CULrides カルライズ

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リサイクル品のサルベージ スニーカー編 その1 良さげなアイテムの手入

上から目線の説教くささ全開でお送りした、前回までの長文コラムシリーズ。


まぁ、アクションスポーツのアレだの世の中のコレだのと書いたのは、色々と考察する内に、次々と繋がりそうな要素を付け加えまくっていたら、いつの間にか物凄い長文になったと言う。
単にカッコつけてみたかっただけの事です。


勿論、そんな堅苦しい話ばかりでは無く、その間に通常営業としてのネタも幾つかしたためていたりする。


そこで、今回は日常でも役立ちそうな、「モノの活力法」について。

前回の内容とも少し関連したウンチクも絡めつつ、その「具体例と実践編」を、数回に分けながらご紹介致そうかなと。

そんな訳でタイトル通り、再利用品のサルベージ話シリーズの始まりで御座います。



ある日、リサイクルショップを覗いた時。
靴のコーナーで、あるスニーカーが目に留まる。


それはVANSの「Low Cab」なのだが、久しぶりに目にしたので思わず手に取る。

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これは確か2004年~2005年辺りに販売されていたモデルで、ラベルにも「2004 VANS」と印字されている。

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インソール周りに毛玉が出ていたり、ミッドソールやアッパーにも汚れやシミがあるものの、この年代の中古にしては中々に状態が良い。

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靴の内側をクンカクンカしても、特にオイニーもしない。


また、この当時のスニーカーは加水分解が進んで実用に耐えない物も多いが、それも大して進行していない所を見るに、案外、大事に保管されていたのかも知れない。
それでいて、値段は¥1080とある。

このモデル、この状態、この価格。
もしや掘り出し物ではないか。


大体スケシューなんて、練習すればあっという間にボロボロになるんだし、むしろ専用機としてガンガン使ってあげた方がモノとしては本懐のハズ。
釣りに使っても、結果的に汚れるのは同じ。

ならば、その余生を存分に過ごさせてやるべきではないのか。

そう考えた時、何かが閃くと共に彼のサルベージを決定。
かくして、確保するに至るのであります。


これらの画像は、既に全体を軽く磨いた後。
パッと見では綺麗ですが、それなりに汚れていたりします。

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流石に十数年も前のモデルだけある分、ソール周りが少し黄ばんでいるが、それ以外は至ってまともな具合。

一応、シューグーに付属しているヤスリで表面を削っただけで、結構シミは落ちてくれた。


強いて難らしい点を言えば、何故か左足のシューホールのハトメリングが一部無い事。

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と言うか、使っててふっ飛んだ様子でも無いけど、エラー品だったのだろうか?
でも、使うに一ミリも支障無いから無問題。


カカトのラベルは、一昔のモデルに多かった「一体成型」されているタイプ。
何となく、味わいのあるラベリング方式だと思う。

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※ちなみに、ソール周りの黒い線がかすれているのは、削り過ぎたせいです…。
発見当初は綺麗に残っていたんだけどね。


実は2005年頃に出ていたAV Eraも、当時に新品で買ってからコレクションとして所有していて、改めて確認するとこのローキャブと全く同じラベル形式が採用されていた。
ただ、同年代のMt.EditionやTNT2は「貼り付け式」で、プロダクトによる違いもある。

今のNu Skoolなど復刻系を除いて、現行のVANSは基本的に後貼りタイプのラベルのみで展開しているはずだけど、やはり一体型はコスト的に止めたのかな。
多分、一足毎に金型が必要っぽいし。

そう考えるに、この年代がスタイリングとして、一つの「境い目」なのかも知れない。
まぁ、何にせよ機能性に影響の無い箇所ではある。


シルエット的には、やはり一昔前の流行を反映した、ベロもソールもアッパーも厚めのポッテリしたスタイリング。
この形式も、ある時期からサッパリ見なくなったけど何でだろ。


考えるに、スケボーするに足の感覚が詳細に伝わる方が良いだけに、分厚いクツはクッション性以外にあまりメリットが無かったのだろうか。
あるいは流行が過ぎたとも言えるし、細身の服と合わせ難いのは確か。

恐らく、現在は技術革新も進んで、エラとかオーセンティックな形のまま機能性の高いインソールを仕込める訳で、分厚く造る必要性も無いのだろう。

それならシルエットも崩さないし、クラシカルでスリム志向な服とも合わせ易いからね。
確かに、Era Proとか履いた時には、その快適さに感動したものです。


でも個人的に、スニーカーに限らず、何となくこの2000年の一桁代の頃に作られたモデルが、今になり妙に魅力的に映ったりする。
NIKE 6.0のヤツとか。

と言うか、2008年のリーマンショック以前の製品は全体的に素材が頑丈で、細部の造り込みも凝っている事が多い。

なので、モノによっては現行モデルより耐久性や使い勝手が良かったりするのだ。
特にアパレルなどは、その傾向が露骨で顕著なのは多くの人が実感する所でしょう。


温故知新ほど大袈裟な話では無いが、その価値を見直すには絶好の素材であり、現在でも通じる機能が残されているのが、この年代のモノの特徴。
見付けたら、末永く使って行きたい所です。


