CULrides カルライズ

発見と探究そして文化。そんな諸々の話。

メリケン道中記 リノの菊門

2008年のツーリングにて訪れた、ネバダ州のリノ市内を歩いていた時の事。

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ふと、一軒のタトゥーショップに目が留まる。


その店の入り口に貼られていたフライヤーこそ、ANAL CUNTとANAL BLASTのツアー告知であった。

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開催日を見てみると、ちょうど訪れた日の翌日となっている。

会場も市内のほんの数キロ圏内であったので、こりゃ行くしかあるまいと。

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会場はUndergroundと言う、小さなローカルクラブ。

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看板の写真しか見つからなかった。


キャパは新宿アンチノック位でハコとしては小さく、入り口側の窓辺に、若干のソファとテーブルが置いてあるだけの非常にシンプルな造り。

客席とバーカウンターのあるラウンジスペースは壁で完全に仕切られており、セキュリティにIDを見せないとラウンジ側には通してもらえない仕組みだった。

ラウンジに行こうとして、ドアに控えていたセキュリティにパスポートを見せたら、興味ありげに色々と話かけられるが、何を言われたか全く覚えていない。


ちなみに、この時の客席は閑古鳥の鳴くガラ空きっぷりで、多分、10~20人程しか入っていなかった。

AxCxもAxBxもかなりベテランと言うか、それこそAxCxなんてエクストリームミュージック界では知らぬ者はいない大物みたいな存在だと思ってたけど、多分ローカルでの客入りは普通の事なのだろう。



I DEKAY
近所の兄ちゃん連中が集まったであろう、まさにザ・ローカルバンドの佇まい。
DEKAYはDECAYって訳ですな。
音楽的には、Unearthインスパ系と言った感じ。


TWELVE GAUGE FACELIFT
彼らもローカルらしいんだけど、これが結構イケてた。
デスラッシュ気味なメタルコアに、要所でブレイクやストップ等のリズムチェンジが絡む、勢いのいいサウンド

終了後、片付け最中のギター君に「デモCDとかある?」と聞いたら、「あ~スマン、今日は持って来てないや…」と言われてしまった。
今でも現役らしく、アルバムもリリースしているみたいので、興味ある方はどんぞ。

リノのハードコア、特にニュースクール系と言えばFALLSILENT、そしてxAFBxが思い付くけど、無き今は彼らがレペゼンRenoって所なんでしょうか。


INFERNAEON
始まる前から、どうにもボーカルが僕にと言うか日本人に興味があったらしく
、「お前日本人なのか!俺たち日本に行きたくてさ!ツテないか!?」など色々と話かけられる。
いや、特に何も出来ない人なんで、お役に立てずスマンと言った所。

ライブ自体のクオリティーは高く、本気度の高い内容。
音楽的には、Morbid AngelやVADERあたりのトラディショナルな方向性のデスメタルに、キーボードによるシンフォニックな音を加え、魔術的な妖しさを醸し出す。

以前のSummer Slaughter Tourの件でも触れたけど、当時から現在に至るまで、どちらかと言えばスピード&テク重視型やモッシュ狙いのスラム系が主流なシーンにあって、こういう「雰囲気重視」なデスメタルは新鮮に映る。

モッシュパートやブラストとは違い、物語性や神秘性などの抽象的な要素で曲の構成に「凝る」必要性が出てくるので、結構ハードルの高い方向性だと思っているからだ。

そんな事もありつつ、曲の構成に演奏の安定感も相まって、終始バランスの良いステージングを披露してくれてました。
後で知ったんだけど、この時、実は1stアルバムのリリース記念ツアーでもあったらしい。

結構、魔界臭のする方向性だし、ボーカルもステージング中はグレン・ベントンの如き形相だけど、案外気さくなニーチャンの印象。
終わってからステージに向かってメロイック・サインを送ってみたら、こっちに返してくれたし。

興味のあるプロモーターの方は、呼んでみては如何だろうか?
※恩返しのつもり。


ANAL BLAST
取り敢えず、ボーカルのビジュアルに目を奪われる。

パッと見、まんま北斗の拳ハート様丸出しの巨漢なんだが、全身どころか顔面までデカデカとタトゥーが入っており、かなり危なすぎるルックス。
普段、どうやって生活してるんだろうか。

ライブの内容はほとんど覚えてないけど、とにかく下品な事しか喋っていなかった印象。
MC中、ある女性客と和気あいあいと喋っていたハズなのに、ボーカルが下ネタで煽りまくったせいか、途中から女性客がキレ始めて口論に発展する始末。
なんのこっちゃ。

やる気あるんだか無いんだか分からない、のらりくらりと立ち回るステージングといい、曲名といい、徹底した下劣っぷりを貫く姿勢が素晴らしい。
そう、アンダーグラウンドはこれでいいのです。

ただ、演奏自体は割りとガッチリしてるし、チョコチョコ煽りを入れるボーカルの妙な迫力も相まってか、客席は結構な盛り上り。

しかしながら、このボーカルって2009年に亡くなってるんだよなー。
しかも、最近知ったのが、DEFIELDとかリリースしてたレーベルのオーナーだったとか。
まさに、アンダーグラウンドを地で行った人生である。

