CULrides カルライズ

発見と探究そして文化。そんな諸々の話。

身近な生物との遭遇シリーズ4 カマキリとカエルの緑は生態系の信号機

引き続き、身近な生物シリーズで御座います。


今回は、ちょっと珍しい「取り合わせ」を発見したお話し。

そして、そこから推測される生態系の「シグナル」について、私独自の仮説を交えながら語りたいなと思います。


関連記事
近所のヘビとスネーク・スキン

culrides.hatenablog.com


センチコガネの生き様

culrides.hatenablog.com




ある日の夕刻。
農地の広がるエリアの歩道を歩いている時。


不意に、歩道脇から生えている雑草地帯の中に、「怪しいコントラスト」があるのに気付く。


近付いてよく見ると、同じビワの若木の葉にオオカマキリとアマガエルが乗っているのだった。

イメージ 1


なかなか珍しい絵面だったので、思わずパチリ。

しかし、同じ緑色なのにこの絶妙な違い。

正直、お互いカムフラージュ出来ているのかどうか謎な存在感を放っているが、奥深い「色彩の妙」であるのは間違いない。


カマキリ的には、このアマガエルを捕食対象にしていないのか、あまり興味は無い様だ。
それとも、単に気付いていないだけなのか。

イメージ 2



カエル的には、このままやり過ごすつもりなのかジッと動かず、跳ねて逃げる様子が無い。
ただ少なくとも、カマキリの存在は意識していそうな防御姿勢?には見える。

イメージ 3



そんな、緊張感の漂う現場。
まぁ、人間の目線からこのシーンを一目見た限りでは、どことなく上手く共存している様に見えなくもないが。


時々、カマキリはカエルを捕食するそうなのだけど、この場面を見る限りでは常食する訳では無く、時と場合によるのだろうと思う。
そもそもカエル自体、頻繁に捕らえられる訳では無かろうし。

多分、普段はこうしてお互いの存在は認識しつつ、スルーしているのが通常の生態なのかも知れない。


まず、カマキリの寿命から考えれば、捕食行動や消化運動の一つ一つが重労働に違い無い。

わざわざ捕獲に無駄なエネルギーを消費しそうな大きな獲物を捕らえていては、下手すれば自分の体力さえも大幅に消耗する事になってしまう。
また、消化に時間を要しそうな食物では重たすぎて、「胃もたれ」を起こす事だって考えられる。
人間で言えば、ステーキばかり食べ続けるのと同じ事で。

普段はその辺にいる細かいバッタや蝶などを、チャチャッと捕らえた方が遥かに効率良く栄誉補給が可能なはずだ。


恐らくカエルを捕獲するその時は、腹が減ってどうしようも無い気分だったとか、たまたま何となく食ってみるかと「試食」のつもりであるとか、あるいはルアーフィッシングで言う「リアクション・バイト」みたいな反射食いだとか、色々なパターンが存在するのではなかろうか。

ただ、ある意味では、この「ハイ・カロリー」な獲物の捕食に適した能力を獲得したその時、もしかすると更に大型化した種へと進化する可能性は有り得る。
名付けて、「オオオオカマキリ」みたいな。
いや、ややこしいので、「ダイオウオオカマキリ」にしとこうか(どっちでもいい)。


ついでに、今年はこの近隣の市街地でやたらカマキリが多く、かなり頻繁にあちこちで見かける。
特に、何故かオオカマ、チョウセン、ハラビロなどの比較的大きな種類に偏って現れるのだけど、当り年みたいな周期でもあるのだろうか。

とは言え、昔に比べれば「種類」はかなり減っていて、特にコカマ、ヒメカマキリ等の小型種はここ数年ほとんど見ていない。

理由は必ずあるはずだけど、生物的な「強さ」や「勢力」から言えば、大型種の方に分があるのが通常。
また時に、共食い的に小型種を餌にしてしまったりなどで駆逐してしまう事もあるだろうし、「餌不足」が発生すれば尚更だ。

そう考えるに、やはり周辺の環境では生息が難しくなりつつある状況なのは否定出来ない。
※考察は後述にて。



また、この撮影現場は田畑と水田がごく狭い範囲で集約されており、周辺の道路ではカエルがやたらピョコピョコ跳ねていた。

山林では無く、いわゆる市街地の周辺で個体数が纏まっている光景も相当久しぶりに見たし、近所にこんな場所がある事も知らなかった。
たまには、普段通らない道を通ってみるもんです。


基本的にカエルが多数生息する環境は、水質を含めて生物の多様性が保たれている場所でもあるので、生態系の重要なバロメーターと感じられる。

ヘビの話と同じく、昔は本当に種類が豊富だったのに、何時の間にか消えて久しい。

昔は小河川しか無い市街地でも、少し草叢を覗けばアマガエルだらけだったし、夜になればアカガエルやトノサマガエルも交ざり、まさに「カエルの合唱」が聴こえていた位だ。
当然、オタマジャクシは何処にでもウジャウジャいたのに、最近はサッパリである。

また、昔はヒキガエルがしょっちゅう近所に現れていたが、ある時期から全く見なくなったけど何処に行ったやら。
捕まえると、メチメチャお腹がプヨプヨとして柔かった思い出が。

稀にドブの蓋から、大量のマイクロヒキガエル(全身真っ黒で小指の爪ほどの大きさしか無い、ヒキガエルの幼体)が沸き出ている事もあったけど、今となっては幻に近い絵面だろう。


実際、20年以上前にはカエルが沢山いたエリアが、今はサッパリ姿が無くなっている。
環境的には、当時と見た目は大きく変わっていないものの、減少するにも何かしらの原因があるのは確かだ。

