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身近な生物との遭遇シリーズ3 タマムシのタマシイ

引き続き身近な生物シリーズにて。
これは今年の夏頃の話であります。


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前回のセンチコガネと同様に、いわゆる「貴金属の様な光沢」と言う意味での美しい昆虫は数多い。

コガネムシ、ハンミョウの甲虫類を始め、ハチの仲間であるオオセイボウなど、実は多種多様に及ぶ。



しかし、この日本において真っ先に思い浮かぶ王道的存在が、この玉虫のはず。

イメージ 6


このスタンダード種であるヤマトタマムシが、最もポピュラーに見られる玉虫でなかろうか。


クズの葉にいる、クズノチビタマムシなどは良く見かけるが、実際にこのスタンダードなタマムシを捕らえるのは初めて。

幼少期からの憧れの虫であったが、今まで飛んでいる所を発見すれど、位置が高すぎて見逃す事が多かったのだ。
そう思うと、この虫を手に取るのにエライ時間がかかったなぁと、妙な感慨に浸る。


それで、この画像のタマムシとの出合いも、また意外なシチュエーションでの事であった。


近所をバイクで走行中。

ある狭い道路に入ると、その道のど真ん中で、カラスが何やら地面に向かって執拗に突っつき回している場面に遭遇する。

道幅が狭いのでそのまま接近してみると、カラスは飛び去って行く。
そこで、突っついていた物を確めた所に転がっていたのが、このタマちゃんだったと言う。

イメージ 1


カラスって、キラキラ輝く金属片とかを集める習性があるとか言うけど、まさかタマムシを襲うとは初めて知った。
確かに、これだけピカピカなら目立ちまくる訳である。


裏返しで失礼。

イメージ 2


どこを見ても全身ペッカペカ。
狙って下さいと言わんばかりではないか。

イメージ 4



しかしながら、あれだけ「カッツンカッツン」と音を立てる程にしつこく小突き回されていたにも関わらず、殆どキズが入っていないしかなり元気なのは驚きだ。
普通の虫なら、あの時点でボロクソにされているはずなのに。

確かに表面(外皮)はかなり硬く、クワガタなどと比較しても遜色無い強度がありそうだ。
ギンギラギンに然り気無く生きている様で、実はかなりのタフガイと見た。


で、発見した当初は、脚をキュッとコンパクトに「収納」した防御姿勢を取っていたのだが、その綺麗に折り畳んで腹部に収めた姿はどう見てもコメツキ。

イメージ 3


センチコガネもだが、タマムシが色彩が派手なのに、何故コメツキは黒や茶色(サビ色)など地味な体色ばかりなのか。
まさに進化の謎。



そもそも何故、こんなにデーハーなのだ。

理由は様々あるのだろうけど、カムフラージュにしては目立ち過ぎるし、自然環境に隠れられないのでは生存のアドバンテージが低くなってしまう。


ただ、もしかすると案外、他の種を出し抜きたいが余りに、本当に「目立ちたくて」この姿に行き着いた可能性はある。

例えば、クジャクの羽などの様にメスへのアピールが過ぎた挙げ句、成金状態に至ったとか。
あるいは、ガンダムで言うクワトロ・バジーナの百式みたいな意味で。


まぁ、要は人間で言えば「肌艶」が良いと健康的に見えるのと同じ事。
それを今度は追求し過ぎて、「ラメ」を塗るとか「ヒアルロン酸」を注入するだとか、トゥーマッチ化したのが今の姿ではなかろうか。

そう考えるに、彼らの間にはこんな哲学があったりして。


「俺達はカラスに狙われるぐらいブリンブリンに目立ってナンボだ。歯と靴と[甲]は毎日磨け。リスクを取れ。リターンとメスは後からついてくる」

「ウス、勉強になります」


と、ハスラー的な価値観が世代や仲間内に受け継がれていたりとか。


「我が[魂]浮き世の[玉響]とて、あぁ果てど艶めく花道、[珠]虫道」

「あんさん、タンスの奥まで一緒にいさせとくれやす」


と、まるで歌舞伎者の如き向こう見ずなスタイルを貫く開き直りの境地と言うか、芯の様な信念を感じる次第。
徹底して「傾奇く」のも、また一つの立派な芸風なのでしょう。

いや、そこまでタマムシが考えてるかは知らんが。


そう言えば昔、そのタンスに入れると幸運のお守りになるとか民間伝承があったけど、入れられた方はたまらんだろな。
狭いし暗いしナフタリン臭いしで。
実際に入れてた人って、どれ位居るんだろうか。


最後にピンボケだけど、飛ぶ瞬間。
非常に元気が良かったので、羽化したばかりだったのだろう。

イメージ 5


かくしてこの後、タマちゃんはこのまま飛び去って行く。
カラスに見つからん様に。



まぁ、アレです。
何だかんだ言って、タマムシを見てるだけで得した気分になれるのは間違い無いなと。

やっぱり「金ピカ」と言うだけで否応無しに興味を惹き付けられてしまうのは、人も動物も変わらないのかも知れない。

そんな、理屈を超えた、本能に訴えかける様な輝きを放っていたのでした。



では、また、CUL。