当プロジェクトの仕上げとして、これまでに栽培していた作物についての所見について語るシリーズ。
たった一年弱の間に起きた出来事とは言え、振り返れば結構色々あったのだなぁと、一連の記事を書きながら思い巡らす昨今です。
そんな今回は、スイカのフィードバックを記して参りましょう。
🌑食べ蒔きトマトのフィードバック🌑
🌑食べ蒔きカボチャのフィードバック🌑
🌑食べ蒔きメロンのフィードバック🌑
🌑スイカ🌑
先に結論から述べると、食べ蒔きでスイカを育てるのは「可能」。
結果的にトラブルなどの影響で収量は2個に止まるが、食味としては良好な仕上りを実現。
ルックスとサイズはどうあれ、美味しく楽しむ事が出来たのでありました。
🌑メロンとスイカのレビュー🌑
さて、実際の栽培にあたっては、やはりタネ選びが先決。
タネの選定基準としては、「大粒で肉厚があり、中身がミッチリ詰まった、黒々と艶やかなタネ」がベター。
更に言えば、乾燥させても凹んだり変色しないタネが理想的。
逆に、色が白っぽかったり肉厚が薄いタネでは、発芽率が低い傾向にあったので、除外するのが無難。
これについては、外見上で容易に見分けがつくはずです。
当プロジェクトでは前者を「イケてるタネ」と呼称していますが、採種する場合も当然、この「イケてるタネを持ってる品種」を探し当てる作業が必要。
これに関しては正直、手当り次第に探して一番良さげな品種に目星を付ける位しか無さそうだけど、強いて見分けるポイントがあるとすれば、これら「黒々としたタネがビッシリ入った品種」を基準にすれば、より発見率が高まるかと思います。
🌑発芽行程 スイカ・カボチャ・ゴーヤ編🌑
発芽については春蒔きの場合、当然の如く保温が必須。
その温度管理は他のウリ科と比べてシビアな様子で、低すぎると発芽しない様子でした。
従って、タネを植えたポット(当プロジェクトでは卵パック)はホットキャップやビニール立てでキッチリ温める事になるのですが、これは晴れた日中の気温を取り込み、一気に温度を高めてキープする事で成功に至っています。
1つ注意点としては、発芽から苗の時期までは弱々しく、カボチャやメロンより成長が著しく遅い場合がある事。
それは一見すれば僅かな変化に留まるシーンが多く、些か心配になる程でもあります。
故に、定植適期までの苗は夜風で弱らない様に保温を継続し、定期的に栄養剤入りの水を与えるなどで管理しながら、焦らず生命維持を優先すべきかと思います。
勿論、必要以上に温室内が高温化しそうな晴れた日は、ビニールを開放するなどでマメに微調整しておき、温め過ぎによる枯れにも注意してあげましょう。
🌑定植🌑
🌑 7月上旬~中旬の様子🌑
やがて外気温が高くなり夏の天気が顔を出す頃に定植するのですが、今回は梅雨に入る直前で実施。
概ね、梅雨明け後からは気温の上昇と共に、一気に急成長してくれていました。
この定植に際しては前回のメロンと同じく、生育に必要な「環境的条件」を揃える事が前提となるが、その条件さえ合っていれば生育自体は特別に難しい点は見当たらず。
何しろ、開花まで行けば自然交配してくれたし、基本的には殆ど放置プレイで収穫に成功しています。
当プロジェクトでは、メロンと全く同じ環境の中で一緒くたに育てていたので正確性には乏しいのですが、基本的に同じ感覚で育てられると考えて良さそうな印象でした。
🌑土作り🌑
その一方、結実して以降の懸念事項としては、冒頭で触れた果実のトラブル。
当プロジェクトで起きた事例としては、裂果による割れと、病気による腐敗となります。
🌑8月上旬~中旬頃の様子と初収穫🌑
上記記事の症状により2個ほどの果実を失う事となったが、その発生源を大まかに述べると以下の様な違いが見られました。
・裂果は、晴天から大雨になった時などで急激な水量が実に流入するのが原因。
・病気は、雨で弾き飛ばされた土壌の病原菌が果実に付着してしまうのが原因。
と、原因を突き止めはしたものの、今の所この二つとも完全に防ぐ手立てが無いのが実情。
何れも天候を読むのが難しかったり、仕事などで世話をする都合が合わないなど、運に左右される部分があったりするので完全な防御は難しい様にも思えます。
強いて対策を挙げるなら、裂果に対しては雨の予報が出た時点で早めに収穫する方法。
病原菌には、柵を使った「空中栽培」が考えられるだろうか。
当プロジェクトでは「お立ち台」に乗せていたものの、雨の「弾き返し」までは防げなかったので、やはり完全とは言い難い。
この他にもカメムシなどの害虫に噛られるリスクがあるのだが、これらは自然相手の露地栽培と言う事で、ある程度は妥協せざるを得ない部分なのかも知れません。
従って、効果的とされる対策案を幾つか複合化させて、最もベストな一手を探りつつ見守るのが最善となるかと思います。
🌑肥料と薬剤🌑
🌑果実のお立ち台🌑
そんな中で一番のデメリットを挙げるとすれば、やはり「果実が極度に小さくなる」点になります。
前回のメロンでは姿形より「味」に課題が残ったが、スイカは「サイズ」がハードルとなるのです。
実際、今回の当プロジェクトで蒔いた元々のタネは、全て「大玉種」。
しかし、結果的に収穫された果実は、一気に「ソフトボール大」へと縮小されたサイズのみ。
これと同様に、その株自体も通常の品種と比べて全長が短くコンパクトに収まっている印象でした。
