CULrides カルライズ

発見と探究そして文化。そんな諸々の話。

食べ蒔き二期生レポート 12月中旬・病変予防と先祖返り

前回までの番外編を挟みつつ、11月中旬のレポートから間を置くこと約1ヶ月。
culrides.hatenablog.com



この間に季節は冬へと突入し、寒さが身に染みる日々が続く。



そろそろ本格的に終了を迎えそうな二期生であるが、あれから一体どうなっているのか。
その様子を記して参りましょう。


では、いざ。


🌑12月中旬・病変予防と先祖返り🌑

さて、11月から打って変わって、12月に突入するなり気温が急低下。
一気に冬の様相へと相成る。


当の二期生はと言えば、11月下旬までは大きな変化が無く、それまでと同じ様な生育状態を維持していた。

しかし、この12月上旬~中旬に本格的な寒気が流れ込んでからは、急に様々な症状が顕れ始める。



コチラは今期もっとも成長率が高かった「直播きトマト」であるが、前回の11月中旬と比べ、だいぶ消耗して来た。
f:id:culrides:20191224150220j:plain

その前回までは青々としていた枝葉も、12月上旬~中旬にかけて一気に枯れが進んで落葉。
幹が丸ハダカになり、色味も鈍く変色している。
現状で生育を維持している部分があるとすれば、ほぼ先端部の周辺のみ。



果房に果実は残されていているものの、実際は12月上旬から急激に落果を始め、現状までに半数ほどが失われた状態。
11月下旬までは順調そうに実っていたが、日ごと増す寒さには耐えられなかったか。
f:id:culrides:20191224150255j:plain


この落果については昨年度と全く同じ症状なので予想していた部分ではあれど、やはりもう一歩のところで成熟しきらなかった点には悔いが残る。
f:id:culrides:20191224150317j:plain


トマトは夏と晩秋での二期作が可能とは言え、日本の冬は一日中寒い日が暫くの期間続く。
その意味では、一年を通して温暖な国と比べるに、生育条件としてはシビアな方と言えよう。

故に、ビニールハウスでの栽培が中心でもある訳だが、こと露地栽培では、この年度末まで如何に外気温を高く維持出来る環境下に置けるのかが、非常に難しい部分。

これさえ解決出来れば、家庭菜園でも一気に収量を上げられるのだがなぁ。



そんな最中、この12月中旬に入るあたりで、葉の表面に黒いブチ模様が発生。
f:id:culrides:20191224150420j:plain

この症状が一体何なのか調べてみると、とりあえず葉カビ病、斑点病、すすかび病などなど様々な病状に纏わる解説が出るわ出るわ。


しかし、いずれも症例が多岐にわたり過ぎて、どれも有るような無いような、イマイチ特定には至らない。
実際、同じ様にトマトを自家栽培している方々でもハッキリとは判らず、こういった緒症状が出る度に分析して仮説立てたりと、アレコレ調べまくっている様子が伺えた。


その症例の数々を見るに、人間との付き合いも長く、世界各地で品種改良が行われていたせいか、これまでに膨大な種類の病害虫とイタチゴッコを繰り広げていたであろう姿が偲ばれる。



そんな中で、最も有力視されたのが「低温障害」。

つまり、寒くなり過ぎて体調を崩し、何かしら合併症を引き起こしている説である。



確かに、この12月に入り夜間気温が5℃あたりを指す頃合いから落果が始まり、それ以降に変色が発生している。

よくよく考えれば、昨年度の同時期にも似たような症状が出ていたし、これがもし病変ならば今期の早い段階から発症していたはず。
それでいて現在まで普通に生育しているのだから、感染症などの線は低いものとなろう。
culrides.hatenablog.com


結局、「寒い」と言う時点で体力的にも厳しい訳で、そりゃ人間だって病気じゃなくても霜焼けや、あかぎれ等の症状が体表に出るもの。
そう思えば、あまり心配するほどの事でも無いのかも知れない。



ところで最近になり気付いたのだけど、今期は現段階に至るまで「ウドン粉病」が全く発生していない。

昨年度は夏以降、繰り返し症状に見舞われていて、事ある毎に患部を剪定しながら対処していたが、今年は終ぞ発症する事は無かった。
culrides.hatenablog.com

culrides.hatenablog.com


この要因が何故かについて、今年のタネに耐性があったのか、それとも土壌が改善されたからなのかは判然としない。


ただ、強いて要因を挙げるとすれば当プロジェクトを開始して以降、継続して腐葉土(乾燥した雑草・落ち葉・堆肥化されたオガクズ含む)などの投入を続け、それにプラスしてミミズやダンゴムシの生息数が増えた事により、土壌のpH値(酸性度)や微生物達の分布が変化した可能性は有り得る。

つまり、有機物と共に「それを分解する生物」が多様化した事で環境(土壌)の循環が進み、やがて病因となるウィルスやカビ菌なども纏めて分解・消化されたのではないかと考えられるのだ。


もっとも、上記は仮説であり学術的に検査した訳では無いのでハッキリとは判らないが、少なくともウドン粉病が出にくい環境になっていた事だけは確かな様である。

病変の予防法として「有機物+微生物」のコンボ、やんわりオススメします。



さて一応、他の「貧弱な株」達も辛うじて生存しているのだが、こちらは更に体力の限界を感じさせる様相。


これは初期にポットで育苗していたものの、定植後はサッパリ成長してくれなかった個体。
f:id:culrides:20191224150626j:plain

もはや、このヒョロ小さな体で生えているのが奇跡と言えなくもないが、何故か先端部などは部分的に青みを残しているのが不思議。


その先端部に、謎の尺取虫を発見。
f:id:culrides:20191224150640j:plain

まぁ、もはや生育も収穫も望めない以上は放置しておこう。
こんな寒い中だし、ゆっくりして行きなよって感じ。



「脇芽のクローン株」も何とか生存しているものの、こちらも定植以降は殆ど成長せず、収穫には至らなかった。
f:id:culrides:20191224150657j:plain