とまあ、無駄話はさて置き。

かくしてサルベージに至ったスニーカー。


あくまで中古には違いなく、他人の履いた靴に抵抗がある方も多かろう事と思います。
その気持ちは良く理解出来る部分。

当然、本当に使えないレベルのモノはありますし、買って失敗する例もあります。


ただ、それとは別に。

実は、その状態や機能面さえきちんと見極めれば、使えるアイテムは幾らでも見つける事が可能。
その品が、実際は何ら問題無く使えるモノで、目的に叶えば良いのです。


そこで、リサイクルショップで大事になるのが、「目利き」。


これは偉そうな話でも難しい話でも無く、非常に簡単な原理を理解すれば、予想以上の費用対効果をもたらしてくれる便利な技術の事。

その様々な要素を考慮しながら、何が必要か不要かを吟味して選ぶ事が出来れば、用途を満たすのは勿論、それ以上の真価を引き出す事が可能になる。
それは中古品に限らず、新品でも全く同じ原理が適用される事柄でもあります。


今回で言えば、このスケシューの「使用目的」がカギになります。


例えば、「ひたすら使い倒す」事が結論の大前提にある場合ならば、既に汚れる事も、キズだらけになる事も決定的。

そうなれば、決して「新品」である必要も、「高い」品である必要も、実は「年式」すらも大した関係が無いと言う解答が導き出せるはず。

それがもし「綺麗」で無いとするならば、綺麗にすれば使い心地は良くなる。
また、「機能」が足りないのならば、工夫したり付け足したり補う事で、使いやすくなる可能性も高くなる。

時には、おろしたての「一張羅」ほど大事にし過ぎて、思い切り使えないシーンもあるのでは無いだろうか。
そんな時こそ、なおさら気兼ね無く使えるユーズドが適任となり得ます。

この場合ならば、「用途別」にモノを揃えれば良いのです。
そうする事で、「実用(日常用)」と「勝負用(お洒落用)」での使い分けが可能となり、モノの寿命を延ばす事も可能となる。


つまり、「使い道」と「使い方」がポイントになる訳です。



次回は実践編として、そんな中古品の使い心地を増す為のリフレッシュと、更に活用する為の方法に移りましょう。



おまけシリーズ。



スニーカーのスタイルでチョイと思い出した事。


振り返れば90年代末から2000年代前半は、どのメーカーも全体的に厚みを持たせた造りをしていたのは、本稿で触れた通り。

また、やけに挑戦的なモデルも多くて、ナイキのエア「インスパイア系」とか「ヘリウム」とか、今じゃ考えられないハイテクミクスチャーなスケートシューズがわんさとリリースされていた。

それが今は、カップインソール合戦に姿を変えている訳ですな。


参考までに、2000年当時のWarp magazineに掲載されていたCONVERSEの広告。

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同誌に同封されていたカタログより。
日本人も有名な方々がライダーとして所属していて、かなり力を入れていた事が窺える。

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なんちゅーバリエーションの数々。

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当時はプロショップも元気で、あちこちに有力店がありましたね。

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こういうハイモデルは雑誌の広告で見かける機会は多かったものの、基本的には横ノリに強い専門店が中心で扱っていて、売っている場所はごく限られていた印象。

ただ、アクションスポーツ業界は全体的に活気があって、ご覧の様に各メーカーがひしめき合い、続々とニューモデルを発表しては広告が打たれていた時代でもあった。
まぁ、個人的にはその頃スケボーをやっていなかったので、見てもピンと来なかったけど。


それで最近、いつの間にかコンバースもスケートモデルが復活していると知った。
そう言えばアディダスもか。
何やら近年になり、再び大手の復活や参入が相次いでいますな。


しかし、いつも思うのだけど、こういうニッチなモデルって日本だとサッパリ売っている所を見ない。
宣伝もあまり見ないし、日本法人とか代理店では力を入れない理由でもあるんだろうか?
全く売れない訳では無かろうに。

今でこそ、NIKE SBも普通に色々なお店で正規に扱う様になったけど、何で最初から少品目だけでも同時展開しないんだろうかと疑問で仕方なかった。
昔と比べてバリエーションが絞られているなら、そんなに売場スペースも必要ないだろうし。


特に、扱えるプロショップが少ない現在、手に入り難いままでは余計に出遅れ感が増す様な。
大手メーカーですら日本と海外で流通の待遇差をつけていては、やはりシーンとしても土台が固まらないと思うし。

何となく、その辺りから社内でアクションを起こす動きとか、そういう人は居ないのだろうかと気になる所。


いや、単に「安売り」したくないだけかも知れないし、予算だって厳しいご時世なら、プロモーションだって限られた場にしか出せないだろう。

故に、余計なお世話と言われればそれまでなんだけども。
あの当時と比べてしまうに、何となく寂しいな。
なんて。


などと、妙にノスタルジックな気分を覚えつつ、次回へ。



では、また、CUL。