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食べ蒔き作物プロジェクト報告書 土作り

前回に予告した通り、これからシリーズにて「食べ蒔き作物」の栽培レポートをダイジェスト式にお送り致します。

蘊蓄満載の長文が続きますが、現段階における考察を総纏めにした内容にしておりますので、お時間の許す限りにお付き合い頂ければと思います。


それにあたり今回は、準備段階である「土作り」について。


実際に行った手順を記すと共に、何故その手法としたのかの「理由」にも触れて参りましょう。



🌑土壌の健康を確保🌑

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今回、畑として使用した場所は、長らく放置されていた土地を耕した程度の環境である。
管理と言えば、ボーボーに生えた雑草刈りをしていた程度で、そもそも栄養の有無や酸性度も知る由が無い様な場所。


更に実の所、数年前に市販の除草剤を撒いた事があるのだけど、その当時は分量が足りなかったのか結局、草ボーボー状態は変わらず、効果あるんだか無いんだか判然としない経過を見せていた。

現状では、雑草の種類や茎の高さから、まるっきり貧相では無いし、見た目には薬剤の影響も感じられ無い。

そんな、植物が生えれる環境ではあるにせよ、作物を育てるには些か頼り無いのが正直な感想である。


開始期間としては、昨年度より既にこのプロジェクトを構想していた事もあり、2017年~2018年の春までは土作りを優先。
雑草を根本から掘り起こして除去しながら、土地を少しづつ柔らかくしていた。

方法はセオリー通り、出来るだけ深く掘り起こし、土の通気と水捌けを良くし根を張りやすく、足で踏むとフカフカに沈み込む位に耕す事。

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更に念頭にしたのは、これにより酸素が大量に行き渡り、土壌の微生物が活性化する事で、「栄養素の浸透」や「雑菌の分解」などの循環作用を強く促せる土作りであろうか。
あるいは、残留しているかも知れない薬剤を流し、健全な土壌へと改善させる。

とにかく、「自然の作用」を最大値に引き出すべく、試行錯誤していた訳です。


ちなみに、「雑菌の分解」についてのデメリットがあるとすれば、土壌に新たな酸素と栄養素が流れ込む事で、一時的に特定の雑菌が繁殖する可能性は大いに有り得る。
それが特定の作物に悪影響を与えるかも知れないし、また病気の要因にもなりかねない。

ただ、土壌の攪拌が充分に行われていれば、それら雑菌を食糧にする微生物も多数現れるはずで、結果的にバランスが釣り合うのでは無いかと考えていた。
実際、自然の環境下で「うどん粉病」等の作物に良くある病気で壊滅した野原と言うのを聞いた事が無いし、あったとしても相当なレアケースであるはず。

とすれば、雑草がスクスク育つ理由は植物そのものの生命力以外にも、「土の成分自体が特定の雑菌や病原菌の偏りを許さない環境に保たれているか」が鍵を握っているのでは無いかとも考えられる。

つまり雑菌の分解とは、多様性によるバランスがあってこそ成立する概念と言えるかも知れません。



🌑土の特性と栄養素🌑

土を耕す一方で、今回は新たに培養土や赤土等の投入はせず、「元の環境そのままの土壌を活かす」方式を採用。
いわば、「土壌の環境=土の特性」となるのですが、これが上手く作物に作用すれば、栽培にも有利になると考えられる。

その理由としては以下となります。



(1)あくまでその土地の土壌そのもので、果たして作物が育つのか観察しておきたかった。


上の項目で触れた通り、まずは土地の健全度合いを測る為です。


確かに、雑草が大量に生えてくる次点で既に健康であるのは判るのですが、あくまで「作物」が育つかどうかが焦点となります。

例えば、雑草は何もせずに育つし、必ずと言える高確率で子孫を残します。
しかも、人の手を借りず、自然のサイクルで自動的に全てが正常に作用している。
それらは、植物の性質、土壌の微生物、栄養素との相互作用が噛み合う事で形成されています。

つまり、その環境で「作物」が正常に育つならば、必須な栄養素や微生物が揃っていると想像出来るし、尚且つそれら要素が作物にも「合致」するならば、ある程度は雑草と同じくらいに自動的に育つはず。
要するに、「余計な手間」が減るのでは無いかと考えたのであります。

