さて、前回までに一段落を迎えた食べ蒔き二期生ですが、その栽培中、とある重大な事実に思い至る出来事がありました。
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その事実とは、上記リンクで記している「一期生にて幾度も見舞われたウドン粉病が、二期生では全く発生しなかった」件について。
この要因として、大量に増えたダンゴムシやワラジムシ、そしてミミズ等の生物多様性が深く関係しているのでは無いのか。
それを証明するであろう事例と共に、ここに土壌改善する為の重要なヒントが隠されている可能性が浮上したのです。
当然ながら、土壌の健全化に微生物が重要な役割りを果たしている事など遥か昔から知られている話であり、まったくもって新しい発見では無い。
しかし、この記事における要点としては、「微生物の力によって何故、どうして、どうやって健全化されて行くのか?」について、当プロジェクトでの体験を元に、そのメカニズム的な部分を解説して行こうかなと。
その因果関係を解き進めるにつれ、現在では常識とされる言説を覆す様な構図が浮かび上がったりで、これまた結構なボリュームに。
なにぶん長いのですが、ここはひとつ最後まで読み進めて下さると幸いで御座います。
では、その構図とは一体何なのか?
これより前後編に分けつつ、順を追って説明して参りましょう。
🌑ダンゴムシやワラジムシは害虫にあらず🌑
先ず結論から述べてしまうに、要点は以下である。
・現在、菜園にとってダンゴムシやワラジムシ等は作物を噛る害虫として駆除対象になりがちであるが、その認識には誤解を含んでおり、実際は「益虫」の側面がある。
・彼らは本質的に「環境の循環」と言う重要な役割りを担っているだけの話であり、むしろ居なくなってしまった場合、それらの流れが滞り環境が悪化してしまう。
・同じくミミズも単に土を食べているだけでは無く、その撹拌作用によって栄養分が偏ったりせずに済むほか、「土壌のリセット効果」により連作障害なども防げる可能性がある。
・それら生物の働きにより、即ち土壌から発生する様々な「病原体の元をも食べている」からこそ、環境のバランスが健全に保たれている。
と言う事なのである。
こう言うと当然、「いや作物が噛られるのは嫌に決まってるだろ」であるとか、「駆除しないまま大繁殖してはニッチもサッチも行かなくなる」などと言ったツッコミが入るのは間違いなく、その気持ちも大いに理解出来るところ。
また、逆に虫が病原菌を運んで来る場合もあり、まるっきり「無害」などとは言い難く、相応のリスクが存在するのも事実。
それらを放置していては、結果的に住み着かれたり寄生されてしまう場面も往々にして起きる。
そりゃ手塩にかけ育てた野菜や観葉植物が噛られてしまっては誰だって憤りを覚えるもので、油断してると根こそぎ喰い尽くされてしまう事もしばしば。
あるいは、キズモノにさては食べる気も失せるだろうし、それこそ売ったり譲ったりする事も難しくなってしまう。
実際、当プロジェクトでも幾度かダンゴムシ等の食害を受けているのは事実で、知らぬ間に果実の表皮が削られたり、時に苗ごと丸ハゲにされてしまったりと、その都度「おいおい止めてくれよ」などと言いながら払ったり弾いたりしていたものである。
しかし、ある日の事。
これら生物達の「存在理由」について考察した結果、実は食害など単なる表面上の話に過ぎず、もっと更に深い真相があるらしい事が判り始める。
その切っ掛けとして、当プロジェクトの二期生(2019年)に入り暫く経った頃、ある現象に気付いたのだった。
と言うのも、前年度(2018年)の一期生ではカボチャやトマトが度々ウドン粉病に見舞われており、発症する度に患部を剪定したり、時にキッチン用アルコールスプレーを噴霧したりで対処していた。
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しかし、それらでは対症療法の域を出ず、根治に至らないパターンばかり。
この原因も恐らく、もともとがウドン粉に罹患しやすい性質であったとか、あるいは土壌に病原体が蔓延していたか、はたまた両方の合わせ技などの可能性が考えられる。
しかも、一期生の栽培前に一度だけトップジンなる薬剤を撒いているのだが、その用量は微量(1包)しか使用しなかったせいなのか効果がイマイチ感じられず、特にウドン粉病が抑制された様子も無かった。
いずれのパターンにせよ、結局その当時はシーズンの終わりまで繰り返し発生し続けていたのであった。
それなのに、冒頭でも記した通り、二期生のトマトやメロンでは一切発生した様子が無く、そしてシーズンの終わりまで終ぞ症状が顕れる事は無いままだった。
それこそ、一期生よりも遥かに貧弱極まる個体ばかりの状況で、である。
この理由を探る内、どうやら当プロジェクトの初期と現在では、ダンゴムシを始めとした昆虫など「生物の分布」に大きな変化があるらしい点に思い至る。
それまでの状況証拠や参考文献とを照らし合わせて考察した結果、どうにも畑イジリの試行錯誤を繰り返す内に、それら病原体が消滅するだけの環境変化や、土壌の正常化が起きているらしい事が解って来たのだ。
