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メリケン道中記 サウスセントラルを歩く 前編

※最初にお断りしておきますが、くれぐれもよゐこはマネをしない様にして下さい。
身の安全は保証出来ませんので。




ガーデナに行った時の事。


市内を歩いていた時に、ふとある事に気付く。

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システムマップより。
ガーデナは地図上、左下のエリア。


アメリカの道路は基本的に碁盤目状で、特にダウンタウン市内では名前の無い通りに対し、1st.Street、3rd.Streetなどと番号だけ振られている場合が多く、京都市内や札幌市内の道路と良く似ている。

この数字だけの道路間隔は狭く、ダウンタウンの1~10番であれば徒歩で約15分程の距離感。

また、固有名詞が付けられた道路も、真っ直ぐダウンタウンから郊外を上下左右に貫いている場合が多く、それらの道さえ辿れば東西南北に迷う事なく目的地へ到着出来る。
都内であれば、「環八通り」や「第二京浜」の感覚に近いだろうか。

今回であれば、インターステート110番(東名高速みたいな大陸横断道路)沿いの「フィゲロア通り」がダウンタウンからロングビーチまで続いているので、この道で往復が可能である。

そして、市内入口に設置されているCity of Gardenerの看板(ようこそ○○市へ的なヤツ)が建てられている辺りで、小道に150番台と示されていた。
つまり、市内からかなり郊外まで続いている事になる。
例えるなら、京都市から琵琶湖のほとり草津まで、札幌なら石狩市まで小道の番号が延びている様な感覚か。

しかし、番号の間隔自体は狭い訳で、もしやこれならばと思い立ち、このままダウンタウンまで遡ろうと斉藤一義気分で歩いて帰る事にしてみたのだ。



さて、このガーデナ一帯は治安が悪い事で知られ、主に黒人の居住者が大半を占める地区となる。

市内の幹線道路沿いは比較的交通量もあり、歩く分には大きな支障は無さそうだが、まず間違っても観光客らしき人間を見かける事は無い。

近隣一帯には日本人を含めたアジア系もそれなりに居住しているのだが、そもそも絶対的少数派なので、やはり遭遇する事は希だ。

そして、人種に限らず「通行人」自体が少ない為、もしいたとしても、基本的に近隣住民以外に無いと考えられる。

故に、独りポツリと歩く僕は大分浮いている存在と言う事になり、常に周囲の状況に気を配り続ける必要がある。


このフィゲロア通りは、幹線道路からやや外れた位置にあり、一見すると「住宅街の主要道路」と言った風情であるが、ダウンタウンではSkid Row(ドヤ街)に直結する為、いずれにせよ部外者が通るべき道では無い事は確かである。


しかしながら、歩けど歩けどコレという特徴も無い道に、ひたすら殺風景な住宅街が延々と続くばかり。

人通りも全く無いのだが、しかし、迂闊に立ち止まって写メなど撮っている所を住民に見られた場合、要らぬトラブルに巻き込まれる可能性があったので、まともな画像は無い。


映画「カラーズ 天使の消えた街」を見た事のある方であれば容易に想像出来ると思うのだが、あの映画に映る殺伐とした空気そのままの光景が広がっていると思って良いだろう。

ワキ道などは、この様な具合に。
スキをみて撮影してみた。

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しかし、あれはロサンゼルスの暗部をリアルに再現した名作だと思う。
現にこのエリア周辺では、毎年数名の警官が命を落とすと聞く。


そして、通りのあらゆる所に、その様な環境を象徴する「治安の目安」がいくつも確認出来る。

特に治安の悪い場所に建つ商店などのカウンターは大抵、透明なアクリル製らしき板で仕切られており、客と店員が直接触れ合う事が出来ない様になっている。

この某大手バーガーチェーン店のカウンターもその一例。
さりげなく撮影してみた。

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透明な板なので判別しにくいが、画像左端中央に位置する四角い小窓から会話し注文。
この下には浅い引き出しがあり、その中にお金やカードを入れ、店員側へ押し出す。
お釣りやカードの返却がある場合は、逆にこちら側へ押し出される。

そして、店員はカウンター右下の扉の付いた小箱へ商品を入れ、客は扉を開いて商品の受け渡しを行う。

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と言った流れにより、徹底的に接触が出来ない様に作られている。