然り気無く蕾が残されていてはいるが、その発達状態は良くなく、残念ながら開花や結実に至る事は無いだろう。
生育不順が続いた中、せめてもの悪足掻きとばかりに株分けしたが、結局は焼け石に水だったかな。



そんな中で、何故か先の「直播きトマト」の脇芽だけ妙に青々としていて、しかもコチラの蕾は開花までしているのが印象的。
親株の方は既に開花が停止しているのに、どういう事なのだろう。
f:id:culrides:20191224150721j:plain


他の株も、やはり主枝は枯れているのに若い脇芽だけ生えている箇所がチラホラ。
f:id:culrides:20191224150736j:plain


まさかここから成長するとは思えないが、生えているからには何かしら意味があるのかも知れない。
f:id:culrides:20191224150749j:plain


でもって、これも今さら気付いたのだけど、今期に撒いたトマトは全て「大玉種」から採種したタネより発芽している。
それなのに、結実した果実は全て「ミニトマト」のサイズ感となっていた。

そう、ミニトマトを採種した覚えも植えた記憶も無いのに、「ミニトマト化」しているのだ。


これは昨年度にも全く同じ現象が起きていたが、どうやら大玉種の親世代にミニトマトが交配されている場合、その次世代は先祖返りを起こしてしまう様なのである。
culrides.hatenablog.com

culrides.hatenablog.com


この現象は恐らく、ミニトマトの方が性質的に優勢であり生育にも有利だからこそ、先祖返りした時に発現しやすくなるのだと考えられる。

また、昨年度では大玉とミニトマトの二種類に分かれて発現していたので、土壌の成分による微妙な違いや、タネが元々持つ性質などが複合的に絡む事で、「どちらになるかのスイッチ」が決められて来るのかも知れない。



まったくもって生命の神秘であるが、この「どちらになるかのスイッチ」がコントロール出来ない所が、食べ蒔きにおけるデメリットとは言える。

いや、もしかすると本当は方法があるけど、誰も知らないだけなのかも。



さて、最後に恒例のゴーヤの様子なども。


既に前回や前々回を通して終了が確認されているが、それでも抜き取らず観察を続けていた。
f:id:culrides:20191224150812j:plain


しかしながら当然の如く、現時点までに全体の90%ほどがパリパリに枯れていて、辛うじて主枝の一部と根回りだけ水分と青みを残す程度。
f:id:culrides:20191224150905j:plain

ハッキリ言えば、実質的な生命活動は終わりを迎えている。



前回11月中旬までは青々としていた最後の果実も、12月に入ってから日に日に萎れて行き、1ヶ月が経つ頃にはカピカピのドライゴーヤに。
f:id:culrides:20191224151001j:plain


この機会なので、試しに中身を確認してみよう。



既にパキパキに乾いていた事もあり、スコップで叩き割るとバラバラに砕けた。
f:id:culrides:20191224151015j:plain

で、画像上段が殻(果肉)で、下段がタネの部分。


あれだけ小さい果実でありながら、ちゃんとタネが幾つか入っており、いずれもスイカのタネ位のサイズながら「形」にもなっている。

次に生えそうなクオリティとは言い難いが、本来なら「成長率の高い果実」であっただろう様子が伺える。



とまぁ、ご覧の通り既に終了していながら何故いまだ残しているのかと言うと、このまま「根」を残しておき、来年度に再生するか実験してみようと思ったからである。


無論、ハッキリ言って無理無駄無謀な話ではあるだろう。

ただ、昨年度の観察では、今時期まで根は瑞々しさを保ち、確かな生命感が残されていた。
と言う事は、実際は「生きてる」可能性が高いと言う事でもある。

また、このゴーヤは「多年草」の性質を持っている様で、原産国や南国では一年中生育しているとの話もある。
となれば、環境次第で再生するし生育期間を延ばす事も不可能ではないはずだ。


もっとも、これから寒さが本格化する事を思えば希望的な観測に過ぎないし、まして野外では生命活動が低下ないし停止するのは避けられないだろう。

今期に関しても、まだ根回りに青味を残しているとは言え、前回と比較して随分と水分が抜けてきた感触であり、いずれ根まで到達するのも時間の問題。
その他、根を残した事で要らぬ病気を招くリスクだって残る。


ただ、もし、仮にゴーヤが原種に近い姿をした作物で、なおかつ雑草並みの性質を残しているのだとして。

その雑草が冬に枯れても春には復活する様に、ゴーヤもまた復活する様に思えたのだ。



これが如何なる結果となるかは全くの未知数だし期待も一切持てないが、何にしたって試さない事には分からないはず。

今後も出来る限り管理を継続しつつ、もし何か変化があれば続報をお伝え出来ればと思っております。




さて、はてなブログに移転してから、何だかんだと更新して参りましたが如何だったでしょうか。


これにて本年度は最終更新と致します。

ご覧下さいまして、誠に有り難う御座いました。


皆様、よいお年を。



では、また、CUL。