確か来日した事は無いと記憶しているので、実は結構レアなライブを観たのかもしれない。



ここで転換中、タバコを吸っていたら、同じく客として来ていた、まだ10代と思われる少年数名にねだられる。


少年1「ねぇ!チップ渡すからタバコくれし!」

僕「あぁ、いいよ」

少年1「あざす!」サッ[$1]


と、1$紙幣をチップで貰う。
すると、それを見ていた友達らも。


少年2「俺もいい!?」

僕「あぁ、いいよ」

少年「ざす!ハイこれ!」サッ[$1]

少年3「俺も俺も!」

僕「あぁ…いいよ」

少年3「ハイ!」サッ[$1]


と、三連続した頃合いで、4人目の少年が何やらバツの悪そうな表情で接近してくる。


少年4「あの…これしか持ってなんだけど…貰える?」ソロリ(¢50コイン)

僕「いや…チップはいいよ」

少年4「でも取っておいてよ」

僕「ハハ、わかったよハイ」

少年4「ありがとう!」



なんて律儀な少年4とゆかいな仲間達。
タバコあげただけなのに、図らずもプチわらしべ状態。
オニーサン感心感心(ゲス顔)

アメリカの街角なんかでタバコを吸っていると、しょっちゅう「頂戴」と言われたり、そんな光景を目にするのだが、時々こうしてチップをくれる人もいる。
こっちのタバコは日本と比較して¥200ほど高いので、案外有り難い心付けなのだ。


そんな少年達は当日の客席で一番ハシャイで暴れており、ムダに空いてるスペースを走る、滑る、見事に転ぶと言ったやりたい放題。

ラリってるのかシラフなのかはさておき、地元の少年達がライブで無意味に跳ねまくる様は、割りと見ていて微笑ましい。

と言うか、当日は彼らが盛り上げ役を果たしていた部分もあったりする。



うーん、話脱線しまくり。



ANAL CUNT
で、最後のケツオメコなんですが、肛門爆発と同じく、やる気あるやら無いやら淡々としたステージング。
セスについては、いつかのExtreme the Dojo Vol.7で出演した時よりも気難しそうな表情を浮かべっぱなし。

それに、確かヤクだか何かでブッ倒れてから、かなり体調が怪しいとも言われていた頃だったので、それも関係してそう。

ただ、Dojoの時もこんな感じだった様な気がしないでもないので(どっちだ)、案外、この姿こそ通常営業なんだろう。
そもそも、こんなキャラクターのバンドが客の顔伺ってもしょうがないし、する訳が無いし。
そう、グラインドコアはこれでいいのです。

そんないい加減に見える中でも、ライブ自体はキッチリこなす辺りに、妙なマメさと言うか、プロ根性みたいのを感じたり。
これこそ、黎明期から現在まで生き残った最大の理由なのかも知れない。

勿論、レジェンド枠の方々なので盛り上りも上々。
最終的には、当初の客入りの不安を帳消しにする、充実感のあるライブとなっていました。


結果的にセスは2011年に亡くなってしまい、これが最期の姿となってしまったのだが、先述のアナルブラストといい、徹底的に下世話にアンダーグラウンド精神をブレる事なく貫き通した姿勢は、もはや清々しいものがある。

そもそも、徹底的に「世間から嫌われる事をやる」って実は相当難しい訳で、そんな一般には到底受け入れられないスタイルを人生を通じて表現し続けるなんて、まさに狂気の沙汰でしかない。
あくまで「ギリギリ紙一重」の人達がやっている事なんで、良いか悪いかの賛否は分かれるし真似する訳にも行かないのだけど、そんな彼らだからこそ、普通の人とは違う感覚で物事を見ていたんだろうなと思う。

決して世の為人の為にはならないとしても、臭いものに蓋をしがちな世の中に対して、無理矢理こじ開けてブチ撒ける様な、その尖りまくったセンスは儚くも際立つ確かな存在感がある。
ましてや、徹底して尖った表現をしてこそ、デスメタルグラインドコアがエクストリームミュージックとしての意味合いを深めるとも言える訳だからね。

もっとも、本人的にはこれが「素」であって、表現しようとか見せつけようなんて気は毛頭無かったのかも知れないが。


そんな、小さなクラブでのライブの記憶が甦ると共に、「アンダーグラウンド」、「エクストリーム」を体現し続けた彼らに、改めて哀悼の意を込めRest in peaceと思うのであった。



終了後、外に出ると夜のリノは猛烈に寒く、薄手のダウンジャケットとTシャツで来た事を激しく悔やむ。
ましてバイクなので、滞在先に戻るまで運転に集中出来ない程のガクブル状態だった。

ネバダ州は砂漠地帯だが、リノは比較的緯度が高く昼夜の気温差が激しい。
なので、日中暑いからと薄着で外に出ると、日が落ちてから後悔するハメになる。
確かこの時、夜の気温は天気予報で11~13℃程となっていたので、それなりの厚着でないと耐えられない訳だ。

リノに訪れる際の参考に。



しかし、相変わらずムダ話ばかり長いなぁ。
思い出すと、ついやっちゃうんだ。




とりあえず、オマケ尻ーズでも。



アナルクラブ

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個人的に好きなコボコラ。

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探せばきっとアナたの身近にある、アナルづくしのライブレポートでした。


臭了