また、それぞれの株に一個づつしか結実していなかった事から、通常の品種より体力的な限界値も低かったであろう点は否めません。
つまり、総合的な意味で、食べ蒔き(実生)では元々のサイズ感は再現出来なかったのです。
その意味では、確かに「食べ蒔き=まともに育たない」との定説を裏付ける結果となり、中でも最も顕著に表れた例がスイカと言う事になります。
🌑7月下旬~8月上旬の様子🌑
🌑8月中旬~下旬頃の様子🌑
🌑8月下旬の様子🌑
となると、もし食べ蒔きでスイカを栽培するのであれば、一株につき一個の結実に留めておく方が安パイと言う事になるはず。
特に、株が小さく貧弱な場合は、適芯も無しにして子ヅルや孫ヅルは設定せず、生命力の強い親ヅルだけで生育させた方が、成熟にも有利になると考えられます。
一応、これらの手法でも果実は美味しくなっていたので、メロンほど味の差は出ない様に思われます。
あるいは、スペースに余裕があれば親ヅル株と子ヅル(孫ヅル)株を幾つか用意して、生育状態を比較するのもアリでしょう。
ちなみに、収穫適期についてはセオリー通り、「果実に一番近いツル(ヒゲ)が枯れた頃合い」を目安にして問題ありませんでした。
むしろ、あまり長く置くと熟し過ぎて果肉が柔らかくなってしまい、シャリシャリとした食感が損なわれる率が高まる印象。
また、この収穫適期の判断材料としては、結実からの「合計日数」や「積算温度」などを目安とするのが一般的なのですが、これは天候によるズレも大きいので、プライベートな家庭菜園では殊更に厳格化しなくても大丈夫かと思います。
何にせよ、成熟期が近づいたらツル(ヒゲ)の変化に注視しておき、ベストタイミングを逃さず収穫するのが吉となるでしょう。
この熟成期間に対する扱いがメロンと大きく違う所です。
所で、この果実の矮小化については、いまだハッキリとした理由が不明のまま。
だが、同じ場所で育てていたメロンは、サイズ的に元々の品種と遜色無いきさに成長してくれていました。
それに対してスイカが小さくなると言う事は、タネの性質そのものに原因を求めるのが自然なはずです。
個人的には、タネが「先祖返り」する過程で起きた「変異」が影響していると考えているのだが、この変異とはズバリ「劣化」を指しています。
こういった食べ蒔きのタネで育った果実が先祖返りしたり、あるいは矮小化したり変形したりするなどの現象については、全てひっくるめて「遺伝子のリセットスイッチ」と表現して来ました。
そして、このリセットスイッチなる現象は、元々の品種とは違ったルックスと性質の果実を収穫し続ける中で確信を深めるに至ります。
これは過去の記事でも仮説として記している通りであります。
🌑メロンとスイカのレビュー 第2弾🌑
🌑11月上旬~中旬の様子🌑
つまる所、今回の矮小化も劣化の一種と言う事になるが、少なくとも現段階で言えるのは、何か理由があって「あえて劣化せざるを得なかった」のでは無いかと考えています。
そう、まさしく必然的に、起こるべくして起きる「自然現象」なのです。
何故この様な現象が起きるかの詳細については長くなりすぎるので、いずれ別の機会に披露してみたいと思っております。
中途半端な所で区切ってすみません…。
ただ、ここまで矮小化や劣化などネガティブな部分について触れてはいますが、それと対照的にポジティブな面としては、ウドン粉病やウリバエの被害を殆ど受けなかった事。
正確には、栽培後期にはウリバエの餌食にはなっているのですが、それまでの生育中は全く寄り付かず、またカボチャやメロンと違って根にまで幼虫は寄生していなかったりと、免疫力の強さを感じるシーンが度々。
しかも、一度収穫後に枯れたと思いきや再び新芽が幾つも生えてきた所からすると、元々は生命力の強い植物なのでしょう。
🌑ウリバエの防除に関する仮説3・作物の生命力よ、再び。~愛を取り戻せ~🌑
その意味では、もしかすると更に温暖な環境やビニールハウスなどであれば、再び結実する段階まで生育を維持出来ていた可能性も有り得ます。
まぁ、それで「スイカの二期作」が成功するかは謎ですが、少なくとも工夫次第で寿命を延ばせる事は間違いなさそうな様子でした。
🌑9月中旬の様子後編 メロンの収穫ファイナル🌑
🌑10月上旬の様子とゴーヤの収穫🌑
そんな訳で、食べ蒔きでのスイカ栽培における要点を纏めるとすれば、以下の様な具合いとなります。
・イケてるタネの品種を探し当てて、良さげなタネをキープしておこう。
・タネから苗の頃は温度管理に注意し、外気温が高くなるまで保温と栄養補給に努めよう。
・定植は環境的条件を整えてから、概ねメロンに準ずる形で育ててあげよう。
・適芯するか否かの判断は苗の生命力次第だが、安パイをとるなら親ヅルに一個だけ結実させた方が成功率が高まるはず。
・収穫適期を逃さない様、結実してからの日数や積算温度を大体で把握しておき、最終的にツルの状態を見て判断しよう。
・果実は裂果や病気に見舞われる可能性があるので、結実後の管理には注意しよう。
以上となりますが、何にしろ、当プロジェクトの記述が全ての答えではありません。
今回は矮小化していても、例えば栽培方法に工夫を加えれば本当は大きくなるかも知れませんし、その過程で更なる突然変異を遂げたりと、いつかブレイクスルーする可能性の余地が残されています。
食べ蒔きだからダメとは決め付けず、諦めず最後まで試行錯誤を重ねてみるのもアリではないかと思います。
では、また、CUL。