何故ここまで厳重かを考えるに、僅かでも隙間がある場合、拳銃やガソリン等の可燃物差し込まれる危険性がある為だろう。


また、一番よく言われる目安となるのが、家や建物の窓に鉄格子が打ち付けてある事か。

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加えて、家の周りを槍付きの柵で囲ってあればパーフェクト。

そして、この一帯でこれらの防護柵を設けていない建物は存在しない。

特に厳重な店、特に個人経営している様なコンビニエンスストアになると、店の壁一面を開閉式のフェンスで囲い、入り口だけが開いている状態だったりする。
勿論、閉店後は建物全体を封鎖する為だ。

更に、入り口には防犯カメラのモニターを「入ってきた客に見せる」位置に設置。
わざと映像を見せて、「お前カメラに映ってんよ」と言わんばかりだ。
当然、カウンターは例の板で仕切られている。

ここまでの規模になると、もはや街の空気が危険過ぎて写真を撮ろうという気すら起きず、早めに通過する以外ない。


この、街の教会の十字架に切られた小さな窓ですら、人を信用出来ない様に見える。

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全米有数の犯罪多発地帯は伊達ではない。


そして、もう1つの目安と言えるのが、電線に引っ掛けられたスニーカー。

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※画像は数年前にComptonで撮影したものです。


この意味については諸説あり、

・このブロック周辺に拠点を持つギャングのテリトリーの目印。
・ドラッグの取引場の目印。
・抗争等でその場で亡くなった仲間の靴をぶら下げた、いわゆる墓標。
・単なるイタズラ。

等が理由としてあるのだが、個人的な見解としては、どれも正解であろうと思う。

何故なら、これら靴をぶら下げてある箇所が多い場所ほど治安が悪化する傾向にあるし、また、広い地域に渡って見かける事から、それぞれのエリアやギャングごとに意味付けをしている可能性も考えられるからだ。

ちなみに、これらは今回のガーデナからダウンタウンまでの全域で見られ、近隣を走る電車の車窓からもよく発見する。
むしろ、無い町が無い。


反対に、ハリウッドや治安の安定した場所でも時折見かけるのだが、多くはハイヒールやヌイグルミ等、一目で「イタズラ」と判る物が大半なので、さほど治安との関連性は無い。

こういうのとかね。
ハリウッド近辺にて。

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とまぁ、治安に関しては、また別の機会に記そう。


そんな天使の消えた、世紀末救世主が必要そうな町並みの中。
70番台を通過する辺りのイングルウッドに程近いエリアで、また妙な光景に出くわす。


ひたすら住宅街である事には変わりないが、ある地点を境に黒人のチャンネーやらルーギャーやらが街角にチラホラ現れる様に。

彼女らは一様に若く、ムチムチのピチTにツーケーのクーニーがハミ出したホットパンツを御召しになる等、やたらボディラインと露出を強調したファッションに身を包んでいる。

これは…もしや…と思っていると、僕と同じ通りの向こう側から接近してきた女が、すれ違いざまに一言。



「デートしない?ウッフン」



そう、売春婦なんですねぇ(by池上彰)


やたらシェクシーなので軽くチンピクしそうになったが、こんな勝手も分からない危ない土地で、まして「何を」お持ちでらっしゃるか分からぬ女など相手にする気も無い。

チラッと0.5秒だけ顔を向け、無言でスルー。


根本的に相手にしない。
チキンカツ野郎な僕にはこれが対応力の限界であるが、無視しても特に何も言われなかった。


そして、よく彼女らの動きを観察していると、ある点に気付く。

彼女らはそれぞれ一人づつ各ブロックの交差点の角、あるいはブロック内の歩道をウロウロ往復するばかりで、全くそこから出ようとしないのだ。

恐らく彼女らにも縄張りが決まっており、自分の持ち場から離れて別のブロックに移動して「営業」する事が出来ないのであろう。

どの娘も片手にスマホを持ちながら立っているが、それがプライベートな理由なのか、あるいは「営業」に必要な為なのかまでは知る由もない。後者っぽいけど。


昔、横浜の日ノ出町界隈にも有名な売春街があったが、あちらはそういった「通り」が完成されており、「周辺から独立した異空間」として成り立っていた。
しかし、こちらはあくまで一軒家が並ぶだけの「単なる住宅街」での出来事なので、余計に異常さが増して見える。


日中からあの様に立っていて、客は来るのだろうか。


彼女らは、天使の消えた町に咲くあだ花なのだろうか。



大したオチも無い次回に続く…