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身近な生物との遭遇シリーズ2 センチコガネの生き様

今回も近所で見つけた生き物シリーズだよん。

※注意。
この記事には一部、「スカッとトロッと」したネタが含まれています。
お食事中の方は気分を害されぬ様、閲覧を避けた方が良いかも知れません。



身近に生息している昆虫の中で、一際美しい輝きを持ちながら、相反するユニークで独特な生態を持つのがこの甲虫。

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これはセンチコガネと言う、動物のフンをエサにしている、所謂フンコロガシに近い仲間。
パッと見はカブトムシのメスに似ているが、習性は全く違う。


文字にして糞虫。
俗に言うクソムシだが、本来は「ふんちゅう」と読む。
クソムシに比べ、「ふんちゅう」ならマイルドな響きになるが、結果的に意味は同じである。


比較的よく見つかる虫で、キラっと光るのが地面にいるなと思うと、このセンチコガネだったりする。

結構な確率で道端を歩いているのを見かけるので、実は人間の生活圏とかなり近い昆虫と言えるだろう。

イメージ 2


その体色は、車のカラーで言う「マジョーラ」に近く、基本的に紫色を中心として、地域や個体により青系や緑系にも輝く。



所で、この色味の違いはもしや「食べた便のクオリティ」で決まったりするのだろうか。

例えば、それが肉食動物の糞なのか草食動物の糞なのか、その主の「食生活」による違いだとか。
あるいは、酸性度や微生物などの「腸内環境」による差とか。

食物の違いで生物の体質に違いが生まれるのならば、それによって何かしら個体差が生まれる可能性はあるし、その個体により「好み」が分かれていても不思議では無い。


時に、当のセンチコガネ達の間では、こんなヤリトリがなされているのかも知れない。



「どうよこの色。俺んち、よく[肉入り]食ってたんだぜ。いつもは鶏肉なんだけど、たまに牛肉入ってるとキタコレって感じだわ。特にカルカ○とモ○プチ食ったヤツのはヤバい」


「いいなーその色。俺は小さい頃、野菜の[繊維質]ばかりでさ。牛舎で育ったから量だけは沢山あるし腹持ちはいいんだけど、毎日同じ味で飽きちゃってさ」


「でも、最近は[ジビエ糞]がリバイバルしてるらしーよ。高タンパク低コレステロールとかで。昔は皆それで暮らしてたらしくて、山に入ると時々発見出来るんだって」


「いや、わかってないねー、君ら[良い糞]食べてないっしょ。その色見れば分かるわ。やっぱ無添加オーガニック飼料で育ったヤツの糞が一番でしょ。糞も「産地」と「素材」で選ばないと。メスにモテたいならブランドが大事っしょ」


「出たー、クソセレブ」


「拘ってるとか言うけどさ、こちとら毎度そんな高級品にありつけないんですけど。マジBullshit」


「まぁまぁ皆、それぞれ味も好みも違うって事で。僕はどんな糞でもOKだし、食えるだけ幸せじゃないか」


コガネムシ「つーか、お前らクセーよ。普通に草食えよ」


「・・・」



みたいな。

いや、何を書いているんだ俺は。



それはどうでも良いとして、日本の甲虫界において、屈指の奥深い色彩と光沢を持つ姿とは裏腹に、根っからのスカトロ属性であると言うのは、まさに生物界の神秘。
ギャップ萌えを全力逆走する様な生き様は、アナーキズムさえ感じる。


古代エジプトでは、フンコロガシの仲間であるタマオシコガネ(スカラベ)がフンを丸めて転がす姿から、太陽を動かす神の化身とされ崇められていたと言う。
また、丸めた糞から新しく成虫が生まれ、地中から這い出して来る様子から、不死と復活までも象徴していたそうだ。

その為、王家の御守りとして、遺跡からはスカラベを象った装飾品などが多数発掘されている。
ある意味では、RPGで言う「復活の呪文」とか、それと同じアイテムの扱いであったのだろう。

また、かのファーブル先生の昆虫記においても、かなりの記述量を割いていた所から、熱心に観察していた事が判る。

この様に、強烈なインパクトのある存在ほど、様々な意味で興味を引きつけるのは、昆虫も人も変わらないのかも知れない。



同じ糞虫であるこのセンチコガネは、基本的にフンを丸めたり転がしたりはしないと言う。
希に丸める事はあるらしいが、個人的には今まで何度か糞に集まる場面に遭遇してはいても、実際に見た事が無い。

恐らく、その時はたまたま「丸くなり易かった」だけか、「その方が動かし易かった」だけでは無いかとも思う。
まぁ、その意味では「進化」の一端が芽を出していた可能性はあるのだが。


尤も、その輝きに関して見れば、何か特別な意味が含まれている様に思えなくもない。
一体何の為に輝いているのか、必然性があるならば必ずそれに至った理由があるはず。

ちなみに、日本には他にもエンマコガネ等のフンコロガシに近い仲間が多数いますが、何故か彼らはやたら小さい上、真っ黒で地味な体色をしている。
同じ食糞仲間なのに何故なんだ。



何れにせよ、彼らがこの習性に行き着いたのには様々な経緯があっての事には違い無い。
この生態で種を増やし、世代を繋いでいるのならば、それは生存の選択肢として正しかった表れでもある。

また、自然の循環から見れば、彼らが動物の糞を分解する事で土壌の健全さが保たれ、草木の成育を助けているとされている。
特に、家畜の放牧地などでは、そのお陰で土地が腐らずに済んでいるとまで言われる。

つまり、彼らが生息している事自体が、新たな生命を育む環境を整える為の、重要な役目も果たしている訳である。


そう考えるに、あくまで通常なら誰も選ばないであろう「糞」とは、彼らにとって他のどの昆虫とも競合しない「適地」の一つだったのだろう。

まぁ、僕はその属性が無いし全く真似出来ないスタイルではあるのだけど、その既成概念を破壊する様なフロンティア・スピリッツこそが、案外、生命の進化と大きな関係があるのだと思わずにはいられない。


そんな、身近な生き物の間では、今日も糞を廻るドラマが繰り広げられているのでしょう。



では、また、CUL。