CULrides カルライズ

発見と探究そして文化。そんな諸々の話。

メリケン道中記 ダウンタウンの治安

ロサンゼルスと聞いて思い浮かべるのは何であろうか。



ハリウッド、ビバリーヒルズ、サンタモニカやベニスビーチ、ディズニーワールド等の華やかな名所を擁する、世界に名だたる観光地である。



だがその一方、非常に治安が悪い事も広く知られる所であろう。


実際、これらの観光名所も、たった一本道を隔てるだけで表情は一変する。


ある意味では、そんな毀誉褒貶の激しさも、この都市が持つエネルギーの源と言えるかも知れない。


今回は、そんなLAの暗部について体験した、目撃した事について触れてみたい。



ダウンタウン

根本的に、ダウンタウン周辺の治安は最悪な部類である。

勿論、日中から夕刻までの間であれば、オフィス街は多民族国家の大都市らしい賑やかさに蒸せ返っており、大きな問題も無く出歩ける。
特に近年、市が治安対策や街の環境改善を進めている事から、段々と不安要素は払拭されつつもある。



しかし、日没後の夜間にその治安は真逆となる。


特にナイトクラブやレストランのある場所以外、治安的な事情を知る人間であれば、まず夜間のダウンタウンを歩く事は無い。


やはり数年前と比較すれば、大分マシになった印象はあるものの、それでもオフィス街から離れた場所、特に「Pershing Square駅」から南西側は、そもそも夜間に人が通れる道では無い。

もし歩いていたとしても、それはホームレスや行き場の無さげなチンピラが大半であり、まともな人間の居場所では無くなるからだ。



そんな中、LAのダウンタウンで最も悪名高いのが、Skid Rowと呼ばれる地区。


スキッドロウ

直訳すれば「ドヤ街」。


システムマップより。

イメージ 3

スキッド・ロウは地図上、左上周辺のエリア。
ただし区分けに関係無く、実際は画像の左寄りの区域内「全域」が危険と言って差し障り無いでしょう。


この付近一帯は様々な物品の「卸売業者」が集まる町なので、日中は買い物客も多く普通に過ごせたとしても、概ね夕方の17:00までには全て閉店してしまい、あっという間に寂れてしまいます。
そうなると、誰も出歩ける雰囲気では無くなるので、行動する時間帯には注意が必要。

日本でも、横浜の寿町や大阪のあいりん地区等が知られるが、このスキッド・ロウはハッキリ言って比較にならないレベルの危険度であると断言出来る。

横浜の寿町も、十数年前までは日本だと信じられない程の危険な雰囲気に包まれていたが、それすら軽く超越する程の荒廃っぷりであり、間違いなく日中でも無意味に足を踏み入れるべき場所では無い。

また、中心地域の写真を撮ろうにも、どんなイチャモンを付けられるか分かったものではなく、基本的に隠し撮り以外では撮影不能である。
堂々撮れるとしたら、この様に町の入り口までが限界。

イメージ 1


当然の事ながら事件も非常に多く、最早挙げればキリがない惨状であるとだけお伝えしたい。



このエリアの居住者はホームレスが主なのだが、まずその数が尋常では無い。


溢れんばかりの人々が歩道を占拠するが如く、多数のコロニーを形成している。
そして、町の路面や壁は薄黒くコールタールを撒いた様であり、更に糞尿の悪臭が一帯に充満している為、少し歩くだけで服にその臭いがこびり付く程だ。

更に、その人種比率の9割以上が黒人で占められており、現在のファーガソンやメリーランドの暴動に通じる問題も見てとれる。


人々の多さに反比例するが如く生気が失われた、ひたすら救いの無い光景が広がるばかりであり、そこで「まともな人」を見る事は叶わない話であろう。



とりあえず日中であれば、大きな問題に巻き込まれる事はないとしても、常に「見られている」し、「小銭を恵んでくれ」と話かけられる事も非常に多い。


実際、近辺を歩いていた時、こんな事もあった。


交差点で横にいた、車椅子に乗ったホームレスの男性が、信号の向こうを指差して「あっちの仲間の所まで押してくれ!」と頼んで来た。

たった10m程の障害物も無い距離だったので、自分で行けるはずだし、あるいは向こうの仲間を呼べば済む話なのだが、既に会話している手前もあり、とりあえず押してあげる事に。

