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食べ蒔き三期生ダイジェスト 10月中旬~下旬・メロンの収穫&トマトの先祖返りに物思う秋

前回の10上旬では、台風接近後の急激な気温低下により一気に作物の劣化が進んだ。
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以降は日増しに寒さが強くなり、まるで夜間などは冬の様でもある。
それでも、まだ日中は暖かな秋晴れの日が多く、もう少し頑張れそうな雰囲気も残されていた。



そんな昼夜の気温差が激しい中、この中旬になって先ずはメロンを収穫。
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10月上旬の時点で、既に寒風だとかウドン粉病などの影響で枝葉の枯れが進行していたけど、この中旬に入るあたりから株全体が枯れた姿に。
ゴーヤのヤグラにブラ下がる形で、果実だけが残されていたのだった。



して、サイズ的には大きなグレープフルーツくらい。
まぁ、食べ蒔きにありがちな矮小っぷりである。
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そのルックスは2018年の一期生で収穫されたものとクリソツで、文字通りウリ二つ。
恐らくは同系統の性質が発現したものと思われる。
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ケツをよく観察すると、マクワウリっぽいスジ模様が出ている。
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しかし、毎度思うが、実生では「採種した元の品種」が再現されないし、これが先祖返りした姿なのだとして、一体何と言う品種が元ネタなんだろう。
そして、その先祖も育てたら更に先祖返りするのか。
あるいは固定された品種だとして、どんな味なのか。
色々と疑問は尽きない。



今回で惜しい点があるとすれば、コレが結実してから株の枯れが始まった様子で、そのせいで果実の生育もストップしてしまったらしい事。
これがもっと元気の良い個体であれば、もう少し増大化した可能性は無きにしもあらずだ。


それは以下が良い例で、今期は大半において未熟果を残したまま株が枯れたパターンが多く、成熟させきる所まで持たせられなかった点には課題が残る。
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ま、そうは言っても、この不作にあっては出来ただけマシと言えなくもなく、贅沢は言いっこ無しでしょうかね。



これで問題は味がどうなるかだが…過去の成績から言えば全くもって期待出来ないのが正直なところ。
それはかつて一期生にて収穫されたメロンのほぼ全てにおいて、「カタい」「味薄い」といったネガティブな部分が強く出ていた点でも容易に想像がつく。(※詳細は上記リンクを参照)


でも、良いんです。


当プロジェクトでは「それでも出来た」と言う事実が大事なのであって、味は二の次。
勿論、美味しい方が嬉しいに決まっているが、これら一連の記事を通して「栽培可能である」事が証明されれば、他の作物などでも応用が効くかも知れない。

それらの中から、いずれ僅かでもイケてる例が出ればOKなのであります。



ちなみにこの10月中旬~下旬までの間に、一気に全てのメロンが枯れ果て、僅かに残った未熟果の残骸(たぶん上で例示したやつの数日後だと思う)が地表に残される事となる。
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それらもあっと言う間に虫に食われ尽くし、今はこうして皮だけ残っているが、匂いだけは濃厚なメロン臭を放っているのが印象的。


その外見上では普通のネットメロン的な網目模様が出ており、やはり一期生でも似た模様のネットメロン的な果実が幾つか完成していた事が思い出される。
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これまでの観測結果で言うと、いわゆるネットメロンのタネを育てると、冒頭の「白いマクワ」っぽい果実と「網目模様」の二種類に分離するらしい様子が確認されている。

それはつまり、遡ればこの二種類が両親と言う事になるんだろうけど、やはり本当の元々の姿がどんなんで、それぞれの味に何の違いがあると言うのか。
それを掛け合せる事で、市場に出回る様な綺麗かつ甘いネットメロンになるのだから不思議で仕方ない。



とまぁ、そのルーツに迫る謎を残しつつも、今期のメロンは終了を迎える事に。

いずれも9月までは復活に期待がかかったが、さすがに気候的な寒さには敵わず。
2019年の二期生から引き続いて不作であった事に関しても様々な要因や憶測が考えられたが、それでも収穫まで持っていけただけ上出来か。

何にせよ、ここまでお疲れ様でした。



さて、10月も下旬に入ると、メロン以外の作物も日毎に消耗の度合いが加速して行く事になる。


ヤグラの「ゴーヤ三世」も青い枝葉が無くなりつつあり、全体的に薄茶色を帯びている。
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特に根元あたりから枯れが進行していて、いずれ先端部に到達するのも時間の問題。
三期生筆頭である彼等にも限界が近づいていた。



