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国有林伐採の解決策 第3回「土地の植生に合わせた苗を皆で育てる」

これまで経験と独自の観点から、国有林伐採の解決策となりそうなアイデアを綴るシリーズ、第3回。
culrides.hatenablog.com

今回は「苗の育生フロー」について、具体的に記して参りましょう。


🌑土地の植生に合わせた苗を皆で育てる🌑

さて、これら苗を用意するにあたり先ず優先すべきは、「植える土地の植生に合わせた苗」を皆で育てる事。


無論、これは既に実践されている手法となっており、殊更に新しい概念では無い。

それでも端的に説明しておくならば、「その土地環境に適応した種」を植えた方が植樹先の気候や土壌に馴染みやすいだけでなく、他の樹木とも無駄な競合関係になりにくく生育に有利となるからだ。
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では何故、改めて手順を述べるかと言うと、この苗の育成や植林はいまだ限定された地域であったり、また一種の「イベント」として、いわば「環境意識の高い限られた人々」の間でのみ行われている印象が否めないからである。

それはこの記事で言う小学生が関わっていたとしても、例えば「自然災害の被災地域」など極めてピンポイントで、かつ短期的に行われるのが通常。

しかし、これでは継続性が薄いだけでなく、関わる子供達からしても「その時だけやってる」みたいな感覚しか残らない場合も多い事だろう。
言い換えれば、「大人に頼まれたし、森が再生するって言うし、自分が担当になってるから」と、半ば義務感で「やらされてる」となる構図となってしまう部分もある。

つまり、「これは自分で育てた、植えた、再生した」と言う主体的な感覚が薄すぎて、ほんのごく一部の関係した子にしか重要性が伝わらないのだ。


この一時的なイベントをより恒常的に、かつ継続的に「自分たちのもの」として捉えてもらうにはどうすれば良いか。

前回において「小学校の遠足」について触れましたが、実はここに大きなヒントがある様に考えられる。


例えば、ある地域(学区)の中で「遠足する予定先などで伐採の計画がある」なら、その土地特有の植物のタネを採集するプランを組む事が挙げられる。
あるいは、山に入るのが安全上難しければ、自治体の人に「記念品」の様な形で贈呈して貰うケースも考えられる。

仮に自分達で拾うとしても、子供はドングリ拾いなど生物などに対する興味が深く、「主体的に採集する行為」を楽しんでくれるシーンが多いので、実践のハードルは高くないはず。
むしろ、好きなだけ拾わせてあげて良いくらいだ。

そうすれば、タネが大量に確保される事となり、連鎖的に苗の数も多くなる。
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そして、学校でタネを植える訳だが、やる事と言えば単純に「植えるだけ」となるので、授業にしても手間はそう多くはないはずだ。

強いて言えば、土の配合を指示するとか、育て方と期間とか、なぜ植林が必要かなど必要最低限だけ教えてあげるに留めておき、先ずは「植えると言う体感的な動き」を優先した方が飲み込みが早いだろう。

最も重要なのは「自分で育てる行為」そのものにあるので、子供なら喜んで次々に植えまくるに違いない。
むしろ、発芽しなかったり枯れる場合に備えて、好きなだけ植えさせて良いくらいだ。


このプロジェクトは、いわゆる「アサガオ観察の長期バージョン」。

それ同様にネームプレートを掲げ、「品種の名前」や「採集した地域」なども記載すれば、立派に「自分のもの」としての意識が芽生える事だろう。


やがて小六になるまで成長したら、再び遠足や授業の一環として植林を組み込んだり、あるいは植林先の自治体などに引き渡すなどすれば一連は完結となる。
かくして、苗が成長してさえいれば、一先ず伐採後の植林にもタイムラグは少なくなるはずだ。

問題は苗が「伐採のタイミング」に合うかどうかなのだが、少なくとも全く用意しないよりマシには違いない。

もしリアルタイムで使われなかったとしても、その更に近隣の地域などに譲渡先があれば融通しても良いだろうし、そこが採集した地域に近く生息域に大きな違いが無ければ、植生を荒らすリスクも低くなる。


逆に、都心部などの学校では、そもそも山林が遠く、伐採が行われる様な地方や山深いエリアまで遠出するのが困難な場合も多いはず。
ましてや、体力や判断力に乏しい子供では、転落や遭難などのリスクも増大してしまうので、そういった事故も防ぐ必要がある。

故に、「どこまでの範囲で動くべきか」などの課題が多く、あまり遠方の僻地は現実的と言えないだろう。

その対案としては、伐採計画がなされている地域にある自治体や地元の造林業者などからタネを「纏めて仕入れる」形をとり、場合によっては提携するなどで「相互に種と苗のヤリトリ」を行える様な仕組みが考えられる。

例えば、「○○小学校は××地方の自治体と提携」し、その土地の植物を専任で育てるとか。
あるいは、複数の学区を纏める形で、1つの広い地域を担当するとか。
などなど、「育てる場」と「植える場」での連携には様々なパターンが考えられる。


ただし上の場合、タネの採集には自治体なり業者なりの協力を仰ぐ事になるのだが、これに関しては仕事の合間に拾ってキープして貰うなど、片手間で対応する位しか今は思い付かない。

これを業務の一環にしたとて、それで時間的な負担が増えてしまっては意味が無いので、何かしら作業の前後や作業中に集めたタネを纏めておき、その年の最期あたりで一挙に発送する形が考えられる。


その他の問題点としては、保存中に病害虫の被害が発生してしまうリスクが残る事。
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これは例えば、ゾウムシの様にタネの中に産卵するだけの昆虫ならば、基本的に幼虫は同じ実に留まり成長するので、他のタネに移動する事は殆ど無いと思われる。
しかし、カビなどの細菌は早いスピードで蔓延してしまう為、保管状況には注意が必要になる。

従って、タネに虫の穴が開いていなかなどの状態を確認すると同時に、湿度を抑えながら出来る限り鮮度の良い内に発送する作業が求められるだろう。


これらのフローをクリアすれば、都心部でも地方特産種などの苗が育成可能となり、子供達にも育てる楽しさを体感させられるはずだ。

いずれの形を取るにせよ、皆で継続的に育てられる環境作りを完成させる事から、初めて苗木の量産がスタートする訳です。


そんな次回は、苗の管理方法について触れて行きましょう。



では、また、CUL。