ちなみにこの場合、要求を断ったり無視したりすると、「何で助けてくんねーんだよ!」と、逆ギレで怒鳴ったり口汚く罵ってきたりする人もいる。
アメリカは建前上、あくまで「ボランティア精神」が求められる部分が大きいのだ。


ひとまず押してやるなり、仲間らしき一団が「イェ~サンキュー兄弟!マジ感謝だぜメーン!」と言いながら握手と肩たたきをしてきたのだが、すかさず「所でなぁ俺たち金無くて腹減ってんだ。だから小銭くれよメーン↑」などと要求してくる。

押すのを助けたはずが、何故かその仲間が小銭をせびる。
いや、むしろ逆じゃないか。逆。


などと言いたくもなる所だが、そんな常識だのモラルだのが通じる場所では無い。

無論、ここで要求に応じてしまうとドツボな為、僕は「無い(無表情)」と即答するのだが、向こうも食い下がっては来るので、努めて「無い」と断固拒否を貫く。


すると現金なモノで、断ると「なん…あぁそう…わかったよじゃあなサンキューメーン↓」と、若干ふてくされ気味の態度に早変わり。

そう、彼ら側からすれば「恵んで貰うのが当たり前」になっているのが現実なのだ。


などと、斯様なメンタリティーの人々が居る点からも、気を抜けばタカられてしまう場所でもある。


またある時は、バスで降りる停留所を間違えて乗り過ごしてしまい、仕方なく歩いて夜9時頃にこの一帯を通りすぎた際。
そこを通過する、わずかな間に遭遇した出来事として。


「ラテン風のチンピラが、十数メートル先から何か文句ありげな言葉と動きで近づいて絡んで来る」

「黒人の女性が擦れ違いざまアゴをシャクリ気味に、ゴチャゴチャ何たらかんたらビッチィーとバカにした台詞を吐いて来る」

「反対側の歩道にあるテントの中から、誰かがこちらにヘーイ゙ッ!!ヘーイ゙ッ!!と大声で叫んで来る」

などの連続コンボを食らう散々な目に遭った事も。


一連は「アジア系がこんな所でナニしてんだパターン」ではないかと考えられるが、本当に数百メートルもない範囲内でこのザマである。

ちなみにこの時。

ある交差点で男が一人ポツンと立っていたのだが、そこへ車がスッと横付けされると男は何やら窓際へ顔を近付けゴニョゴニョとヤリトリ。
恐らく、例のアレをコレしている所だったのだろう。


この様な表現をするのも憚られるが、あの荒廃した景色を言うなれば魔窟。
ここで暮らせるとしたら、もしかすると、それは最早「人」では無いと思わせてしまうかの様な世界が現実に存在している。

それとも、あるいは、あれほどまでに人間性を失わせるほどの何かが、社会構造の中に隠されていると言う事の証明なのかも知れない。



故に、もしLAのダウンタウン近辺に来られる用事がある場合、努めて日中に合わせる事をお勧めします。
仮に現地の勝手を知っていたとしても、極力、徒歩での夜間外出は避けるのが無難。

唯一、ダウンタウンで昼夜問わず治安が「良い」場所があるとすれば、それは日系コミュニティーリトルトーキョー圏内だけだと言えるでしょう。


このリトルトーキョーは、スキッド・ロウの真横に位置しているのだが、ここだけは不思議と「結界の中」にあるかの様に安全で綺麗。
そして、夜中でも普通に歩けるのだ。

同じくLAのトーランスやサンフランシスコなど、他の地域でも日系コミュニティー内は治安が安定している傾向にあるのだが、それを実感するにつけ、冗談抜きで日本人で良かったとしみじみ思うのである。




オマケシリーズ。



夜8時位に、ダウンタウンのグランドパーク近くでひたすら叫び声を上げていた女性(中央)。

イメージ 2


ひたすら「Fuck you!!You're bitch!!You're whore!!」と叫び続けており、パトカーや救急車が集結する騒動に。
青い病衣らしき物を着用していたので、もしかしたら何かしらの患者であったのかも知れない。


そういえば以前にも、ハリウッドの横道でパジャマ姿の女性がひたすら意味不明な絶叫(金切り声)を上げていて、駆けつけたパトカーに大暴れしながらブチ込まれていた事を思い出す。


恐らくドラッグ絡みであろうとは思うが、悲しいかな、これが「珍しい光景では無い」所がロサンゼルスの一面でもあるのです。



にわかに実話ナックルズ臭が漂っていますが、次回はサウスセントラル側の治安について、もう少し触れてみる予定です。