次第で別の釣りに使える」


とは言える仕上がりになったかなと。


例えば今回のリメイクの様に、海中から引き揚げたエギや仕掛けを再生すれば、それはまた資源の再利用となるに違いありません。
特に、海中清掃を行っている地域においては、相当数のロストエギが回収されていると聞きます。

恐らく、その中にはキレイで使えるモノも多く含まれているでしょうし、また再利用される率も高いはずです。


一方、今回の様にダメージが大きいモノはそのまま使えず、再生には手間が必要となる為、結果的に廃棄される事が殆どであろうとも推察されます。

無論、アイが無くカンナも錆びているとなれば、そう判断されても致し方なしではありましょう。


しかし、視点を変えればボディなどの「インフラ」は残されている訳で、それを活かせば新たな価値を与える事も可能となります。

それはエギならずとも、プラグやメタルジグ等のルアー、投げ釣り仕掛け、ウキ釣り仕掛けなどなど、「本当は使えるモノ」がゴマンと海中に眠っているに違いありません。


とどのつまり、これからはロストエギなど海中ゴミと化した仕掛けも、大事な資源として再利用するムーブメントが来れば理想的なのでは無いか。

それこそ、回収したエギや仕掛けを「ポイント制」などにして、より多く回収した人に特典が入るシステムなどを構築すれば、ゴミを減らす効率だって上がるかも知れません。

それら回収した仕掛けは、自作出来る方に譲るのが基本となるでしょうが、有志の手でリメイク販売してもアリではなかろうかと思う。

とにかく、再利用出来れば何だって良いのです。


普段はロストする一方の釣り人サイドとして、ロストした仕掛けの行く方について想いを巡らすのも一興ではないかと。

一度は捨て損なったアイテムが、工夫次第で使えるアイテムに生まれ変わった姿を見れば、きっと自らも試したくなるはず。


前回において、「可能な限りプラマイを相殺出来そうなアイデアを閃いた」とは、まさにこの事だったのであります。


うーん、拾ったロストエギを再利用したってだけなのに、何てエラソーな話なのだ。

でも、あまり誰も言って無いみたいなので、あえてこんな記事にしてみたりして。


次回は補足と言うか、もう少し仕掛け作りに纏わる話が続きます。


では、また、CUL。