では、そこへ至るに何があって、それまでと何が違っていたのか。
その経緯を深掘りしてみましょう。
🌑わざと有機物を投入し微生物を増やしてみた🌑
先のウドン粉病が断続的に発生した一期生と、片や全く発生しなかった二期生が栽培されていた状況とを比較した場合、大きな違いとして考えられるのが「土壌を取り巻く環境の変化」である。
この土壌の環境について、これまで当プロジェクトでは「落ち葉や枯れ草」、「抜き取った雑草」、「おがくず」などを積極的に集め、肥料や保温の為に利用してきている。
その総量で言えば、数十リットルのゴミ袋が何回も満杯になり、かつ地表がテンコモリに覆われるほど敷き詰める時すらある位のボリュームであった。
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実際の所、これら落ち葉などの有機物で地表を覆う試みは、当プロジェクトの前年(2017年)より開始し、翌年(2018年)の一期生にて本格的な導入へと至る。
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しかし、まだ2017年の段階では土作りのテスト期間であり、基本的に手近で収集された分だけ投入しつつ探り探りの状態。
表土に対し広く浅く乗せる程度だったりで、全体量としては栄養強化に足りないボリューム感であった。
翌、2018年の一期生では肥料のバリエーションが若干増えたものの、それとて初めての家庭菜園だったので、特に冒険らしい試みはせず前年を踏襲。
そのシーズンも後半に入り、保温と養分を強化する意味で「雑草+落ち葉のマルチ」を増量した事がある程度だったりする。
要するに、それまでは量的に然程でも無く、果たして有機物が効果的なのかは謎だったし、ましてや土壌改善を実感するシーンも殆ど無かったのである。
そんな実験的な試みを継続するうち、次第に「分解のペース」が掴めて来るのが解る様になる。
具体的に言い表すと、例えば冬の枯れ草を大量に投入していても、次の夏場から秋には分解される様に。
あるいは、夏場の台風後に集めた落ち葉が、翌年の春には殆ど無くなっていたり。
それこそ、テンコモリにし過ぎて「ちょっとやり過ぎたかな…」と思う量でも、半年近く経てばペッタンコになるまでボリュームが減っている。
と言った感覚である。
ならばと2019年の二期生に入る頃合いで、一気に有機物を増量。
すると、ほどなくして変化が大きく顕れ始める。
その変化こそ、「ダンゴムシとワラジムシが大量発生」した事、そして「土中のミミズが増加」していた事である。
無論、それまでにも居たことは居たが、この二期生における増加率はハンパなものでは無く、ウジャウジャ密集するほどの個体数に及ぶ。
しかも、その他に様々な種類の虫までも連鎖的に集結している様子さえ伺えるほど。
何しろ、敷き詰めた落ち葉の表面にはダンゴムシがワラワラ、下を捲ればミミズがビッタンビッタン、その他にもゴミムシやチャバネゴキブリなどなど本当に多種多様。
更に、それら虫を食べるトカゲが土中で寝ている所に出くわすシーンも度々。
それはまさしく生命の爆発なのだが、嫌いな人が見れば卒倒する勢いであり、画像に撮るのも憚られる光景なのであった。
さて、実の所これら生物は、「わざと増やしてみた」側面が大きかったりする。
何故なら、大量の落ち葉や枯れ草を分解する為には、それらを食べて消化してくれる「循環役を担う生物」が必要不可欠である。
もし、ここに循環役が居ない場合、大量に蓄積した有機物により土壌に酸素が行き渡らず淀んだ空気や水分が滞留してしまい、本当にカビやら病原体の増殖を許してしまう事になりかねず、ひいては植物にも養分が還元されなくなってしまう。
それは実際の自然界を観察すれば解る様に、例えば「落ち葉が堆積し過ぎてダメになった森」の話など、まず聞いた事が無いはず。
この理由は単純に、「土壌(地表)の生命活動が活発」だからこそ、適切に分解と循環が進み、結果的に環境が健全に保たれているからだ。
なので、そんな自然の循環を再現すべく、意図的に「処理スピード」を上げる目的で、ダンゴムシやワラジムシ、そしてミミズを発見次第捕まえては投入していたと言うワケ。
先述した有機物の投入と併せて考えれば、これら2017年から始めた試みが2018年に本格化し、やがて2019年になり効果が発揮され出したものと推察される。
まさに急増して当然の成り行きなのである。
その甲斐もあってか、投入後の落ち葉や雑草の分解速度は思った以上に早く、概ね1年居以内には殆どバラバラになり土壌と馴染んでくれる様になった。
ここまでの一連を総評するに、足掛け三年にわたる期間を経て遂に土壌が活性化した、あるいは「本来の力」を取り戻したと言う事になるのかも知れません。
そんな試みを経て更に、この「土壌を取り巻く環境の変化」が、思わぬ仮説を導き出す事になるのです。
🌑微生物が病原体を「消化」しているらしい🌑
では、この土壌に生物が増えた事と、ウドン粉病が発生しなかった事がどう結び付くのか?