正確には、河川敷や水辺の「森林」がだいぶ減少しており、実はそれと大きな関係があるのではないかと考えている。

特に、それまで里山や農地であった場所が住宅地等に造成されて行くに従い、加速度的に生物が減少して行ったのは、この数年で強く実感する事実と言える。


ちなみに、この現象は、以前のミツバチに関する話題とも無関係では無い様に思われる。

関連記事
生物の不思議シリーズ

ミツバチの行動の謎

culrides.hatenablog.com


環境変化の影響と仮説

culrides.hatenablog.com


細菌との共生に関する仮説

culrides.hatenablog.com



更に調べてみると、どうにもカエルの幼体は、地表に生息するダニやトビムシ等の微細な土壌生物を餌にしていると言う。

だとするならば、先の小型のカマキリやその幼体も、体格からして細かな虫を餌にしている訳だし、実はカエルと近い食性と考えて良さそうだ。

これはつまり、彼らの生息地において、開発や殺虫剤等の農薬で微生物が消失した場合。
結果的に餌が無くなり、生育不能に陥ってしまう事を意味している。

それらを踏まえて時系列で表すに、こんな仮説が想像される。


(1)何らかの要因により、土中の微生物や地上の植物が消失すると、それを養分にしたり住み処としていた他の微細な虫が死滅する。
これら虫には、コオロギ、ダンゴムシ、アリ、アブラムシなども含まれる。


(2)その微細な虫が死滅すると連鎖的に、カエルの幼体、カマキリの幼体も、それら餌を確保出来なくなる。
いわゆる、食物連鎖の「初期段階」が失われた為に、飢餓状態となる。


(3)小型種ほど細かな餌が必要となるが、微生物が消えて食べられる虫が少なくなった時点で、更に個体数が減る。
何故なら、彼らは体力的にも消化器(口や喉含む)の機能としても、「体のサイズ」に見合った小さな獲物しか捕食出来ないから。


(4)微生物と食糧の減少により、カエルは一定の数以上は繁殖出来ず、また、カマキリを捕食する程のサイズまで成長も出来ない。
同じく、小型のカマキリも餌が無く、減ったままになる。


(5)小型の生物は比例して「移動距離」も短い傾向にある。
その為、他の新天地に移動しようにも体力が持たず、結果的にその場から離れる事すら困難となる。


(6)すると、体格差で勝る大型のカマキリが勢力として台頭する。
彼らは幼体の時点では小型種と競合したとしても、最終的に遥かに大きくなってしまう為、初期段階からして体力差が発生する。
また、比較的大きな餌を選択出来るので、成長スピードも早い。
更に、移動距離も長く餌場の範囲が広げやすい。
特に、幼体の天敵であるカエルが一切生育しない環境下では、食物連鎖において無敵に近くなる。


(7)大型のカマキリとカエルでは、餌が競合する事もありうる。
ただ、やはり体格的に捕食能力も大型カマキリの方が優位にあるので、小さなカエル程度では駆逐されてしまう。


(8)(1)~(7)の連鎖が、近年に入り顕著となった。
その偏りの結果、オーカマ、チョーカマ、ハラビロ大杉の三強状態となる。
これが後に言われる、Ζガンダムの「グリプス戦役」である。


(9)そうなれば、最終的に大型種の間でも競合が発生する。
しかし、争いばかり繰り広げていては、いずれ自分の身が危なくなる。
その現状は則ち、種の保存(存続)の危機でもある。
何より、無益な衝突を避けたいのは、虫も人も同じ事であり、わざわざ望んで競合したい訳では無いはず。


(10)恐らく今、市街地で見られる大型種は、本来の生息地での縄張りや食糧確保が困難となり、他者との競合を避けるべく大きく移動をしていた。
いわば、「出稼ぎ組」であったり「難民」に該当するグループではないのか。



とまぁ、大袈裟にスケールを拡げた解釈をするなら、上記の如き循環が考えられる訳です。

でも案外、可能性としては割りとリアルな線な気がするけども、どうだろうか。


思えば近年、バッタなどの直翅目も見かけなくなった。

特に、昔は腐るほど居たクルマバッタやトノサマバッタは殆ど居ないに等しく、相当に数が減っているのは間違い無い。
同じく、今年はコオロギ、ツユムシやウマオイ等の鳴く虫が極端に少なく、夜は静かそのものだ。

翻せば、それだけ成体の餌となる昆虫が減少している事を表してもいる。



とどのつまり、この記事の画像の様に、カマキリとカエルが同じ場所に生存出来る場所は、それだけ健全に餌が確保出来ていると言う事。

生態系は「青信号」、まさにコンディション・グリーンな環境が保たれていると言う証しなのかも知れない。


彼らを見ていると、今時、そんな自然が残っている場所はとても貴重なのだろなぁ。

と、思わずにいられない昨今で御座いました。



おまけシリーズ。



機動警察パトレイバー ON TELEVISION
主題歌「コンディション・グリーン」
https://youtu.be/z4gp8j1jVAQ

これが大好きで毎週見ていましたよ。

実は、この放送当時(1990年頃)は、まだ都市部の周辺は緑に溢れていて、放課後は少年達の絶好の遊び場であった。
皆して豊かな自然の中で、多種多様な生物と戯れていた事を思い出す。

いや、これは誇張でも何でもなく、今では信じ難い程に本当に生物が沢山いたのだ。


この記事を書いている内に、そんなパトレイバーを見ていた頃の記憶と、昆虫採集に夢中だった頃の記憶が色々と繋がり、いささかノスタルジックな心境に至るのだった。



では、また、CUL。