いや、なんてズボラなのだ。


「でも、それじゃ優位性の高い雑草とか害虫に負けるだろうし、そもそも栄養が足りないと作物がダメになるんじゃ?」


と、思われる方も多いはず。

確かに、その懸念は強いし、下手するとワンシーズンをドブに捨てる事になりかねない。


しかし、個人的な感想としては多分、ある程度これら雑草と同じ環境下で多様な微生物や栄養素に触れさせれば、何かしらの条件により、作物の持つ免疫力を目覚めさせる「スイッチ」が入り、生命力そのものが強化される可能性があるのでは無いかと予想しています。

と言うか、雑草が強く生き残れるのは根本的に生命力が強いからであって、本来ならば作物の先祖も昔は多少の病気や害虫などモノともしない特性を持っていたはずなのだ。

その意味で現代の作物とは、野生や自然下での生存能力を失ってしまった植物と言えるのかも知れません。


とまぁ要するに、元となる種が弱かった場合は失敗する可能性があるけど、病気に打ち克つには先ず「体質改善」が必要かなと。
何より、この方式が上手く行けば、他の場所(土地)でも応用が可能になると考えられる訳です。


※注釈※

作物の免疫力が発揮される場合、毒素も強まると言われています。
ここで言う毒素とは、渋味、苦味、酸味など、味覚として感じられるエグさも含みます。

これら毒素は、基本的に人間が食べる分には影響の無い程度とされますが、それは植物に備わった防衛本能の顕れでもあります。
言い換えれば、「生命力の強さとエグみ」は等しい関係にあり、同じく「甘味(旨味)と免疫力」は引き換えの関係となるのでしょう。

故に、昔の人は「熱を通して灰汁を取る」とか「漬物にする」等で工夫していた訳です。

そう考えると、一昔前まではトマトも酸っぱかったり、スイカもパッとしない時なんかは、塩を振って味を強化していましたからねー。
最初から甘い作物が主流の現代では信じられ無い話だと思いますが、これが野菜本来の姿なのも確かだったりします。



話を「土の栄養素」に戻そう。



(2)余分な栄養素(養分)の片寄りで、土壌の多様性を乱さない様にする事。


これは上記の(1)を補足する要素となります。


所謂、化学肥料にせよ有機肥料にせよ、栄養素を強化する点では同じはず。
株や果実を充実させるには必須要素ですし、また、与えないと育ち難いのが現代の作物とも言えます。

ただ、これら栄養素が強すぎて土の成分における「主流」となった場合、それまで土地で循環していた微生物の生息分布に影響を与える可能性が考えられる。
つまり、高過ぎる栄養素は「特定の作物」の生育には好都合ではあるが、逆にそれまで正常に働いていた「土壌の力」のバランスが崩れ多様性を失い、「特定の雑菌(病原菌)や害虫」も蔓延し易くなる。

と言う状況が起こり得る訳です。


となれば必然的に、農薬を使わざるを得ない状況ともなりかねないのですが、出来ればそれは避けたいのが正直な話。

と言うか、正確には使うシーンもあるのですけど、とにかく「極力化学肥料や薬剤を使わない有機栽培」を目指している以上、「必要最低限」に留めるべく試行錯誤しておきたい。

あくまで、「如何にして土壌と作物の相互作用を最大に引き出せるか」を、当プロジェクトの要として追究して行きたいのです。


まぁ、身も蓋も無い言い方ですが、それで失敗したらしたで次に活かせば良い話。
本音を言えば、大量に培養土とか土壌改善剤を投入して安パイを取りたいけど、この理論と現状でどこまで通用するか確認する為にも、今季はこのスタイルでゴリ押しします。


次回は、土作りに使った「肥料」などの資材について記して参ります。



おまけシリーズ。



近所で見つけた、カワトンボかイトトンボの仲間。

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正直、君の名は…。

詳細な種類がよくわからない。
何方か同定できる方がいらした時は、コメントを下さいな。


何にせよ、こうした生物のいる環境は、植物にとっても大事なのです。
これは本当に。



では、また、CUL。