その理由こそズバリ、ダンゴムシやミミズを始めとした微細な生物達が、「有機物と共に病原体なども食べて纏めて消化(無害化)してくれているのではないか?」。
と言う話なのだ。
実はこの仮説に思い至った当時、とあるコラムで非常に興味深い記述を発見する事となる。
そのコラムとは、生物学者やダニ研究家として知られ、また全力脱力タイムズでもお馴染み五箇公一氏によるもの。
ここから記憶がアヤフヤな部分もあるのだけど、その要点だけを簡潔にまとめると以下の様な話であった。
・これは五箇氏の知人女性から聞いた話として、その女性が自宅の庭に生息するダンゴムシが何匹いるのか試しに調べようと捕獲してみた所、一升瓶が満杯になるほどの数だったと言う。
・すると何故か、その翌年になりバッタが大量発生し、庭の観葉植物を食べまくってしまったのだとか。
・これを聞いた五箇氏は、「もしやダンゴムシが土中に産み付けられたバッタの卵も食べていたから、生態系のバランスが取られていたのではないか?」と推察したとの事である。
※繰り返しますが、この話は大分ハショッっているので、大体この様な内容だったと言う形で引用致しました。
詳細やオリジナル記事については、各々にて検索して頂ければと思います。
さて、上記のエピソードにおける最も重要な部分を要約するならば、
「ある区画内のダンゴムシが居なくなったら、次にバッタが大量発生して植物の食害が増加した」
と言う点である。
この件に関し、また五箇氏は「これは仮説であり実際の因果関係は不明である」として断っていたが、確かに本当の所はダンゴムシとバッタのみぞ知るところ。
しかし、よくよく考えてみれば、表土に浅く埋められたバッタの卵などはタンパク質や脂質が豊富に含まれているはずで、ダンゴムシにとってはイージーに高カロリーを摂取出来るエサに違いなく、むしろ好んで食べている可能性は有り得る。
と言うか多分、おおよそ口に入る物なら何でも見境無く食べている中で、とりわけ「ウマイもん」には集中的に群がる習性があるだけの事なのだろう。
それを踏まえて、上記のコラムと当プロジェクトでの現象を照らし合わせた時に浮かび上がる共通点は明解そのもの。
それこそが先述しているダンゴムシやワラジムシが落ち葉のほか、動物性タンパク質など様々な「有機物全般」を食べているからこそ、土壌に発生した細菌なども同時に食べている可能性があり、一連の仮説にも整合性が出てくる事になるのです。
また同じく、ミミズが有機物と共に「ダンゴムシ等が排出した糞尿」などを含めて食べていると仮定した場合、それらに含まれる養分によって更に増殖する可能性は高く、やはり数が増えた分だけ細菌等を取り込んでゆく確率も高くなるだろう。
だからこそ、彼らの様な地表や土中に住む昆虫の数が多いだけ「消化される量」も多くなるぶん、環境のバランスが整えられて土壌も健全に保たれやすくなると考えられるのだ。
とどのつまり、有機物の投入を続けた結果として、昆虫や微生物が「連鎖的に繁殖しやすい環境」が整った事により、生態系におけるバランスが保たれた。
それら生物の食事(消化)活動が活発化し、病原体となる細菌の分解までも進んだからこそ、二期生ではウドン粉病が全く発生しなかったのでは無いか?
逆に言えば、彼らが居ない環境と言うのは「何も歯止めがかからない」状態を意味する為、やがて「偏った病原体ばかり」が蔓延しやすく不健全な土壌になってしまう。
そんな構図が浮上するのです。
そう考えれば、探り探りだった2018年の一期生までは効果が薄かったのに、一気に有機物と生物が増加した2019年の二期生では病変が出なかった事にも辻褄が合って来る。
その意味では、家庭菜園などで病変が連続している場合でも、ある程度「自然界に近い状態」を再現出来れば、もしかすると薬剤などに頼らず解決する事が可能となるのかも知れません。
やっとこ核心に到達した訳ですが、話は更に「この先」へと繋がって参ります。
もう暫し続きますので、どうか最後までお付き合い下さいな。
次回、後編に続きます。
では、また、CUL。