CULrides カルライズ

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生物の不思議シリーズ ミツバチの行動の謎 その1

見つけた時に、思い出した時に綴る生物の不思議シリーズ。


過去記事
極小ウナギの思い出(少し追記あり)

culrides.hatenablog.com



今回、この記事の趣旨は「ミツバチの行動の謎」の一端と、その事例を見た。
そして、「恐らくこんな要因が関係している」と言う一つの仮説。


そんな、ファーブル昆虫記的な視点で、お話しを進めて参りたいと思います。



これは、今年の6月下旬の頃。
ある日、農地と森林が隣接するエリアを散策していた時の事。

不意に、道路脇の一角が気になり目をやると、興味深い現象を目撃する。


それは、以下の画像にある、ほんの小さな「湧水の流れ込み」と、そこから流れ落ちる「側溝」より。

イメージ 1

イメージ 2


ハッキリ言えば「ドブ」と表現しうる周囲から、しきりに「ブンブン」と大量の羽音が舞っている事に気付く。


最初はハエが集っているのかと思ったのだが、近付いて良く見れば、全てミツバチでは無いか。


恐らく、身体のサイズから見てニホンミツバチであろう種類である。
(※追記と訂正:改めて調べ直してみた所、実際はセイヨウミツバチの模様です。失礼致しました。もし同定出来る方がいらっしゃいましたら、コメント頂けると有り難いです)

しかも、その数が尋常では無く、この近辺に巣やコロニーがあるに疑い無い個体数である。

そして、その「湧水の流れ込み」よりも、何故か「側溝」の中でしきりに水を飲んでいる様子が伺える。

イメージ 3



兎に角、夢中で水を吸っており、幾ら近付いても襲ってくる気配など無い。

イメージ 5



そりゃもう、隙間に顔を突っ込む程である。

イメージ 4



後々知った事だが、どうやらミツバチは夏場になると、身体や巣を冷やしたり、幼虫に与える為に積極的に水を飲むのだそうだ。

その点からしてこの時も、こうして水場に集まり、必要な水分を集めていたのだろう。
詳しい事についてはググって欲しい。


しかし、そんな事より個人的に気になったのは、その行動の「範囲」と「様式」についてである。


もう一度、以下の画像を良く見てみよう。

イメージ 6


この湧水による「流れ込み」は、地面の割れ目より滲み出ており、画像の立ち位置から4m程先の側溝へと流れ落ちている。

この「流れ込み」にもハチは多少いるのだが、ほとんど居ないに等しい状態。


だが、その先にある側溝の丁度、湧水が流れ落ちた位置。
しかも、その約1~2m半径の一部にだけ、異様な数が集中しているのだ。

イメージ 7



この近辺なら水田に小川など、他に水場となりそうな場所は幾らでもある。
それこそ、もっと水質が良くて外敵の居ない水場だってあろうはずだが、何故ここにだけ集中しているのか。

ちなみに、この流れ込みと側溝の周辺には、普通の雑木林と農園(確か、栗や梅の果樹園とか野菜畑)がある。
また、側溝を辿った上流側約50m先には、老人介護施設があり、それ以外は全くと言って良いほど何も無い。

あくまで緑豊かな地域の、「一般道の脇」としか言い様が無い場所である。


「インフラ」的な観点から見れば、ここが都市部の一角である以上、介護施設の排水は下水道を通るはず。
見た限りでは基本的に、湧水と雨水が流れているだけと見られ、極端に水質が悪い訳では無い様だが、お世辞にも…。

何だって、こんな場所で。
と言うのが正直な所である。


この現象をズバリ一言で表してしまうとすれば、「ドブとミツバチ」。

「花と蜜蜂」では無く、読んで字の如く「掃き溜めに鶴」的な意味にはなりそうだ。


それはさて置き。


これらの行動で考えられる仮説としては、以下になるだろうか。



(1)群れの中で、たまたま最初にこの場所に飛来した個体と同じ行動をとっているだけ。

つまり、単なる「集団心理」みたいな状態。
ミツバチが集団生活を営んでいるだけに、巣を作る時と同じく、取り敢えず皆がいる所に居れば安全かな、程度の話。


(2)この場所だけ、ミツバチを惹き付ける特殊な「要素」がある。

例えば、何か特定の「栄養素(酵素)」や「匂い」が、この場所、あるいは「苔」や「藻」から出ている。
この過集中や密度を見るに、ある程度は理にかなっている気はする。

ただし、同じ環境の側溝が100メートル程は続いているので、やはり特に意味が無く集まっている可能性もある。


(3)実は(2)との合わせ技で、流れ込みと側溝の「合流点」でのみ、ハチを誘引する何かしらの要因が化学反応するなどで「発生」している。

例えば、海の「潮目」の様に。



それで仮にもし、この行動を仮説(2)か(3)とした場合。

彼らを良く見ると、それらしい動きがある様にも思える。

観察している内に気付いたのだが、この水場にはどうやら2~3つの異なる性質を持った個体が、それぞれ混在している様なのだ。


その性質とは、以下の通りである。



(1)水際の、または水面の「藻」の表面に定位している個体。

イメージ 8


彼らは、主に藻の上で水を摂取している。
その殆どが飲む事に集中したまま、一向にその場から離れようとしない。


(1)側溝の壁面と水際に生えている、「コケ」に定位している個体。

イメージ 9


彼らは、一心不乱にコケの間に頭を突っ込んでいたりする。
その様子は、花粉を集める行動にも似ているのだが、数としては少数派な印象。
個体の比率としては、概ね(1)を中心に(2)が混在している様だ。

ただし、藻とコケの境界線が判りにくいので、実際はどちらでも無い可能性はある。


(3)(1)と(2)どちらでもなく、特に定位置が無い個体。

彼らは、流れ込みや側溝の適当な場所で軽く水を吸っては、また適当に飛び回っている感じ。
ただ、行動半径は(1)(2)とほぼ同じで、やはり一定の範囲の中だけで飛んでいるらしい。

一応、個体数としては(1)+(2)、そして(3)で、一対一の比率に見えた。


この様な具合である。



上記した、水を「飲む」個体と「飲まない」個体の違いは判然としないが、仕事で言う「交代制」や「役割り分担」の違いは有りうる。

仮に、全ての個体が体温調整をする必要があるのだとすれば、大半が飲むのに集中していてもおかしくない。
しかし、そうでは無いなら、個体ごとの「理由」があるはずだ。


例えば、水を飲む個体は「巣や幼虫への供給専門」であったり、飛ぶ個体は「警戒」や「偵察」と言った具合に。

あるいは、単に「美味い」から飲んでるだけの個体も居そうだ。


つまり、傍目には同じミツバチであろうと、個体により「個性」が別れていて、それによって行動様式にも違いがある。
その行動一つでさえも、実は複雑な要因が関係している可能性がある。

と言う事になるのだろう。



そう考えるに、こうして集団で一ヶ所に集まる以上、彼ら的には必然性があっての事なのは確かだ。

果たして、この行動や違いの意味する所は何なのか。
そして、あの場所に何があるのか。

実際は無作為な選択では無く、本当は何か重要な意味がある様に思えてならない。


その点からして案外、この場の学術的な調査をすると、何か興味深い結果が示されたりして。
まぁ、示され無いかも知れないけども(どっちだ)。


とまぁ少なくとも、僕の目にはそう見えたので御座います。



次回は、この現象から見える仮説について、もう少し踏み込んでみたいと思います。



では、また、CUL。