そんな中でも、先端部よりの部位は青味を残しており、まだ新芽が伸びたり、雌花が着果していたりする。
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またこの間、まだまだ開花も続いている点からして、ゴーヤの生命力は思った以上に強い事が分かる。
それは他の作物が軒並み枯れこんだのと比べるに、違いは明らかだ。
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無論、こうして細かく結実はしていても、もはや気温低下による衰弱は避けられないし、収穫ラインに達する事も無いだろう。
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しかし逆に言えば、生育限界を超えそうな環境下でも子孫を残そうとするあたりで、その生存能力の高さが伺える。



それと比べて、このカボチャは前回から引き続きウドン粉病に冒されたまま。
今でも開花はすれど、もはやウリバエのエサ状態。
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しかも、コレは今期のカボチャでは一番成長率の高い個体であったし、9月までは雌花が着果していた様子もあったのに、結局は何も出来ずじまい。

ゴーヤと同じウリ科であるにも関わらず、こうした基礎的な体力であるとか、ひいては子孫を残す能力には大きな差がある事が解るのだった。



そんな状況下でも、意外な健闘っぷりなのがトマトである。
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幾つかの株で、いわゆるミニトマト的なサイズの果実が結実。
一つの果房につき纏まった数量が形成されているし、開花も続いている。



もっとも、全てが及第点とは行かず、極度に矮小化した果実も多い。
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トマトに関しては、もともと今期の序盤は成長率が低かったし、最初から期待していなかった部分もあるので、やはり出来ただけラッキーみたいな話ではある。



今後については、これから更に気温低下が進む事を鑑みれば、赤く成熟するまで落果せずに持ちこたえられるかが最大の焦点になる。
何せ、昨年度の二期生では収穫まであと一歩の所で、寒さに耐えきれず大半の果実がポロリして終了となっていたので、今期も起こらないとは限らない。

この果実の成熟については「積算温度」と言うのが重要な様で、メロンやスイカを例にすると受粉(結実)してから計約1000℃に達した頃合いが収穫の目安とされており、恐らくは同じ夏野菜であるトマトも似た条件が適応されるものと考えられる。

要するに、日中の日差しが長く暖かければ成熟の基準値に達するスピードも早くなるが、曇天かつ気温が低ければ相応に遅くなる。
然るに、如何にして今ある果実へ「温度をチャージ」しきれるかで、今後の経過が決まると言う訳なのだ。



ちなみに、今回のトマトは「ミニトマト的」と言う風に述べているが、本来に撒いたタネは全て「大玉」ないし「中玉」にあたる、いわゆる普通のトマトである。
それなのに、今期は普通のトマトに該当する株は一本しか生えて来ず、他は全てミニトマトとして発生したのだ。


実は、この現象は一期生と二期生でも同様に発生していた。
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簡単に言えば、「ミニトマトが交配されている普通のトマト」のタネから実生で育てると、今回の様に「親」となった品種の特徴が発現する事があるんだとか。
つまり、仮に採種した時のものが大玉・中玉トマトであっても、ミニトマトに先祖返りしてしまう場合があるんですねぇ。



この先祖返りが、一体どの様な条件で起こるのかは今だよく分からない。
ただ、有り体に言えば、このミニトマト的な方が病害虫に強い性質をしているなど、いわば生存率の高さや「効率的に子孫を残す上で有利」だからこそ発現したと考えられそうではある。


実際、当プロジェクトでは現在に至るまで、大玉・中玉に該当するトマトが発生する確率は低く、殆どがミニトマトとして生えていたし、収穫から賞味までの成功例もミニトマトが中心である。
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これに対し、大玉・中玉サイズが発生し果実が赤く成熟したとしても、途中で野生鳥獣などに横取りされたり、あるいは病気に見舞われたりなどで、今まで収穫出来た試しがなかった。
むしろ、それらは果実のサイズが大きい割りに結実する数が少なく、しかも外敵に狙われやすいが故に、生存確率が低い様子でもあった位である。


その意味では、もしかすると多分、小粒な果実が沢山出来て、尚且つシーズンを通じて結実が続くミニトマトの様な特性の方が、タネを沢山生成するぶんだけ子孫を残しやすいのではないか?

これこそが、ミニトマト寄りに先祖返りする最大の理由なのではないかとも思えてならない。



そんな、各々の作物に関する生命力の違いや生存戦略などに想いを馳せつつ、そろそろ今期も終盤戦。

これから一体どんな動きがあるのか、それとも無いのか、最後まで観察を続けて行きます。




では、また、CUL。